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2008年11月16日 (日)

「ハッピーフライト」感想(劇場)

「ハッピーフライト」感想(劇場)

(08年11月15日 TOHOシネマズ梅田・シアター2)
(監督)矢口史靖
(出演)田辺誠一 時任三郎 綾瀬はるか 吹石一恵 田畑智子 寺島しのぶ 岸部一徳

面白度 :6点/10点
お薦め度:3点/10点


 「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」の矢口史靖監督の最新作、「ハッピーフライト」を観てきました。

 かなり期待して「観たい!」と思って劇場に足を運んだのですが・・・
・・・う~ん(^_^;) 映画としてはイマイチの出来でしたね。

個人的には好きな面もあって、それなりに満足したのですが、「映画」の完成度としてはかなり物足りなさを感じました。
ですから、お薦め度は6点としましたが、お薦め度は非常に低くて3点です。

とにかく、ストーリーがシンプル過ぎて呆気なかった印象が一番です。
もちろん、コミカルな部分を中心に描いているのでしょうが、その芯となるストーリーに人間ドラマや感動を置いてなければ、やはり「映画」としては非常に弱い感じが残りました。

その一方で、「笑い」の面でもちょっと物足りなすぎた気がします。
どうせなら、ストーリーが弱いのであれば、コミカルな笑いをバンバンと出して笑わせ続ける方が、作品としての満足度も高くなったように思います。

それでも、個人的には「プロフェッショナル」を描いた部分が非常にしっかりと描かれていたので、その点を観ているだけでも興味津々で「なるほど」と思えたので、全体の満足度はそこそこ高かったです。
ま、映画そのものの出来で言えば、面白度は4点くらいに落ちますけどね(^_^;)

 まずストーリーの面で言えば、主役の一人、綾瀬はるか演じるCAのキャラなど、初めての国際線の搭乗って事で、ドジの連発から成長していく姿を描く事が十分可能だったのに、ケーキを作っただけで皆に認知されてしまって、それほど怒られるわけでもなく、途中経過をすっ飛ばして成長してしまった印象があります。

或いは、地上クルーの中では、田畑智子のエピソードなど、あの男性とどうなったのかな?とか非常に興味がある部分ですし、普通のドラマなら「オチ」として彼女と彼がどうなったか?のセリフのやり取りくらい、ワン・シーンを割いてキッチリ描くはずなのに、「さあ、どうなる?」ってシーンで終わっていました。

その他の地上クルーでは、登場人物がそもそも多すぎて、それぞれのキャラを深く描く所まで行っていないので、ま、あれはあれで仕方ないかな?とは思いますが、上記二人のエピソードくらいは、倍の時間を割いてでも描くべきだったと思います。

一方で、パイロット試験の田辺誠一のキャラは、なかなか満足の行く描き方でしたね(^^)
相方となる時任三郎との掛け合いも上手かったし、このコンビは良かったと思います。
特に無線とアナウンスを使った場面は、どれも絶品の笑いでした(^^)

 さて、個人的に好きだった「プロフェッショナル」の描き方の点です。

この映画を観ていると、細かいワン・シーン、ワン・シーンの登場人物のセリフ・所作ってのが、非常にプロフェッショナルな面が感じられます。
特にCAが中心となっていますので、彼女たちの言動が非常にリアルに感じられて「ほほう!」と思う部分が多かったです。
もちろん、ANAの前面協力があったからでしょうが、監督のリサーチも見事だったと思います。

例えば、着陸時に備えて身に着けている時計や入れ歯などを外すようアナウンスしたり、頭を下げるよう声をかけ続けていたり、自分たちのスカーフを座席下に収納したり。
当然と言えば当然なんですが、おそらく普段のCAの行動として決められている点をキッチリとリサーチし、それを映画の中で反映させているのだろうと思います。

ほかにも、整備士が工具の一つを無くしただけで、全員が総動員してゴミ箱から床の隅々まで、見つかるまで探し続けるって点も、おそらく実際の行動なのでしょう。
ま、実際にはあんなポカをする前に、工具箱を閉める前の「確認良し!」とかの指差し点呼で気付くはずなんでしょうが(^_^;) ま、ここは映画ですからねぇ。

田畑智子とその相棒が、席を確保する為に誰をどこに移動させて・・・ってやる場面なんかも、「なるほどなぁ」と実際にある場面を描いていたように思います。

それらプロフェッショナルな局面の中で、クレーマー的存在の男性客をいかに納得させるか?って事で、チーフ(寺島しのぶだったかな?)のCAがお客さんを納得させるあたりの会話も、基本的なクレーム対応に則っていたので、なかなか上手い感じでした。
つまり、先に対応したCA(吹石一恵)が、その場しのぎで謝る為に、自分たちの非を認めて「すみません」と謝ってしまった事が、対応の不一致になってしまった点です。
それを、対応の不一致としてきっちりと「非」と認めて謝る姿勢が必要だったのでしょう。

 あと、管制塔のスタッフが、マイクのスイッチを押して喋る合間合間に、互いに私語を交わしている感じだとか、飛行機型のチョコで地図の上に誘導してみたりだとか、いわば「職業病」的な面を「笑い」に変える場面が幾つかありました。

実は個人的にこの映画に求めていた「笑い」の一つに、この手の「職業病」の笑いがあるのです。
しかし、これらは実際にはそれほど観客の笑いにはつながっておらず、せいぜい「ニンマリ」と笑う程度が何箇所かあった程度だったのが残念です。

そう言えば、周防正行監督の「Shall We ダンス?」の中で、竹中直人が会社で直角歩きをするシーンに大爆笑が起こりましたが、ああいった感じの笑いがもっともっと、貪欲に描いて欲しかった気がします。

そう、この手の「プロフェッショナル」さを見事にリサーチし、娯楽としてドラマに昇華させた傑作が「Shall We ダンス?」だったと思います。

そのレベルを期待するのは難しいでしょうが、本作は「プロフェッショナル」の「仕事」は見事に描けていても「ドラマ」はイマイチだったように思うのです。
どうしても、「ドラマ」が主として骨格を作った上で、それを強固に補強する為のプロフェッショナルへのリサーチだろうと思うからです。

今回で言えば、先に述べたように新人CAの成長物語であり、地上スタッフのお客さんとの人間ドラマであったりと、描ける部分はいくらでもあったのに、それが「さらり」と流されるだけだったのがもったいなかった。

また、メイン・ストーリーでも、飛行中の機体に不具合が生じて、台風一過の空港への安全な着陸が出来るか?って1点だけで全てを描こうとしていましたが、ハイジャックや「エアポート」シリーズのような大規模なサスペンス映画を見慣れている観客の目としては、非常に小規模で地味な印象は拭えません。

だからこそ、ハリウッド級の大規模なアクションやサスペンスが描けないからこそ、もっと徹底的にコミカルさ、笑いの貪欲さを追及して描いた方が、面白度が遥かに上がった気がするのです。

 実は、これだけ有名な矢口監督なのですが、僕は今回が初めて作品を観ました。
おそらくは話題となった「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」の方が、今回の映画よりも、ドラマ的にもキャラ的にも、もっと面白いだろうと思います。

機会があれば、この2作も是非観てみたいと思います。

2008年11月 3日 (月)

「ハンサム★スーツ」感想(劇場)

「ハンサム★スーツ」感想(劇場)

(08年11月02日 梅田ブルク7・シアター1)
(監督)英勉
(出演)谷原章介 塚地武雅 北川景子 佐田真由美 池内博之 大島美幸 本上まなみ

面白度 :3点/10点 
お薦め度:2点/10点


 谷原章介&塚地武雅主演の「ハンサム★スーツ」を観てきました。

 う~ん、北川景子、メッチャかわいいやんか!(*^_^*)

 って事で、個人的にはメチャクチャかわいい北川景子が大スクリーンで観れただけで満足です・・・

・・・で、本編はどうか?って
う~む(-_-;) どストレートなコメディ映画なんですが、正直、あまり「笑えなかった」ですね(^_^;)

個人的には北川景子ちゃんの可愛い姿が観れたのと、谷原章介のハジけたコメディ演技が観れたってだけでよかったのですが、1本のコメディ映画として観ると、演出も脚本も詰めが甘くって、客席が「し~ん」とする場面が多すぎたですね。

逆に爆笑が取れたシーンが、池内博之にお茶(お酒)を吹きかける2シーンくらいだったので、ちょっと寂しすぎたかな?と。

ですから、個人的には面白度を甘めの1点プラスで「3点」としましたが、一般的にはお薦め度は「2点」がギリギリかな?と。

あと音楽も、渡辺美里の「マイ・レボリューション」や佐野元春の「サムデイ」などなど、全編に渡って懐かしのJ-POPが使われているのですが、それがあまり効果的に使われていないのも非常に残念でした。

最後に「アレがアレ」だったってのも、最初から誰でも分かっていたんじゃないかな?と思いますが。

北川景子ちゃんは、役柄的に出番が少なかった(実は多かった?←ネタバレです(^_^;))のが残念でしたが、メチャクチャ可愛くってスクリーンに目が釘付けになっちゃった点と、谷原章介の「モップガール」以来の弾けた演技が見事だったので、観て損は無かったかな?と思います。

ただし、カップルや友達どうしで、休日のデートなんかで観に行こうと思っているなら、ちょっと笑えないって点を考えてお薦め度は極端に少ないですね(^_^;)

最後の最後で、もうひとネタありますので、エンド・クレジットが始まっても劇場が明るくなるまでは座っていて下さいね(^O^)








※以下、ネタバレがあります。








 そう、個人的には谷原章介のコメディ演技が好きだったのと、それ以上に北川景子が好きだったって事で、それ目当てで観に行きました(^_^;)
このキャスティングじゃなかったら、わざわざ劇場まで観に行かなかったと思います。

それプラス、予告編で見る限り、どストレートなコメディって感じで僕の好みのコメディに思えたって点もあります。

しかし、実際に観始めると・・・ちょっと「コメディ映画」としては弱いかなぁ?と(^_^;)

ほぼ8割埋まった観客も、塚地のコメディ演技が始まっても「クスリ」ともせず、正直「さむい」感じでドラマが進んで行きました。
個人的には、それでも冒頭から北川景子ちゃんが登場し、清楚で可愛らしい姿を見せてくれていたので満足だったのですが、俳優に興味が無かった人など悲惨だったかもしれません(^_^;)

しかも、北川景子ちゃんは途中から大島美幸の「ブスーツ」を着ていたって事で、中盤は路上で軽く言葉を交わすシーン以外、全く登場していなかったってのが、北川景子ちゃん目当ての僕としては辛い部分でしたね(^_^;)

あ、でも考えたら北川景子は大島美幸の「スーツ」を被っていただけで、キャラクターとしてはずっと登場していたって事で・・・いや、やっぱルックスが他人ではねぇ(-_-;)

劇場ではあまり笑いが出ませんでしたが、個人的には冒頭、いろいろなタイプのスーツを試着して、石田純一やジェローラモ、デーヴ・スペクターあたりに変わるシーンだとか、声を変えて川平慈英や笑福亭鶴光に変わるシーンは、個人的にけっこうウケてしまいました(^_^;)
周りがあまりにも笑わないので、ちょっと声を出して笑いにくかったですけどね(^_^;) 若い観客が多かったけど、果たして何人が鶴光の声だと分かっただろうか?

