「NEXT -ネクスト-」感想(劇場)
「NEXT -ネクスト-」感想(劇場)
(NEXT)
(08年04月27日 梅田ピカデリー2)
(監督)リー・タマホリ
(出演)ニコラス・ケイジ ジュリアン・ムーア ジェシカ・ビール
面白度 :9点/10点
お薦め度:3点/10点
ニコラス・ケイジ主演の「NEXT」を観てきました。
いやぁ、好きな終わり方ですねぇ。ウケました(*^。^*)
ただ、あの終わり方は「え?こんな終わり方なの?」とハズす人が多そうなので、面白度は9点ですが、お薦め度は低く目の3点としました。
映画としては、長編って言うよりも中編を観たような感じですね(^_^;)
8分目の満腹感で物足りなさも感じそうですが、その分アイデアの勝利で、イマジネーションを次々に展開するクライマックスには、もう満足と痺れを感じたほどです。
ただし、中盤は地味で見せ場も無く、非常に淡々と物語が進んでいきます。冒頭が魅力的だっただけに、このあたりで「あれ?息切れしたのかな?」と感じてしまった。
このあたり、中盤でも一箇所くらい派手な見せ場を設定して欲しかった気がします。
また、アクションとしては予告編で出てきた映像がほぼ全てであり、予告編で観ていない「お!」と驚くシーンが無かったも、ちょっと残念ではありました。
その意味では、特撮とアクションを使いまくったド派手映画を期待して観に行くと、ちょっと物足りなさを感じるかも知れませんね。
しかし、先に書いたようにアイデア勝負の部分は非常に魅力的に感じました。
主人公が「2分後が予知できる」って事で、敵がどのように攻撃して来ようとも、確実に予測できて避けれるってのが面白かったです。
また、彼女へのアプローチを幾度もシミュレートして、失敗したパターンを除外して完璧に成功するあたりも「欲しい能力だなぁ」と思った次第(^_^;)
それがラストの場面で幾度も登場するので、これはもう見事な前フリであったと思います。
オマケですが、前半に「刑事コロンボ」ことピーター・フォークがチョイ役で出ているのも「おお!」と驚かされました。
いいおじいさんになってましたねぇ(^_^;)
それにしても、2分後が予知できるなら、やっぱり僕はギャンブルか株で大もうけするだろうなぁ・・・と(^_^;)
世界を救う事には使わないだろうね。
※以下ネタバレがあります。
この映画、フィリップ・K・ディックの短編「ゴールデン・マン」が原作。
2分後を予知できる超能力を持つ男が、FBIに核テロリズム防止の協力を依頼され、身柄を追跡される。
同時に、テロリスト側も彼の命を狙い、無事に主人公は核テロを防ぐ事が出来るか?を描くSF的なサスペンス・アクションです。
同じフィリップ・K・ディックの短編が原作の映画では、ポール・バーホーベン監督の「トータル・リコール」(TOTAL RECALL:1990)があります。
今回も「トータル・リコール」同様、原作とは大きくかけ離れた「別物」ではないかな?と思います。
元々が短編であるって事は、2時間の長尺を持たせる展開では無いと思うので、原作は読んでいませんが、おそらくは「2分後を予知できる超能力」って点だけがアイデアとして扱われたのではないかな?核テロリズムは確実にオリジナルだろう、と思った次第です。
いずれにしろ、ディックの小説はやたらと映画関係に人気があるみたいで、「P・K・ディック原作」と銘打った作品は「ブレードランナー」(BLADE RUNNER:1982)「スクリーマーズ」(SCREAMERS:1996)「クローン」(IMPOSTOR:2001)「マイノリティ・リポート」(MINORITY REPORT:2002)「ペイチェック 消された記憶」(PAYCHECK:2003)「スキャナー・ダークリー」(A SCANNER DARKLY:2006)などなど、80年代から現在まで面々と続いています。
SF作家は数多くあれど、何故に彼だけが映画界に人気があるのか?は分かりません(^_^;)
おそらく、扱われている内容が「現実と虚構」「ホンモノとニセモノ」を描き、どちらがどちらか?が混沌となるあたりが、哲学的であったり、SFやサスペンスとして非常にハラハラ出来る要素があるのでしょう。
今回も「未来予知」って事で、「未来」を予知する事によって「現在」の自分の行動を変えてしまうと、選択された未来がさらに変化をする・・・ってあたりが、決められていたはずの未来が混沌としてくる感じを受けます。