あと、劇場が爆笑に包まれたのは、塚地(谷原)がお茶(お酒)を池内博之に吹きかけるシーンくらいだったかな?
結局、非常に分かりやすくてベタなシーンが一番笑えたってのが残念ですねぇ。

 基本的に、ブサイクがハンサムに変わってハンサム生活を満喫しつつ、その一方で「実は人間の中身が大事なんだ」って事が言いたいコメディです。
のっけの「ハンサム・スーツ」の設定からSFチックなんだから、もっともっと、突き抜けた笑いに繋がらないといけないのに、どこか現実のシリアスさに戻ろうとしてる生真面目さが、逆に足を引っ張っていた気がします。

個人的にはコメディ部分もそれなりに好きだったのですが、どこか、塚地演じる主人公がひがみ過ぎと言うか、落ち込んでいる姿などをシリアスに撮りすぎていた為に、ちょっと重すぎたかな?と
後半、バスの中で痴漢に間違われるシーンなど特にマジすぎて、突き抜けた笑いを描くはずのテーマからは大きく違っていたかな?と思います。

あと、本当は胸がジ~ンとなるはずの、塚地と大島の二人が携帯で「しあわせ」を見つけて写メを撮るシーン。
これも、なんだか取ってつけたようなハートウォーミングなエピソードで、突き抜けたコメディの設定を逆に大きくブレーキさせる効果しかなかった気がします。

 脚本の設定自体は面白いと思う。

しかし、監督の演出や脚本の細部が、設定ほどは突き抜けて居なかったために、妙に真面目な文化祭の演劇のような印象を受けてしまいました。
そう、どこか演出や脚本が「固い」んですよね。もっともっと、ノリツッコミを連発するような「勢い」が、演出と脚本に欲しかった気がします。

俳優で言うと、塚地が変身したって設定を演じる谷原章介は見事!のひと言でした。
最初から最後まで、これぞコメディ演技だ!って絶賛したくなるくらい、恥ずかしがらずに突き抜けた演技を演じ切っていたと思います。

その一方で、ブサイク・キャラを演じていた塚地は、どこか「真面目に演技しています」感が強すぎて、突き抜けたコメディにしてはカタ過ぎましたね。
鼻をほじるシーンでも、普通ならそれ一つで爆笑になれるはずなのに、劇場はし~んとしているし。
「だっちゅーの」や「コマネチ」の古いギャグも、谷原章介のハンサムが演じると笑えるが、塚地が演じても面白くもなんともないってのが、非常にもったいなかった。

 さてさて、ストーリーの最後には、実は北川景子演じるカワイコちゃんが「ブスーツ」を着てブサイクになっていたって事だけど、これは最初から分かりますよね?
ま、映画の方も分かるように描いていたとは言え、ちょっともったいないかな?と・・・

あと、「外見よりも中身を見て欲しい」と思っていた彼女ですが、結局は何かい?ルックスも良かったし中身も良かったって事かい?って疑問は付きまといますね(^_^;)
ま、確かに「ブサイクだけど中身が良い」ってのと「美人だけど中身が悪い」を比べれば、前者を取るってドラマも成り立つでしょうが、「ブサイクだけど中身が良い」と「美人でなおかつ中身も良い」となると、前者は分が無いよなぁ・・・と思ってしまう。

「中身が大切なんだ」と主張したいなら、ここはやはり「シュレック」みたいに、スーツを脱いだ姿がブサイクって終わりにしないと、ちょっと偽善的に感じられてしまいますがなぁ・・・

いや、ま、僕だったら北川景子ちゃんが可愛くて性格も良いって事で、観ていて嬉しかったんですけどね(^_^;)

 音楽に関しては、渡辺美里の「マイ・レボリューション」の選曲自体は非常に良かったと思う。

この世代にとっては、思わず足でリズムを取ってしまったほど、見事にハマった選曲なんですが、それがドラマとあまり上手く噛み合っていなかったなぁ、と感じた次第です。

もう一曲、僕らの世代で大ハマりだったのが、佐野元春の「サムデイ」なんですが、この曲も胸キュンものの名曲なのに、ドラマの中での使われ方がイマイチだった気がします。

 笑って泣けて胸キュンして、見終わったら元気一杯になる突き抜けたコメディを期待していたのですが、監督と脚本の力量が大きく及ばず、せっかくの見事なアイデアを活かしきれていなかったってのが結論ですね。

 最後の最後、エンド・クレジットが終わったあとに、オマケでバナナマンの日村がオチに登場するのですが、個人的にはウケたなぁ(*^_^*)

2008年10月26日 (日)

「P.S.アイラヴユー」感想(劇場)

「P.S.アイラヴユー」感想(劇場)
(P.S. I LOVE YOU)

(08年10月24日 TOHOシネマズ梅田・シアター3)
(監督)リチャード・ラグラヴェネーズ
(出演)ヒラリー・スワンク ジェラルド・バトラー リサ・クドロー ハリー・コニック・Jr ジーナ・ガーション ジェフリー・ディーン・モーガン キャシー・ベイツ

面白度 :4点/10点
お薦め度:3点/10点


 ヒラリー・スワンク、ジェラルド・バトラー主演の「P.S.アイラヴユー」を観てきました。

 CMで観て「泣けそうな映画だなぁ」と思って、観に行きたいリストの2番目くらいには入っていたのですが、どうも1人で恋愛映画を観に行くのも気がひけるので、なかなか劇場に足が運べなかった作品です。

ま、やはり「泣けるラブ・ストーリー」は押さえておかないといけないと思って、勇気を出してカップルや若い人の集団ばかりの劇場に観に行きました。

 うーん(-_-;) 「いい映画」だとは思うんですが、予想していた「泣ける映画」とかなり違った雰囲気の作品だったので、ある種「期待ハズレ」に感じてしまいました。

ほとんどの観客が、僕と同じように「泣ける映画」だと思って最初からハンカチを用意する勢いで観に行ったと思うのですが、おそらくそのほとんどが、僕と同様に「え?こんな映画だったの?」って違和感を強く感じた事だろうと思います。

おそらく先入観なしに観れば、これはこれで語り口の上手い「いい映画」だと思った事でしょうが、どうしても「亡くなった夫から手紙が届く」ってシチュエーションで、既に泣く準備万端だったもので、そのギャップが大きすぎたのが最大のマイナス点となりました。

その意味で、多くの人が「あれ?」と思うだろうと思って、お薦め度は低くしました。
だって、「泣ける映画」だと思っていたら、最初からけっこう笑わせて、コミカルなシーンが連発されるので「コメディ映画か?」と思ってしまったくらいですから。

 また、僕は夫がやった行為が果たして妻にとって良かったのだろうか?と疑問に思った点も、マイナス要因の一つでした。

映画的には、それが結果的に良い方向に向かったって描き方でしたが、普通なら、二人が過去に過ごした場所や思い出を思い出させるこのやりかたってのは、主人公が夫を忘れなくさせる方向に進むんじゃないかな?と思って、あまり良い方法には思いませんでした。

あと、ラストのあたりもちょっとあっさりしていたような・・・

それまであまり強烈に泣かせるシーンが無かったので、「最後の手紙」でボロボロ泣かせるのか?とかなり期待したのですが、その内容と結果ってのも、ちょっと肩透かしな印象しか受けませんでした。

 いろいろと批判的な点も書きましたが、僕は最初こそ戸惑ったものの、この映画のパターンが次第に分かってきてからは、それなりコミカルな点にハマってしまって、逆にコミカルさが温かさに感じられて印象がよくなりました。

NYが舞台だったし、どこかコミカルだけどジ~ンとさせた「恋人たちの予感」(WHEN HARRY MET SALLY:1989)を観た時のような感じも受けました。

その点で、マイナス点が多かったけれどプラスの面もあったので、面白度は1点プラスして4点としました。








※以下、ネタバレがあります。








 ほんと、観る前から「泣ける映画」だと思って、もし劇場で1人で観に行って、おっさんが1人でボロボロ涙を流してしまったらどうしようか?と思って観に行ったのです(^_^;)

ところが、実際に観始めると、冒頭から二人がワイワイ騒ぎながら派手に喋りあっているので、「あれ?想像とは違ってにぎやかな映画だな?」と思った次第です。

しかも、その直後に既に夫が死んでいて骨壷を前にして、生前の彼が好きだった曲を流すのですが、この曲の歌詞がけっこうブラックな感じで笑わせてくれたので「あれ?」と思い始めた次第です。

観終わってから振り返ると、最初から監督(あるいは脚本家)は「笑い」の要素でオブラートに包みながら、二人の愛の深さを描こうとしていたんだな・・・と分かるのですが、全く予想していなかった状態でコレが始まったものですから、冒頭あたりは予想とのギャップに違和感ととまどいしか感じなかった次第です。

それでも、彼の送ってくる手紙の内容に泣かせられたら良かったのですが、結局は「ホロリ」とさせられはしたものの、観る前に予想していたような、涙が頬を伝うようなボロボロ泣く場面は、結局最後まで登場しませんでした。

確かに難しい点ではあったと思います。
監督の方向性と観客の期待とが大きく違っていただけで、作品の質自体は非常に良かったと思うので、余計に残念でもったいない感じも受けました。

普通だったら、誰がどう扱っても観客をボロボロに泣かせる事が出来るシチュエーション、「亡くなった夫が送ってくる手紙」って設定、この設定が泣かせるはずなのに、ほとんどが泣かせられなかったって点が大きくマイナスに感じられた次第です。

もちろん、自分の死期を悟って、自分が死んだ後に内にこもって外に出ようとしない、ショックから立ち直れないだろう妻を元気付けて、生きている喜びを感じさせてあげたいと思って書いた手紙の内容でしょうが、そのあたりが、ストレートに夫の愛情に感じられなかったって弱さもありました。

 その一方で、主人公を元気付けようとする母親や女友達二人、主人公に惚れている男など、気の優しい面々が彼女をサポートして元気付けようと努力している当たりの姿は、非常に微笑ましくって、この場面でのコミカルさの多さってのは、非常にキャラと似合っていたと思います。

例えば、主人公が1人で家の中で歌を歌っていると、後ろから入ってきた面々が「誕生日おめでとう」の看板を持ったまま、呆然と眺めているって状況や、女友達と3人でアイルランドに旅行に行った時の珍道中ぶりだとか、かなり笑えたし、その笑いの温かさで主人公の悲しみを包み込もうとする雰囲気には非常に好感が持てたのです。

そのあたり、ストレートなコメディ映画ではなく、シチュエーション・コメディのような雰囲気を持ちつつも、ヒューマンな面で感動や涙を誘う展開が中心にあるって演出は、僕は非常に好きなパターンですね。
そのあたりが、最初からわかっていたら・・・そして、その笑いの対極にある「涙」の部分が、もっともっとボロボロと泣かせてくれていたらなぁ・・・ってのが、ボルテージが満点にまで至らなかった要因だと思います。

その意味では、多くのカップルが、泣く準備万端でデートで観に行くと思うのですが、その多くが「あれ?こんな映画だったの?」って意外感や、下手をすれば「期待ハズレだった」と思うのでは?と感じるのです。
ちょっと笑うにしろ泣くにしろ、中途半端で弱いかなぁ・・・と。

 さて、もう一点気になったのは、夫が行った行為そのものです。

彼は残した妻の為に、10通の手紙を残して様々な手法でその手紙を届けるのですが、その行為そのものに是非が大きく分かれる気がします。

だって、映画の中のように過去の思い出の場所やエピソードに絡めて、手紙の内容を次々に書かれていってしまっては、妻が自分の事を忘れて新しい一歩を踏み出す勇気ってのが出てこないんじゃないかな?それどころか、亡くなった夫の事が余計に思い出されてしまって、いつまでも忘れる事が出来なくなってしまうんじゃないかな?と思うのです。

この点では、昔、デミ・ムーア主演の「ゴースト/ニューヨークの幻」(GHOST:1990)とスピルバーグ監督の「オールウェイズ」(ALWAYS:1989)の違いを考えた事があります。
「ゴースト」のやり方では、結局はデミ・ムーア演じる主人公はパトリック・スウェイジ演じる彼の事を深く想いに刻み込んでしまったオチだったのですが、「オールウェイズ」では(ストーリー上、手出しが出来なかったって点もありますが)ホリー・ハンター演じる主人公は、リチャード・ドレイファス演じる彼の事を想いに刻みながらも、新しい愛に一歩進んでいくわけです。

結果を考えると、やはり死んでしまった者をいつまでも思い続けるよりも、生き残った者が残りの人生を生きていく為には、ある程度「忘れる」事も必要になってくるでしょう。
そのあたり、本作「P.S.アイラヴユー」では、ちょっと夫への想いを引きずりすぎるような設定では無いのかな?彼女の為にならないのでは?と思った次第です。

 あの手紙の中で唯一、良かったと思える手紙は、妻に対して過去の興味を思い出させて、靴のデザインに打ち込むように向かわせた点でしょうか。
これは、若き日の情熱を思い出させて、彼女を一歩前進させる為に「トン」と背中を押す意味合いがあったと思うので、非常に重要だったと思うのです。

しかし、それ以外の手紙のほとんどは、妻と自分がどうやって出会ったか?を思い出させる郷愁への旅って感じであって、なかなか忘れられなくなってしまうよなぁと感じたのですが。

しかも、普通なら最後の手紙を読んで「新しい恋に一歩踏み出す」って事に、背中を押してあげて、それが結果的に自分を忘れる事になるんだって展開で終わるべきだったと思うのです。

その前、ハリー・コニック・Jr演じるダニエルがホリーにレストランで告白したシーンで、ダニエルが「僕は透明人間じゃない。男を男として見られない女性とは付き合えない」って意味のセリフを言いました。
僕はこの場面がこの作品で一番、胸にジ~ン!と来たシーンだったのです。

それを踏まえて、スタジアムに二人っきりで入ってきて、最後の手紙をダニエルが読んだ上でホリーがダニエルの愛情を真正面から受け入れる・・・って展開でハッピー・エンドでよかったのでは?と思ってしまったのだが。
それが、「まるで兄弟でキスしているみたいだ」とか、さらりと流されてしまっては、今までの手紙の積み重ね、そして最後の手紙の内容ってのは全く(ストーリー的に)意味が無かったのか?と思ってしまった次第です。

 とまぁ、なかなか難しい展開でしたが、最後の最後でボロボロ泣ける(泣かせる)チャンスがありながら、それをさらりと流してしまったオチに、「あ~あ」とため息をついたのは言うまでもありません。

キャシー・ベイツ演じる母親のキャラも魅力的だったし、ちょっと変人っぽいけど惹かれるハリー・コニック・Jrのダニエルも魅力的だった。
バーで出会った男性に「あなた独身?ゲイ?仕事は?」と聞きまくる彼女も、セクシーさが衰えないジーナ・ガーションも、非常に魅力的な脇役だった。
それら魅力的な脇役が盛り上げるって点では、やはり「恋人たちの予感」的な、アット・ホームで暖かな作品の雰囲気を楽しめたと思います。

それが主人公と亡くなった夫とのラブ・ストーリーに全て収束して、感動で泣かせてくれていたら、文句は一切なかったんですけどね(^_^;)

2008年10月24日 (金)

「ナーク」(BS5)感想

「ナーク」(BS5)感想
(NARC:2002)

(監督)ジョー・カーナハン
(出演)ジェイソン・パトリック レイ・リオッタ ダン・リーズ ロイド・アダムズ シャイ・マクブライド

面白度 :7点/10点
お薦め度:3点/10点


 ジョー・カーナハン監督の「ナーク」を観ました。4年ほど前のBSの録画です。

 この作品、製作総指揮がトム・クルーズ、製作にレイ・リオッタがクレジットされています。
のちにトム・クルーズは「M:i:Ⅲ」(MISSION: IMPOSSIBLEⅢ:2006)を製作する際に、本作のジョー・カーナハンを指名したようですが、のちにJ・J・エイブラムスに変わっています。

本作の映像感覚と演出を観ていると、こりゃ「エイブラムズ版」とは違う「カーナハン版」の「M:i:Ⅲ」も観てみたいなぁと思った次第です(^^)
その一方で、降板したカーナハンは「スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」(SMOKIN' ACES:2007)を監督・製作・脚本したのですが、これまた、クセモノの俳優を満載して、映像も凄まじく(ストーリーと演出のテンポはハマりませんでしたが(^_^;))独自路線を突っ走っていったわけです。

 本作ですが、全体的に展開が地味で、一般的にはあまりお薦めできない感じです。
しかし、刑事モノのアクションやサスペンスが好きな僕としては、非常に「好き」なテイストの作品ですね。

まず映像が素晴らしく、全体的にブルーを基調とした「明け方」のような寒々しい映像感覚が良かった。

そして俳優。
主演のジェイソン・パトリックとレイ・リオッタの雰囲気、演技が素晴らしくって、この二人の演技を観ているだけでも満足でした。

ジェイソン・パトリックは「スピード2」(SPEED 2: CRUISE CONTROL:1997)の印象、しかも「頭頂部がヤバい」って印象しか残っていませんでしたが、今回は濃いヒゲを生やして全く別人のようになっていて、雰囲気も万全で、麻薬の潜入捜査官って役柄を見事に演じていたと思います。

もう一方のレイ・リオッタも、雰囲気が最高でしたね。
昔から刑事役を演じる事が多かったのですが、最近では「腹黒い」ってイメージの役柄をやらせたら天下一品で、今回も容疑者に暴行加えまくりのヤバい雰囲気を持った刑事役を見事に演じていました。
登場場面から存在感があって、いい味だしてるなぁ・・・と思っていたら、なんと製作にも名を連ねていたわけで、そりゃ自分をカッコ良く撮るツボを心得ているよなぁと感じたしだいです(^_^;)

 ストーリー的には「哀愁のあるサスペンス」、ですね(^_^;)

全体的に非常に地味だったので「果たしてオチはあるのか?」と思っていたのですが、最後の最後で、実はこの事件の犯人は・・・そして真相は・・・ってのが明かされて、驚きと共に救いの無い哀しさを感じて終わる事になりました。

ただ、そのラストに至るまでは非常に地味で、二人が捜査したり資料を調べたりしているシーンを延々と映すものですから、正直「眠く」なってしまいます(^_^;)
この当たり、同じ展開であっても、アクションを中盤に入れるとかして、ドラマ的に盛り上げる部分も欲しかったかなぁ?と感じます。

そのあたりの物足りなさが、次作「スモーキン・エース」では爆発していて、まさに銃撃戦の嵐となっている当たりは好対照だったと思います。

 って事で、非常にセンスのある映像感覚を持った監督であり、演出もリアリティ溢れる感じが好感が持てるので、次作以降も非常に期待の監督です。

2008年10月19日 (日)

「イーグル・アイ」感想(劇場)

「イーグル・アイ」感想(劇場)
(EAGLE EYE)

(監督)D・J・カルーソー
(出演)シャイア・ラブーフ ミシェル・モナハン ロザリオ・ドーソン マイケル・チクリス ビリー・ボブ・ソーントン

面白度: 7点/10点
お薦め度:8点/10点


 スティーヴン・スピルバーグ製作の話題作「イーグル・アイ」を観てきました。

 いやぁ、想像通りの面白さでしたね。なかなか面白いです。

 ただし「パクリ」が無ければなぁ・・・
これが無ければ面白度は「8点」にしても良かったと思います。

 この作品、劇場で予告編を観た時から「おお!メチャクチャ面白そうじゃないか!」と思いました。
突然、家に武器が溢れているとおもったら、次の瞬間に謎の女性から電話がかかってきて「FBIが突入してくるからあと○秒で脱出しろ」とか、逮捕されてからも「あと○秒で伏せろ」と言われたと思ったら、クレーンが部屋を破壊して「ジャンプしろ」とか・・・

もう、この予告編でガツン!と殴られた感じで「観たい!」って気になりました。

実際、観始めると予告編なりの面白さはありましたね。
ただし、中盤でちょっとダレるので、中盤に盛り上がりのアクション・シーンがあればなぁ・・・と残念でしたが、それ以外は概ね、及第点の面白さがあったと思います。
個人的に一番好きだったのは、前半最大の見せ場、主人公男女2人が逃げるカー・チェイスのシーン。
カメラがアップとブレが多くて把握しにくいのですが、それを差し引いても非常にスピード感と迫力のあるカー・チェイスだったと思います。

あと、クライマックス近くの無人攻撃機とのカー・チェイスも迫力があって後半最大の見せ場だったと思います。

 基本的にはヒッチコック・タイプの「巻き込まれ型サスペンス」なのですが、途中で「とある映画」のパクリになっちゃうんですよね(^_^;)

この「とある映画」になるあたりがネタバレとなるのですが、これが観ているすれっからしの映画ファンにはすぐに予想が付くネタバレだし、劇中でバラすタイミングも早すぎた気がします。
このネタバレが、後半のギリギリ遅くまで引っ張っていたなら、もう少しサスペンスとしての謎と面白さが盛り上がったと思うのですが。

また、クライマックスに設定されたシチュエーションが、これまた別の「とある映画」のパクリになっちゃうんですよね(^_^;)

このあたり、それなりに映画が好きな観客なら分かっちゃう点だし、一つの映画に2つも他の映画の要素を放り込むってのはちょっとアンフェアな気もするので、それだけで「つまらん映画だ!」と嫌われるかも知れませんね(^_^;)

その意味では、若い人がデートや友達同士で休みの日に観に行くアトラクション的映画としては、お薦めできますが、ディープな映画ファンにはお薦めできないですね(^_^;)

個人的には、中盤がダレたとは言え、全体的にはサスペンスとして盛り上げてくれてクライマックスまで見事に引っ張ってくれていたので、入場料代はペイしたかな?とは思います。

あと、主役のシャイア・ラブーフよりも、FBIのビリー・ボブ・ソーントンの方が渋くてカッコ良かったぞ!と思いました(^^)








※以下、ネタバレがあります。







 な~んだ、ヒッチコック風の「巻き込まれ型サスペンスか?」と思いきや、「2001年宇宙の旅」(2001:A SPACE ODYSSEY:1968)だったのね(^^ゞ

 明らかにサスペンスだったのに、いきなり中盤で「SFですよ」と言われちゃうんだから、引く人は引くでしょうねぇ。
あの「アリア」は、明らかにスタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」のハルのパクリでしょう。
赤い「眼」もそっくりだったし、人間に反乱を起こして創造主の人間を殺していくし・・・
しかも、クライマックスはヒッチコックに戻って「知りすぎていた男」(THE MAN WHO KNEW TOO MUCH:1956)になっちゃうんだから(^_^;)

この映画、普通の主人公が突然、国家規模の陰謀に巻き込まれて容疑者として当局から狙われ、意味も分からず逃げざるを得なくなり、自然と事件の中心に巻き込まれる形になる・・・って点では、基本的にはヒッチコック風の「巻き込まれ型サスペンス」と断言できるでしょう。

その一方で、中盤のネタバレで、実は事件を仕組んだのが人工知能のコンピュータだったって点は、いきなり近未来SFになっちゃった感じがあります。

その点で、まず観ている観客の中には「なぁ~んだ」と思って白ける人も居たでしょう。

僕も、その前からイーグル・アイのシステムが紹介された時点で「ああSFか」と分かっちゃったし、実際にアリアが犯人だったってのが映画の中盤で早々にバレてしまう点には大いに不満を感じました。
どうせなら、映画の後半でギリギリになってから犯人がバレないと、SFみたいなこの作品でなくっても、普通の犯人探しのミステリーでもネタバレとして早すぎるだろうと思いました。

あとは犯人が仕組んだ陰謀を食い止めるって「サスペンス」に舞い戻るのですが、そのクライマックスの陰謀が、これまたヒッチコックの「知りすぎていた男」そのもので、音楽の演奏につれてカウントが進んで行くあたりは、まったくのパクリだと言われても仕方ないでしょう。
全体がヒッチコック風のサスペンスなんだから、途中で音で爆発するクリスタルと息子の楽器に仕組まれるあたりで「ああ、そうなるのか」とオチが想像できちゃうし。

マイナス点としては、ラストで主人公が撃たれちゃうまでは良かったのですが、それが腕を吊っているだけで元気な姿で表彰されてるオチになるあたりが、ちょっとガッカリでしたね(^_^;)
ビリー・ボブ・ソーントンだけ、英雄的に死なせちゃって、シャイア・ラブーフは怪我で終わらせるってのは甘ちゃんな気がします。
あそこは彼も殺して、泣かせて終わらせないと・・・「なーんだ、生きてたのか」ってガッカリ感しか出ないですよ(^_^;)

 と、まあ、のっけから批判めいた事しか書いていませんが、それでは本作が面白くなかったか?と言えば、いえいえ、決してそんな事はありません。

キューブリックやヒッチコックのパクリだとわかっていても、それを差し引いてもそれなりに楽しめる娯楽サスペンスになっているんですよね。
逆に言えば、それだけオリジナルがパクられても尚、面白いだけのものだと言えるわけですが(^_^;)

まず、謎の女性から電話がかかってきて、平凡な青年がテロ事件に巻き込まれていくって設定が秀逸。
国家規模の陰謀に巻き込まれてしまうと、個人なんて何も手出しが出来ないってあたりが恐ろしいですね。

その後は謎の電話の主の指令どおりに動いていくわけですが、「そんな上手くいくかよ!」ってツッコミどころ満載ながら、正体が全米のコンピュータ・システムを操作できる人工知能であれば「さもありなん」と納得出来ますね。
主人公が命令に従わない場合は、無理矢理に従わせる事も、殺してしまう事も出来る。それを相手に見せ付けるだけで、どんな状況も従わざるを得なくなる。

ま、銀行強盗か?と思わせて、実は飛行機の貨物に乗り込む為のクスリだったってのは、出来すぎな組み合わせだなぁ、そんな上手く事がタイミングよく繋がるか?と思ってしまうのだが、相手がコンマ何秒で全て計算できる人工知能なら、あらゆる可能性の組み合わせを考えた上で判断できるんだから、それも上手く行きそうだし。

このあたり、何もかも相手の計算どおりに動くって点で、僕はデヴィッド・フィンチャー監督の「ゲーム」(GAME:1997)を思い浮かべました。
あれも、次から次に、依頼した会社が思い通りにゲームを進めていくわけですが、一方で「こんなに思い通りに主人公は動かないぜ?」と疑問に感じる点もありました。
その点、「イーグル・アイ」では、文字通り「全てお見通し」だったわけですから、可能なのかな?と観客に思わせるだけの説得力は(SFレベルで、ですが(^_^;))ありましたね。

 さて、最大の見せ場は、前半のカー・チェイスと後半の無人攻撃機のシーンです。

どちらも絵的に似たような感じなのですが、個人的には前半のカー・チェイスの方が興奮したし迫力があったと思います。

アリアが信号を自由自在に扱えるので、主人公らだけを無事に通過させて警察・FBIを潰すってのもお手の物でしょう。
それでも、アクセル前回でノーブレーキで交差点に突っ込むあたりの迫力ってのは、この手のアクション物としても迫力のあった方だと思います。

その一方で、カメラがアップを多用するものですから、全体像が把握しにくいって欠点もありましたが。
このあたりは、後半の無人攻撃機のシーンでも感じましたが、車がクラッシュする場面で、どの車がどこに・どのようにしてぶつかったのか?が把握しにくいカメラ・ワークだったと思います。
でも、それを差し引いても面白かったと断言できるでしょう。

その分、中盤では目だったアクションが全く無くて、会話中心の非常に地味な展開になったのには、物足りなさを感じました。

クライマックスでもう一度盛り上がったから、全体としてはOKでしたが、やはりサスペンスやアクションでありがちな中盤のダレ場ってのが本作でもあり、そのあたりにもう一つ、銃撃戦でも入れてくれていれば面白かったろうにと思います。

 そしてクライマックス近くの無人攻撃機のシーン。

こいつは冒頭でも登場しますので、その存在は観客に知らしめているわけです。
その上で登場するってあたり、見せ方が上手かったと思います。

そして、舞台も単なる道路ではなく「トンネル」にしているあたりが盛り上がる(^^)
攻撃機のカメラで捕らえた映像で、トンネルの幅が攻撃機が入れる大きさだと判断して、トンネル内に入ってミサイルで攻撃するあたり、映像的にも迫力あるものになっていたと思います。

また、それを阻止する為に、ビリー・ボブ・ソーントンがシャイア・ラブーフを逃がして一人で攻撃機に突っ込んで行くあたりも、なかなか渋くて魅せてくれましたね。

 ラストに関しては、ま、真正面からのパクリすぎて、突っ込む気にもなりませんでした(^_^;)

つい最近も、とある映画のクライマックスが、オーケストラの演奏が進むにつれて爆弾のタイムリミットが迫るってパターンで、今回と全く同じ状況設定になっていましたが(^_^;)
それだけ、ヒッチコックがリスペクトされているとも言えるでしょうか(^_^;)

とは言え、僕は許せても他の映画ファンは許せないかもしれません。
あれだけパクっている、しかも途中は「2001年」の「ハル」のパクリだし・・・となると、おちおちクライマックスを楽しむ余裕も無かったかも知れませんね(^_^;)

個人的には楽しめたクライマックスですが、「あと1歩」と感じたのは、主人公が死ななかった点ですね(^_^;)
あの場面、主人公には演奏を止める手立てが無かった。
そんな中、咄嗟に思いついた最後の手段として、他の警備員やシークレット・サービスに撃ち殺されるのも厭わず、その寸前に自分を助けてくれたソーントン演じるFBIのように、自分が威嚇射撃をして演奏を止めるんだ!と思った彼の英雄的行動ってのは、誇り高いし涙を誘う判断なわけです。

しかも、あれだけ銃撃を受けて、撃った側もプロの警護なんだから、万が一を考えて急所を銃撃するでしょうに。

僕も一瞬、「え?もしかして彼が防弾チョッキを着ていたとかのオチがあるのか?」と思ったのですが、そんな甘っちょろい考えを吹き飛ばすほど、彼は弾を喰らっていたと思うんですが・・・

ところが、次の場面では彼は殺されているどころか、腕を吊っているだけで英雄として父親と共に兄の葬儀(おそらく国家葬みたいなものでしょう)に出ているシーンに変わるわけだから、「おいおい(^_^;) あんだけ撃たれていて助かったのかよ?」と思った次第です。

 とまあ、数多くの疑問点、不満点を抱えつつも、全体としては非常にシャープでテンポの良い演出が目立つ作品であって、冒頭からドラマにハマらせてくれる面白さは十分あったと思います。

あとは脚本家が「自分の頭」でアイデアを出してくれていればなぁ・・・って点が、残念な点でしょうね。
ま、昨今のアイデア不足のハリウッド映画の中にあっては、それは無いものねだりって事になるのかもしれませんね。

2008年10月12日 (日)

「ゲット スマート」感想(劇場)

「ゲット スマート」感想(劇場)
(GET SMART)
(08年10月11日 梅田ブルク7・シアター3)

(監督)ピーター・シーガル
(出演)スティーヴ・カレル アン・ハサウェイ アラン・アーキン ドウェイン・ジョンソン テレンス・スタンプ ジェームズ・カーン

面白度 :7点/10点
お薦め度:7点/10点


 かつてのTVドラマ「それ行けスマート」(GET SMART:1965~1970)の劇場版、「ゲット スマート」を観て来ました。

 ま、これだけ笑えたら十分でしょう(*^_^*)

面白度を7点としましたが、ことコメディに関してはシビアにならざるを得なくって、「もっと面白くなるだろう」って余地がある限りは8点、9点にはならないですね(^_^;)
その意味で厳しくしましたが、普通に観る分には映画代は十分ペイするでしょうね(^^)

最初、初日の土曜日って事で、若い人を中心に満員に近い状態で観たのですが、逆に「これだけ満員で笑えなかったらマズイんじゃないかな?」と不安に感じたのですが、実際に始まってみると、あちこちから笑い声が聞こえてきたので一安心でした(^^)
観終わった時も「面白かったねー」って声も聞こえましたね。

内容的にも、セリフで笑わせる部分は少なく(それも「ロシア風」など、字幕で上手く誤魔化していましたね(^_^;))、全体的にシチュエーションで笑わせる部分が多かったので、見た目で分かりやすかったって点も良かったです。

 オリジナルは60年代のTVドラマ「それ行けスマート」です。

僕は、記憶の端にチラリと残っているので、おそらく再放送や再々放送などで観た記憶があると思います。
気になってネットで調べましたが、残念ながらTV版と80年の劇場版「0086笑いの番号」(THE NUDE BOMB:1980)はDVDにはなっておらず、これを機会に観なおしたいなぁと思っていたのですが、無理なようです(-_-;)

映画の冒頭に博物館の展示品として、車やスーツ、靴型電話などがありましたが、おそらく当時の道具なんだろうなぁ・・・と感慨深く観ていました。

さて今回の劇場版ですが、そうしたオリジナルを知らなくても、「どうやらお間抜けなスパイが活躍するコメディ映画なんだな」程度の知識があれば、十二分に楽しめる作品です。
全体の状況は説明されますし、主人公のキャラも分かりやすいので、冒頭から取り残されずにハマる事が出来ます。

相手役の女性スパイをアン・ハサウェイが演じていますが、彼女の大きな瞳と唇も非常にキュートで絵になるので、画面に華やかさを添えていて良かったですね(^^)
敵を演じていたのが、名優テレンス・スタンプって事で、彼がコメディを演じるのも面白かったけど、作品全体の雰囲気を豪華にするのに大きく役立っていたと思います。

舞台設定としても、アメリカからロシア、そして最後はLAのコンサート・ホールを大舞台に設定して、映像的な豪華さも過不足ありませんでした。
第九に連動する爆弾のアイデアと映像も良かったし。

コメディの面では、個人的にはロシアに向かう飛行機のトイレの中、あのバカバカしさが好きでしたねぇ(^_^;)

 ただ、「もっと面白くなっていたのでは?」と思う部分もありました。

例えば、TVドラマ「HEROES/ヒーローズ」にも出演していて一躍有名になった日本人、マシ・オカともう1人のオタクコンビ。
この手のスパイ・コメディでは必需品となっている「秘密兵器」係として登場するのですが、せいぜい万能ナイフと秘密会話用機械くらいしか登場しないのが残念でした。
ま、スマートが脱出する場面で、監視カメラの前の芝居で笑わせてくれましたが、やはり「秘密兵器」をバンバン登場させるオタクらしい役割を演じて欲しかったですねぇ。

ま、これ以上求めるのは無いものねだりなんでしょうねぇ(^_^;)

そう言えば、主人公のスマートって大ボケもかましますが、その後の反撃は完璧であり、射撃も格闘も天才的なんですよね(^_^;)
基本的には素晴らしい工作員であるって点が、「裸の銃を持つ男」とは大きく違う点ですね(^_^;) あっちは、偶然大事件を解決しちゃうパターンですから(^。^)

 いずれにしろ、日本人には受けにくいハリウッド製のコメディ映画にあって、これだけ分かりやすくて劇場内から笑いが上がる作品ってのは珍しいので、休日をカップルや友達同士で過ごすには、映画代(前売り券くらい?(^_^;))は確実に保証する作品だと思いました。

2008年10月10日 (金)

「おくりびと」感想(劇場)

「おくりびと」感想(劇場)

(08年10月09日 梅田ブルク7・シアター1)
(監督)滝田洋二郎
(出演)本木雅弘 広末涼子 山崎努 余貴美子 吉行和子 笹野高史 杉本哲太 峰岸徹

面白度 :10点/10点
お薦め度:10点/10点


 本木雅弘主演、滝田洋二郎監督の「おくりびと」を観てきました。

 いやぁ、素晴らしかったですね。
ドラマの完成度の高さと役者の演技の素晴らしさを考えると、本年度の邦画ナンバー1と言っても過言では無いでしょう。

もともと、それほど興味はありませんでしたが、ニュースで「モントリオール世界映画祭グランプリ受賞」ってやっていたのを観て、俄然、観たくなった作品です。
予告などを観る限りでは、非常にシリアスで凛とした静かな映画を想像していたのですが・・・

実際に観てみると、冒頭からユーモアがタップリで、予想以上に笑わせてくれるシーンが多くって驚かされました。
その後、中盤からは次第に泣かせるシーンも多くなり、後半では胸が一杯になるような泣けるシーンも多くあり、劇場のあちこちから鼻をすする音が聞こえたほどです。

かくいう僕も、そのユーモア感覚の素晴らしさにニンマリと笑いつつ、後半のいくつかの葬儀のシーンでは涙が溢れてしまいました。

主演の本木雅弘の筋が通った演技、立ち居振る舞いの姿勢の素晴らしさ、そして共演の山崎努の飄々としたユーモア感覚と存在感、この二人の見事な演技を観ているだけでも満足な作品でした。

そのドラマと演出と演技が三位一体となり、全体では非常に素晴らしい作品となっていました。
今年僕が観た邦画の中では、文句無くナンバー1と言っていいほどの作品で、多くの観客に観ていただきたい傑作です。







※以下、ネタバレがあります。





 監督が滝田洋二郎だって知ったのは、映画を観る当日だったのですが、思えば「病院へ行こう」(1990)や「僕らはみんな生きている」(1992)など、いまだに印象に残っている傑作を撮った監督です。

この2本は非常に好きで、一方は病院を舞台に、もう一方は海外のニッポン人サラリーマンを主人公に、ユーモアたっぷりにプロフェッショナルの仕事の舞台を描いていた作品です。

で、遅ればせながら、その滝田洋二郎が本作の監督だと知って、本作は間違いなく面白いだろうと予感したのです。

 実際観始めると、その寸前の予感は見事に当たりました。

もともと、監督が誰か知らずに(気にせずに?)観に行ったものですから、予告編やTVの番宣を観て非常にシリアスな作品を想像していました。
実際、冒頭の納棺師の仕事のシーンでは、凛とした所作と張り詰めた空気を見事に描いていたので、「ああ、この作品は徹底的に美しく凛とした作品なんだろう」と思ってしまったのです。

ところがどっこい(^_^;)
ものの何十秒かで、その考えがもろくも消え去ってしまいます(^_^;) お体を清めている時に「あれ?」となって、交代した山崎努も「あれ?」となって、もう観ている僕はニンマリとしてしまったのです。

年配客が多かった客席は、この場面ではまだ遠慮がちに笑い声が全く聞こえませんでしたが、本木雅弘がDVDのご遺体のモデルをやっているシーンになって、我慢しきれなかったのか、皆が声を出して笑うようになりました。

その後は、面白いシーンはゲラゲラ笑い、しんみりしたシーンには鼻をすする音が劇場内のあちこちから聞こえてきたわけです。

 そう、ユーモア溢れる滝田洋二郎監督らしい演出が全編に冴え渡っているのですが、中盤、5分遅刻して遺族から怒られるシーンで、見事な納棺の仕事が終わって逆に遺族から感謝されるシーン、このあたりから、非常に美しい映像と亡き人を送り出す心のこもった納棺師の仕事振りに、胸が打たれるようになりました。

極めつけは、銭湯のおかみさん(杉本哲太演じるおさななじみの母親)の葬儀のシーンで、息子夫婦と孫ひとりに、納棺師夫婦だけのごく少数で納棺の所作を行っているシーン。
このあと、棺が燃やされるのですが、そこに居た銭湯の常連のおじさん(笹野高史)のセリフも含めて、後半最大の泣かせる場面となっていました。

この場面を観ると、家族が亡くなる事の意味合い、残された家族が感じる気持ちなどなど、観る人によってさまざまな事を感じる場面だろうと思います。
僕は笹野高史が、死を「門」だと例え、俺も行くからまた会おうな、と言葉をかけるシーンが印象に残っています。

 物語は、最後の最後に主人公が長らく別れた父親と、遺体の姿で対面する場面で終わります。
そこに、反発心しかなった主人公ですが、子供の頃に父親と交わした石ころを父親が握り締めたまま亡くなっていた事に、一気に記憶と想いが噴き出してきて、涙を流しながら納棺の作業を行います。

余計な後日談など入れず、この場面で潔くエンディングを迎えるって点は非常に素晴らしかったと思います。

 全編、音楽の使い方が良かったのですが、エンドクレジットを観ると音楽が久石譲でしたね。
或いは、主人公が元オーケストラのチェロ奏者だって事で、クラシックの使われ方も良く、主人公が幾度か、印象的な場面でチェロを弾くシーンが良かったですね。
特に、奥さんが実家に帰って、会社の3人だけでクリスマスを過ごす夜にチェロを弾くシーンは美しかったです。

 さて、物語的に一番気になったのは、やはり広末涼子演じる主人公の妻の態度でしょう。

もちろん、けがらわしいと突っぱねるのは違和感もあるかも知れませんが、彼女が夫に今の仕事を辞めて別の「普通」の仕事に就いて欲しいと願うのは、ごくごく普通の反応だろうと思います。

彼女は一旦、実家に戻るのですが、妊娠によって夫の元に戻ってきます。
しかし、それも夫の仕事を認めたわけではなく、やはり夫に「私と子供の事を考えて、誇れる仕事に就いて」って事で、翻意を促していたわけです。

ただ、その時に銭湯のおばさんが亡くなって、たまたま夫の納棺師としての仕事を実際に見ることが出来て、彼女の考えもきっぱりと変わったのだろうと思います。
最後に夫が父親の納棺の作業をしている姿を見る目ってのは、以前とは全く違う愛情に満ちたものとなっていたと思います。

彼女が夫の仕事に最初、理解を示さなかったのは良くわかります。
ただ、それまでの彼の仕事振りと観ているこちらとしては、「実際の仕事振りを見ればすぐに気持ちが変わるだろうに」と思っていました。
それが実際に見る事によって全てが変わったのだろうと思います。

 さて、主人公を演じている本木雅弘ですが、非常に素晴らしいですね。
おそらくプロフェッショナルな役柄をさせたら天下一品では無いかな?と思います。

前半で、オーケストラの一員としてチェロを弾くシーンもそうですが、実際に納棺師としての着替え、化粧などの所作を観ていても非常に美しくって無駄の無い動きをしています。
おそらく猛練習をなさったのでしょうが、観ていて不安感を全く感じないどころか、自分が死んだときにはこんな風にされたいなぁ・・・と思わず思ってしまう優しさ、思いやりが感じられました。

かと思えばDVD撮影のシーンのように、見事な肉体をさらけ出して大爆笑のシーンまで演じるのですから、幅広い演技だなぁと感じた次第です。

 一方の山崎努も、さすがの貫禄でした。
冒頭の面接のシーンの飄々としたユーモア感覚も素晴らしいし、本木雅弘同様、納棺師の仕事の場面でも美しさと凛と張り詰めた空気を見事に維持していたと思います。

 さて、本木の妻役を演じた広末涼子です。
どうも、あまり好きになれない面もある女優ですが、今回は僕は違和感を感じずに、逆に夫目線で彼女に惚れてしまいそうになるくらいの感じを受けました(^_^;)
ま、夫が最初の仕事の後に、肉料理が食べられなくて思わず彼女に抱きついて性的な欲求が高まるってシーン、なかなかエロティックな感じが良く出ていました。

そういえば、あのシーンでは死に直面した主人公が、死して活動を停止した「肉の塊」としての遺体ではなく、血が通って生命活動に満ち溢れた妻の体に触れて、その感覚を深く味わいたいって思ったのでしょう。
また、死に対する恐怖から性に転化して、自分が死にたくない、自分の子孫を残したいって無意識の欲求もあったのかもしれませんね。
人間の死と生、そして性を感じさせるシーンで、ちょっと観ていてエロティックなので焦りましたが、好きなシーンでしたね(^_^;)

 死をもって終わりと考えるべきだろうか?ってのは永遠の命題だろうと思います。

しかし、残された人が死者を送り出す儀式を通じて、亡き者への想いを重ねていく姿は、亡き者への敬意と愛情の現われでしょうし、それがひいては残された者が生きている他者を愛し、思いやる気持ちに繋がるのかもしれません。

葬儀を通じて、死者をあの世に送り出す、そして自分もいずれは同じ道を辿って送り出される事になるのだ・・・と、それぞれが感慨深い想いにひたる事になるのでしょう。

2008年10月 5日 (日)

「容疑者Xの献身」感想

「容疑者Xの献身」感想

(08年10月04日 TOHOシネマズ梅田・シアター1)
(監督)西谷弘
(出演)福山雅治 柴咲コウ 北村一輝 松雪泰子 堤真一

面白度 :9点/10点
お薦め度:8点/10点


 TVドラマ「ガリレオ」の「劇場版」、「容疑者Xの献身」を初日に観て来ました。

 いやぁ、予想外に素晴らしかったです(^^)
ひとことで言えば「泣けるミステリー」と言えるでしょうか。

ストーリーの素晴らしさと役者の演技、特に福山雅治のカッコ良さと堤真一の演技の素晴らしさに、ほぼ満点の感想を持ちました。

ただし、ストーリーがあまりに重い・暗いので、TVのテーマ曲のような軽やかなイメージで見ると、冒頭から一気に突き落とされる気がしますので、僅かにおもしろさを9点としました。

またお薦め度も、カップルが娯楽で観に来るには重過ぎる気がするし、TV版のような実験で証明する派手なシーンは唯一冒頭に登場するだけ、しかも本編とは一切関係なく、それ以外にド派手なシーンは一切登場しませんので、僅かに低い8点としました

 この映画、TV版を観ていてキャラにハマっていたので、劇場版も是非とも観たい!と思っていたのですが、一方でストーリーに関しては、正直、あまり期待せずに観に行きました。

ま、昨今のTVドラマの劇場版はやりの中で、どうしても知名度だけで客を引いて内容はイマイチが多い・・・ってイメージがあったからです(あくまでもイメージですが(^_^;))。

ところがどっこい!

観始めると一気にドラマに引きずり込まれたのです。
中盤では「これでオチがあるのか?」と逆に不安になりましたが、クライマックスに次々に展開するオチには、これはもう驚かされると同時に、非常に「泣かされる」展開となっていったのです。

おそらく、原作付きの映画ですから、原作そのものが素晴らしかったからでしょうが、それにしても昨今の邦画の中でも図抜けて完成度の高い作品であったのでは?と思います。

ごく自然で普通な風景が、実はラストへの伏線となっていたのも見事だし、トリックに関しても手品のように「そうなるか!」と驚かされる見事なものであったと思います。
またラストに関しても、観ている人がそれぞれに賛成・反対の意見を持てるようになっていて、非常に考えさせられる物語の終焉であったと思います。

キャラで言いますと、僕が「この世の中で一番、なりたい顔」と思っている福山雅治、これがスクリーンで観ても映える男前っぷりで、男だけど惚れ惚れして見ていました(^_^;)

一方、あい対する堤真一は、かなり偏執狂的な風貌で暗いキャラを演じていたのですが、そのキャラ作りの徹底さ、そしてラストで見せる叫びの素晴らしさで、このドラマの重厚な物語の完成度を上げるのに役立っていたと思います。

今回は、正直、柴咲コウと北村一輝は「手駒」の一つとして使われていて、TV版のように湯川との密接な絡み合いってのが、それほど感じられませんでした。
しかし、ドラマそのものが良かったので、その点はそれほどマイナスではありませんでしたね。

あと、TV版では柴崎演じる内海とコンビを組んでいた品川祐が、実にチョイ役のゲスト出演的だったのは残念だったかなぁ(^_^;)
個人的に「役者」としての品川が好きだったもので(^^ゞ
おそらく、映画としては品川祐よりも北村一輝の方が、重厚なドラマに「絵的」に映えると思ってのキャスティングかな?と思います。

 いずれにしろ、先日観た「パコと魔法の絵本」が今年見た邦画のナンバー1かな?と思っていたのですが、意外な所に伏兵が潜んでいましたね。

大人なミステリーを楽しみたい人には、非常に上質な2時間が楽しめる、傑作であったと思います。
お薦めしますね(*^_^*)








※以下、ネタバレがあります。







 ま、ド派手なシーンは唯一冒頭に登場する実験シーンのみで、しかもそれは本編とは全く関係ない導入部エピソードなんですよね(^_^;)

いわば「ミッション:インポッシブル」(MISSION IMPOSSIBLE:1996)の冒頭シーンのようなもので、メンバー紹介程度の意味合いしか無いでしょう。

それ以外、この映画には実験シーン・ド派手なシーンは一切登場しません(^_^;)
その意味では、TV版の「ガリレオ」をイメージして、映画版なんだからさらにビジュアル的に派手なシーンの連続か?と思って観に来た人には「あれ?」だったろうと思います。
例のTV版のテーマ曲、あの軽快で明るいイメージを持って行くと、全く違ったウェットさ、ヘビーさに違和感を感じる事でしょう。

また、ストーリー的にはTV版のどのエピソードよりもヘビーで、重く暗いテーマ・展開であるので、全体のイメージは大きくTV版とは異なっていたと思います。

僕はこの作品にハマったので、大いに絶賛したのですが、一般的にはお薦め度が低くなってしまいますね(^_^;)

 さて、TV版の「ガリレオ」は全エピソードを観ているのですが、各エピソードで出来・不出来が大きかったとは言え、全体の雰囲気、特に湯川学のキャラクターと演じる福山雅治のカッコ良さには大いにハマってしまい、あれだけで終わってしまうのが非常に惜しいなぁと感じたほどです。

ちなみに、TV版エピソードとしては冒頭の何話かと最後のエピソードくらいがハマった程度で、途中は微妙なエピソードが多かったように思います。

 実は今回の劇場版はそれほど期待していなかったんですよね(^_^;)

TV版が好きだったって事で「キャラ観たさ」に「観たい!」と思いましたが、ストーリーに関してはそれほど期待していませんでした。
原作付きって事で、原作の評判も良いですから、そこそこは面白いとは思いましたが、予告編やCMを見る限りではTV版とは違って、すこし「暗い」「重い」って印象を受けました。

また、昨今はTVドラマの劇場版ってのが多くて、どうも、知名度で観客動員数が伸びてるだけって感じだったのも、今回の劇場版への期待を薄くしていた点があります。

 ところがどっこい!

 実際に観始めると、出だしこそスローペースで「大丈夫か?」と思ったのですが、松雪泰子演じる花岡の元夫が登場してDVで暴れるあたりからヒートアップし、花岡が元夫を絞殺するあたりでは、既に花岡に心情がハマりこんでいたわけです。

その後、トリックは一切明かされず、どうやら隣人の堤真一演じる石神が死体処理とアリバイ作りに手助けしたらしいって事だけがわかって、ストーリーは進行します。

このあたりは非常にハマったのですが、逆に中盤は「あれ?大丈夫か?」と思うようになりました。
中盤あたりでは、目だったストーリーの展開もなく、福山雅治演じる湯川の明晰な謎解きや実験もなく、淡々と花岡と石神の生活を描く部分が続くからです。

このあたりで感じたのは、「果たしてこのドラマには『オチ』があるのか?」って点でした。

ミステリーとして考えると、TV版では湯川が名探偵よろしくトリックを暴いて「無事解決」ってエンディングを迎えるのですが、今回の劇場版を観る限りでは、これだけ重くて暗い展開では、最後に「オチ」としての「謎解き」など入り込む余地が無いのでは?と感じていたのです。

しかし、この映画はそんな僕の不安を吹き飛ばすほど、クライマックスであれよ、あれよと言う間に矢継ぎ早の展開で見事な「オチ」をつけてくれました。

 まず最初に、石神が自首して石岡親子の罪を全てかぶったって点に、驚かされると同時に泣かされてしまいました。

劇中の雪山登山のシーンで、石神が湯川に「この謎を解いても、誰も幸せにはならないんだ」と言います。
その言葉を、のちに湯川は内海に繰り返すのですが、その通り、この悲劇的な物語の中にあって、湯川が謎を解いて全てが明るみに出ても、誰も幸せにならないわけです。

もちろん、(あとで語りますが)倫理的な意味合いでは、突発的殺人であっても、罪は罪として告白して裁きを受けるべきだと言うことでしょうが、元夫のストーカー的DVに苦しみ、新たにダンカン演じる男性との幸せな未来を築けそうになっていたし、若い娘の為も考えれば、全てを石神が引き受けて終われば、石神以外は誰も不幸にならずに済むって事です。

それを意味する石神の自首シーンで、僕は大きく心を打たれました。
凡百のミステリーでは、下手に泣かそうとすると必ず失敗して、ウェット過ぎて僕は受け入れられないケースが多いのですが、今回は演出も役者の演技も見事だったせいか、大いにハマりました。

しかも!

それだけに終わらず、このドラマでは、さらにとどめの一撃を喰らわせてくれます。
それが湯川による「トリック」の解明です。

出勤簿を見て気付いた点なのでしょうが、誰しもが犯行が実際の犯行の「翌日」に行われたものと思い込み、警察も花岡への聞き込みでは犯行翌日のアリバイしか尋ねなかった。
観ているこちらは、のちに映画のチケットの半券などを用意して、偽装工作をしたのだろう・・・と思っていたのですが、本当は犯行は警察が思っていた日の「前日」に行われており、実際に翌日にあの親子は映画を観たのでしょう。
ですから、花岡親子は演技ではなく、一切、嘘をつくことなく「聞かれたら真実を答えれば良い」って事になります。

それに至るまでの石神の「もう一つの殺人」も見事でした。
そのトリックを使う事によって、被害者が実際に殺された日の「翌日」に殺されたように見せかけ、その為の顔と指紋を潰す行為だったのです。

また、冒頭にダラダラと川岸のホームレスの姿を、石神の出勤の風景として描いていたのですが、最初、「なんで無意味なダラダラしたシーンを続けるんだ?」と感じました。
しかし、それが実はベンチに座っていたホームレスが「消えている」シーンを描く事によって、トリックの前フリとして必要なシーンだったってのも、「なるほど!」と感心した次第です。

 作品としては、正直「意外」であった点が、面白さに繋がったと思います。

これが、もし「踊る大捜査線」のように、派手なシーンを意識して、TV版のテーマ曲のように軽快なものを意識して作っていたら、見栄えはするでしょうが、ドラマとしては軽いものになっていただろうと思います。

それを、こちらがイメージしていたものと真逆の、非常にシリアスで重いものにしていたのが、成功に繋がったと思います。

その一方で、僕はその意外性にハマってしまったのですが、TV版のイメージが強い人、コミカルで軽妙洒脱なイメージをそのまま期待して観に来た人にとっては、あまりのシリアスさと重さに、面白くない・退屈だとの印象を持った人も居たと思います。

このあたりは、非常に微妙な点であったろうと思います。

 さて、この映画には一つ「非常に重要な問題」が残されています。

それが、最後の湯川の行動なのです。

つまり、石神の言う通り、この事件ってのは「謎を解いても誰も幸せにはならない」事件なのです。
学生時代の友人として、湯川も石神のやろうとしている事、その意思ってのは十二分に理解していたはずです。
観ているこちらも、現実には倫理的問題があるけれど、ドラマの中の架空の話としては、悲惨なDVに幸せな家庭を崩壊されそうになったつましい親子にとっては、あの事件を石神が偽装して自首する事によって、全てが(石神以外)丸く収まっていたはずだろうと思います。

なのに、なぜ湯川は謎を解明し、それを花岡に伝えてしまったのか?

湯川が花岡に全てを伝える事によって、良心の呵責に耐えられなくなった花岡は警察に出向き、自首する事になったのです。
ラストに川ざらいで元夫の遺体が出てきたと思われるシーンが描かれていました。
具体的証拠がなければ、花岡が有罪となるのは難しかったでしょうが、どうやら花岡も罪を償うことになるようです。

ここで問題になるのが、湯川が何も語らなければ、全てを胸にしまっておけば、全ては石神の思い通りになって、衝動的に殺人をしてしまった花岡親子も、心に傷を負いながらもダンカン演じる男性との再婚で幸せな人生を暮らす可能性が高かったと思えます。

 再び問いますが、なぜ湯川は謎を花岡に伝えてしまったのか?

 理由としては二つほど思い浮かびます。
一つには、湯川の倫理観がそれを許せなかった。
もう一つには、作者の倫理観がそれを許せなかった。

 一つ目としての「湯川の倫理観」ですが、彼は単純明快に「物理現象の謎を解く」事にしか興味が無く、犯人の犯意その他には全く興味が無いのですが、今回は容疑者が友人って事で、これまでとは全く違った結論を出したようです。
本来なら、彼は謎を解明して内海に告げるだけで役目を終えていたはずですが、本人から直接、石神と花岡に謎を告げに行きます。

ここには、おそらく「友人」と思っていた石神に、逆に「君を友人とは思っていなかった」と告げられた事もあったのかもしれません。
それでもなお、湯川は石神を友人と思っていたのでしょう。
そうした気持ちもあってか、逆に友人だからこそ、真実は明確にするべきだとの湯川自身の倫理観があったのだろうと思います。

感情論としては、友人が墓場まで持ち込もうとしていた「謎」であり、石神が言うとおりにその「謎」を解明しても誰も幸せにならないって事を湯川自身も知っていたわけですから、僕だったら、石神の意思を尊重して謎の解明を胸に秘めたままでいたと思います。

しかし、湯川はそれを黙っている事自体が、湯川自身の自分への裏切りであるだけでなく、石神が嘘をつき続ける事すらも、倫理的に間違っているとの「自分の倫理感を他人にも適用する」との湯川の倫理観があったのかもしれません。

 もう一つの「作者の倫理観」ですが、これは今回の劇場版が原作どおりのオチなのかどうか?分かりませんので、あくまで「作者」としてましたが、原作者か映画の脚本家かは分かりませが、いずれにしろ、物語を考えた人の倫理観です。

例えば、ハリウッド映画では「ハッピーエンド」にならなければならないって強迫観念があるようで、原作小説やオリジナル映画がある映画でも、アン・ハッピーなエンディングを平気でハッピーエンドに変える風潮があります。

例えば、物語の中で非倫理的・非道徳的な行為を行った人間は、必ず殺されるか逮捕されて罪を償うようになっているのです。
決して、そのような行為を行った人物が、エンディングで自由になってはいけないのです。
その例外も幾つかありますが、それはあくまでも「意外な」作品として、ハリウッドでも珍しい作品になっています。

翻って本作ですが、ま、ドラマ的にも容疑者石神の思い通りに事が進んでしまうと、ネタばらしも無くて、あまり面白くないオチになってしまうって問題点もあったろうと思います(^_^;)

しかし、それ以上に製作する側が、犯行を容認するようなドラマを作りたくない、行った罪は償わなければならないって思いがあったのかもしれません。

それは、登場人物の石神自身にも言えると思います。
彼は、行ってもいない殺人の罪を告白して逮捕・起訴されて刑務所行きになるよりも、「実際に」殺人を犯して、その罪で刑務所に入ることのほうに、自分自身の心理的葛藤を少なくさせていた節があります。
つまり、実際に人を殺しているんだから、自白するのも嘘ではないし、刑務所に入って罪を償うのも嘘にはならない。

途中で湯川が言っていたように、もし最初から石神が関わっていた計画的なものであったなら、石神は決して「殺人」は選ばなかっただろう・・・って言葉、これも関係してくるかもしれません。

ある意味、石神のそこまでの潔癖性ってのが災いしたのでしょう。本来なら花岡の元夫の1人だけが死んで終わりだったのに、偽装工作をするために、どこの誰ともわからないホームレスをもう1人、殺さなければならなかった。

作者の倫理として、「人を殺した人間は、ドラマの中でも裁かれないといけない」と思っているとしたら、石神が裁かれるのはホームレスを殺したからです。
となると、もう1人の被害者、花岡の元夫を殺した罪として、花岡自身も、ドラマの中で裁かれないといけない・・・

下手に石神がもう1人の殺人を犯した為に、2人の被害者が出た。
とすれば、それぞれを殺した犯人が、それぞれの罰を受け入れないといけないって事になってしまうのだろうと思います。

 実際に、この湯川の倫理観にしろ作者の倫理観にしろ、それが働いたのかどうか?は分かりません。
そこまで考えずに、ドラマのオチとして盛り上げる為に考えたオチが、「たまたま」こうなっただけ、とも考えられます。

それでも、観ている観客に「あそこで湯川が胸に収めていれば」と感じた人も少なくなかったのでは?と僕は思うのです。
その良し悪しは判断できませんが、それを考えさせるだけの、ドラマの深み、観客の感情への揺さぶりの深さってのが、この映画にはあったのだろうと思います。

2008年9月30日 (火)

「アイアンマン」感想(劇場)

「アイアンマン」感想(劇場)
(IRON MAN)

(08年09月28日 梅田ブルク7・シアター1)
(監督)ジョン・ファヴロー
(出演)ロバート・ダウニー・Jr ジェフ・ブリッジス テレンス・ハワード グウィネス・パルトロー

面白度 :7点/10点
お薦め度:6点/10点


 ロバート・ダウニー・Jr主演の「アイアンマン」を観ました。

 惜しい! 惜しいなぁ・・・

かなり期待して観に行ったのですが、面白度はあと一歩の「7点」となりました。
前半に限って言えば9点なんですが、後半が5点なので、合計14点÷2=7点って所です。

個人的にはクライマックスでの敵との戦いを、もっともっと盛り上げてくれないと、満腹感が感じられませんでした。
あと、敵が「おっさん」ってのもなぁ・・・いや、ジェフ・ブリッジスは大好きですし、久々に観れて嬉しかったのですが、派手なバトルを演じる敵ボスとしては、ちょっと強さが感じられませんでした。
あれだったら、スタークを捉えたアフガンのテロ集団の屈強な男、彼をスーツに乗せた方が見栄えが良かった気がします。

特撮に関しては完璧で、特にトニー・スタークが「着る」パワード・スーツ、アイアンマンのスーツってのが、おそらく実写とCGを組み合わせているんだろうけど、どう見ても実物にしか見えず、そのスーツの質感のリアリティってのには圧倒されました。
思わず、この特撮のクオリティで「ロボコップ」(ROBOCOP:1987)や「ロボコップ2」(ROBOCOP 2:1990)をリメイクして欲しいなぁ・・・と思ったくらいです(^^)

主演のロバート・ダウニー・Jrは、どちらかと言えば中堅の後半って感じのポジションで、しかもこの手のアメコミ・ヒーローものの主役を演じるポジションには感じられず、ある種、違和感のあるキャスティングでした。
しかし、実際に映画を観てみると、その違和感ってのは全く感じられず、この作品の主役トニー・スタークは彼しか考えられないと思えました。

悪役となったジェフ・ブリッジスは、久しぶりのスクリーンでの鑑賞となったのですが、あのハゲ頭ってのは役の為に剃ったのか、実際にハゲてしまったのか?がメチャクチャ気になりますが(^_^;)
会社の悪巧みをする重役としては似合っていましたが、先に書いたようにヒーローと真正面から戦う敵キャラとなると、ちょっと年をとりすぎていて辛いかな・・・と思います。

いずれにしろ、冒頭から中盤にかけての拉致・脱出・新たなるスーツの製作と続くあたりは非常に素晴らしく、是非とも劇場で観ていただきたい部分です。
しかし、後半、特にクライマックスの戦いがイマイチ物足りないので、お薦め度は少し低めに設定しました。

 エンド・クレジット後にワン・シーン展開するので、劇場が明るくなるまで席は立たないで欲しいですね(^^)






※以下、ネタバレがあります。






 この映画、ロバート・ダウニー・Jrという、どちらかと言うと中年の俳優がアメコミのヒーローを演じるって事で、ちょっと「大丈夫か?」と思っていたのですが、ふたを開けてみるとアメリカでは図抜けた大ヒット!って事で、予告編も非常に面白そうだったので、かなり期待して観に行きました。

で、実際に観始めると、冒頭いきなりのテロ集団の襲撃シーンの強烈さにはじまり、そこから時間を遡っての物語展開、そして洞窟内でのテロ集団に捕らわれてのスーツ初号機(?)の製作、脱出と続くあたり、思いっきりドラマにドップリと漬かってしまいました。
その後、アメリカに戻ってからの、試行錯誤の新型スーツの製作シーンなど、アクションは少なく地味目ではありましたが、その分、軽いコミカルさも交えつつ、全く飽きさせずに楽しませてくれました。

そして新型スーツが完成してからのテロ組織への攻撃、戦闘機との空戦など、中盤最大の見せ場がありましたが、ここまではほぼ完璧!と言える面白さでしたね。

ところが、ここから急激にパワーダウンするのです(^_^;)

僕が想像していた後半は、例のアフガンのテロ組織、その中でトニー・スタークの脱出の際に右顔面に火傷を負ったテロリストの屈強な男、彼がジェフ・ブリッジスと組んで、改良型のパワード・スーツに乗り込んでスタークと戦うのかな?と思っていたのです。
それが、なぜかジェフ・ブリッジスはそのテロリストを壊滅してしまい、自分自身がスーツに乗り込んでスタークと闘う事になるのです。

もちろん、それでもド派手に暴れてくれれば満足だったのですが、クライマックスでのスタークとの戦いがもうちょっと・・・って感じだったので、マイナスに感じてしまいました。

ほんと、クライマックスの戦いは個人的にはあの「2倍」は続けて欲しかった気がします。
路上で車を持ち上げたり、バスに突っ込んだりのド派手さはありましたが、その直後は会社のビルの屋上で殴りあうだけ。しかも、例の装置を暴走させて爆発させて終わり・・・って、ちょっと呆気なさ過ぎるよなぁ?と感じた次第です。
ここは一発、「ロボコップ2」のクライマックス、ロボコップVSロボコップ2の戦いのように、ビルの屋上から地下まで使ってのバトルを見習って、ビルの屋上だけじゃなく、空間を縦方向にも使ってド派手に暴れて欲しかったですね。

これでクライマックスが面白かったら、映画全体での面白度も9点と言って良かったでしょう。
前半だけで言えば、先日観た「インクレディブル・ハルク」(THE INCREDIBLE HULK:2008)よりも一回りも二回りも上って感じだったのですが、全体では「インクレディブル・ハルク」とどっこいどっこいかなぁ・・・と思います(^_^;)

 あと余談ですが、本編のストーリーとは直接関係ありませんが、主人公のスタークの生き方が非常に魅力的だったってのも、興味があった点です。

拉致から帰還してからは少し違っていたようですが、莫大な資産を持っていて、美女をとっかえひっかえし、自宅に広い駐車場兼工房を持っていて、そこで悠々自適に車をいじって遊んで暮らせる。
のちに帰還してからは人工知能内蔵らしきコンピュータを道具として使い、一からパワード・スーツを手作りしていく。

どこか所ジョージ的と言うか、金銭的・時間的に余裕があって趣味に没頭しながら生活しているって感じがして、30代から50代くらいをこんな感じで過ごせたら幸せだろうなぁ・・・と羨望の眼で見てしまいました(^^ゞ

2008年9月28日 (日)

「パコと魔法の絵本」感想(劇場)

「パコと魔法の絵本」感想(劇場)

(09年09月23日 TOHOシネマズ梅田・シアター3)
(監督)中島哲也
(出演)役所広司 アヤカ・ウィルソン 妻夫木聡 土屋アンナ 阿部サダヲ 加瀬亮 小池栄子 劇団ひとり 山内圭哉 國村準 上川隆也


 中島哲也監督の「パコと魔法の絵本」を観てきました。

 メチャメチャ面白かったです(^O^)/
実はあまり期待せずに観に行ったのですが、その予想をいい意味見事に裏切ってくれた傑作でした。

とにかく、冒頭から大爆笑の連続で、最後にはボロボロ泣かせてくれるんだから、なかなか侮れない作品でしたね(^_^;)

俳優としては、やはり阿部サダヲが最大のクセモノであり芸達者でした。
彼が一番笑わせてくれましたね。

それに次いで素晴らしかったのは、実は國村準です。
いつもはコワモテの役柄ばかりなのですが、いきなり中年のオカマ役でどアップで登場するはち切れよう(^_^;) 挙句の果てにジュディ・オングの「魅せられて」を堂々と歌われては、舞台の見所を全てもっていかれたような感じですね(^_^;)

また、映像も冒頭からエンディングまで素晴らしくって、ホント、タイトルの絵本の世界にそのまま飛び込んだような映像感覚の素晴らしさには、息を呑むほどでした。
まるでティム・バートンかジョー・ダンテか?ってくらいでしたね(^^)

実は中島哲也監督の作品を観るのは初めてで、話題になった「下妻物語」(2004)も「嫌われ松子の一生」(2006)も観ていないのですが、久々に邦画で徹底的に楽しめる娯楽映画を観た気がします。
是非とも劇場でご覧頂きたい作品です。






※以下、ネタバレがあります。






 この作品、劇場で予告編を観た時から気になっていたのですが、どうも「ハズすのでは?」って危惧があって、「観たい映画リスト」の上位に入りませんでした。
ところが、僕の周りで「観たい」って人が居たもので(って言っても1人ですが(^_^;))、他に積極的に観たい映画も無くなったので、あまり期待せずに観に行ったのです。

最初、期待していなかった理由としては、どうも「コメディ」として笑えるのかどうか?って危惧と、「感動作」として泣けるのか?って危惧があったからです。
子供向けのファンタジーのようなストーリーだが、登場する人物はどれも一クセも二クセもあって、とても「親子連れで楽しむファンタジー」って印象が無かったからです。
映像的には魅力的だが、さりとて笑えるようにも見えないし、キャラが強烈だから泣けるようにも見えないし・・・と思ったわけです。

 ところがところが!

実際に観始めると、冒頭の老人になった阿部サダヲが大貫の遺影にマジックで落書きしようとするシーンで大爆笑してしまったのをきっかけに、あとは映像の見事さ、ギャグの面白さ、俳優の個性の強烈さ、さらにはクライマックスの大感動まで、全く飽きさせずに一気に観る事が出来たわけです。

映画として観ると、ファンタジーとしては僅かに「長い」かな?と感じるのですが、それは許容範囲でしょう。
あと、「子供が観れるかな?」って点も、確かにオカマやヤクザが出てきて、微妙なセリフもあるにはあるが、後半の感動を考えると十二分に観られる・・・と思います(^_^;)

 ストーリー的には、やはり中盤から後半にかけての大貫の心理の変化と、みんなでパコの為に絵本を舞台化するあたりが一番面白かったです。

ラスト、大貫が絵本のガマ王子同様に倒れ、息を引き取る・・・と思わせた部分では、劇場のあちこちからすすり泣きが聞こえるほどで、僕も嗚咽を堪えながら観ていました。
非常にシンプルなストーリーで、しかも妙なキャラがわんさか登場する映画にも関わらず、これだけ一気に盛り上げて泣きにまで持って行くあたりは、非常に素晴らしい手腕だと感じました。

ただ、その後に「実は大貫は発作を起こしただけで、死んでいませんでした」って点は、僅かに微妙だったかな?・・・と思います(^_^;)

現在に戻って、阿部サダヲがオチを言うあたりは大笑いさせますが、その後の「本当の最後」の部分は、何故、大貫でなくパコが病床に伏せるのか?って点だけが、ちょっとだけ違和感を感じた次第です。

ま、それでもこの作品の感動と涙が薄れたわけではありません。

最後に大貫がベッドの上のパコの頬に触れると、パコが薄れ行く意識の中でガマ王子に手を取られて泳いで行く姿を体験するってあたりは非常に素晴らしかったと思います。

 次に役者です。

 個人的には、一番ウケたのは國村準の初登場シーンでしょうか(^_^;)
いつもはコワモテの役柄が多く、ヤクザや政府役人のクセモノっぽいキャラとかばかりを演じている彼が、いきなり濃いメイクで中年オカマ役を演じて、初登場でその「濃い」顔をどアップで撮られるんだから(^_^;) 観ていて大受けいたしました。

その後、なにかとジュディ・オングの「魅せられて」を歌うシーンが登場するのですが、これまた大爆笑で大笑いさせてもらいました(*^。^*)

 彼以上に目立っていたのが、やはりクセモノの阿部サダヲでしょう。

冒頭に老人となった姿で登場しますが、大貫の遺影にマジックでヒゲをいたずら書きしようとするシーンで、一気に観客の心を鷲掴みにしました。
僕もこのシーンで大爆笑して一気にハマってしまい、その後、「人間なんて!」と人間でいる事を嫌がっている彼の「ピンポン」が登場するたびに大爆笑していました。

シリアスな演技からコメディまで見事にこなしますが、特にコメディの時のハイテンションな演技には感服いたします(*^_^*)

主人公のパコを演じるアヤカ・ウィルソンも、初めて観る俳優ですが、非常に可愛らしくって「ゲロゲ~ロ」と絵本を見ながら言うシーンは、魅力溢れていましたね。
あと、山内圭哉演じる関西弁バリバリのヤクザも爆笑(^^) 関西人の俳優さんなのでしょうが、ボケ・ツッコミのタイミングが絶妙で、彼で笑わされたシーンが何ヶ所もありました。
主人公大貫を演じる役所広司はさすがの貫禄で、難しい役柄を見事に演じていました。

その外にも数多くの俳優が登場していますが、この当たりが僕のウケた俳優さんたちです。

 次に映像の見事さです。

 冒頭から色彩感覚溢れるコミック・タッチな映像感覚が魅力的でしたが、この感覚、観ていてティム・バートンやジョー・ダンテを思い出しました。

ティム・バートンでは初期の「ピーウィーの大冒険」(PEE-WEE'S BIG ADVENTURE:1985)を思い出したし、それ以上に歪んだ室内セットなどは「トワイライト・ゾーン/
超次元の体験」(TWILIGHT ZONE THE MOVIE:1983)でジョー・ダンテが監督したエピソードの、コミックを実写化したような映像を思い出しました。

極彩色のオンパレードなのですが、観ていて違和感や疲れる事など全く無く、逆に惚れ惚れさせられるような映像の密度の濃さを感じました。
特に、予告編でも期待をしていた後半のCGのオンパレードの部分には、実写の極彩色とはまた違った、さらにビビッドな気持ちよさと勢いを感じました。

タイトルに「絵本」と入っているのですが、本編もまさに「絵本」そのものの映像感覚ってのは素晴らしかったですね。

 全体的に非常にクオリティが高くって、逆に欠点を探すほうが難しいほどの完成度だと思います。
また、ハリウッド映画に比べても全く遜色の無いほどのエンターテイメント度と映像感覚が素晴らしく、昨今、元気の無いハリウッド映画に比べて逆に図抜けて面白かったと思います。

DVDになってから・・・などと言わず、是非とも劇場の大スクリーンで観て欲しい作品でした。

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