さて物語です。
この映画、とにかくアイデアが面白くって、それをフルで活かしたクライマックスは、もう観ていてニンマリするほどでした。
まず、導入部が非常に良い。
SFアクションでありながら、なぜかカジノで物語りはスタートします。
主人公は、あまり人気があるとは思えないマジシャン。
良くある手品や当てっこゲームをして笑いを取る。あとはカジノで大もうけしない程度に、自分の能力を使って生活費を稼いでいるしがない人物として描かれています。
そのショボさが、非常に親近感が溢れる点なのです。
そこで主人公のキャラクターや、カジノの日常風景で観客に短さをアピールして惹き付け、カーチェイスの「未来」を予知させる事で一気に非日常度を加速させる。
このあたりが面白いのです。
中盤は、彼女との恋愛ドラマっぽくて、正直、退屈さを感じる部分もあります。
しかし、後半からは一気にクライマックスまで畳み掛けるような展開が待っていて、これぞハリウッド映画の真骨頂って感じを受けました。
ま、あくまでもB級よりチョット上くらいですけどね(^_^;)
このクライマックスの面白さは後述します。
もちろん、脚本的に「あら」が無いと言えばウソになります。つまり「突っ込みどころ」ですね(^_^;)
例えば、最初は「2分後の未来しか予知できない」と言っておきながら、後半では数時間後をバンバン予知している。
セリフで説明されていませんが、おそらくは彼女の運命に関わる未来か、彼女と自分の両方に関わる未来に関しては、何故か2分後以上先の未来も予知できるようだ・・・ってのが、状況から分かります。
冒頭のダイナーで彼女と出会う、って予知が前フリになっているんですね。
しかし、それも「ご都合主義だろう」と言われれば仕方無いですね。
見事な脚本なら「2分間ルール」を徹底的に守って、最後までそれだけで見事な展開を描ききるでしょうから。
もう一点は、「なーんだ、夢オチか」と思わせるラスト。
これも、正確には「夢」ではなく、完璧な「未来予知」なのですが、ドラマ的には「クライマックスで起こった出来事は、全て『これから起こる事実』であり、実はまだ実際には起こっていませんでした」ってオチは「夢オチ」と同じ効果をもたらすと思います。
それだけに、僕もこの映画の面白度を「9点」としておきながら、お薦め度を非常に低くしたわけです。
このオチにハマるかどうか?は微妙であり、多くの観客が「なーんだ、夢オチか!」とガッカリする可能性があるからです。
しかも、もう一方の「2分以上未来を予知」って点も絡んで来て、非常にご都合主義的な終わり方に見えるのです。
しかし、僕はこのラストに非常にウケたのです。
主人公が「今だ」と言った瞬間に核爆発が発生し、自分の予知が失敗した事が分かった。
その直後、核爆発で吹っ飛んだ船の破片がスクリーンに「バン!」とぶち当たった瞬間、主人公の瞳のアップになって、カメラが引いて行くと・・・映画の途中で描かれたモーテルでの彼女とツーショットのベッドの上だったのです。
この瞬間、僕は痺れるような感じを受けました。
「あ、そうくるか!」と(^_^;)
確かに、彼女との出会いや彼女が爆弾で殺されるシーンで、主人公が2分以上先を予知できるとは描いていたけれど、ここに来て、しかもクライマックスの戦いをジックリと描いた上で「あとはラスト・シーンだけですよ」ってくらいまで来て、「さあ、どうやって2分後に起こる核爆発を防ぐか?」って時に核爆発を防げずに終わる・・・
と思わせて、「実はこのクライマックス全てが『予知映像』だったんですね」と来るわけです。
もちろん、自分に関わる2分後の全ての物事を予知できる主人公が、何故ラストで核爆発のみを予知できずに居たのか?って謎は残ります。
ま、これは脚本的に「失敗して死ぬ」ってシーンを描きたかっただけでしょう(^_^;) 本当は、こんな失敗はあってはならなくて、確実に2分後の核爆発を予知できたはずです。
しかし、その「『核爆発の予知を失敗した』事を予知した」と考えると・・・うーむ、頭が混乱する(^_^;)
とまあ、そのクライマックスの「オチ」の部分にいかにハマったか?を書きました。
次に面白かったのは、そのクライマックスそのものです。
主人公が敵のアジトを突き止めて、核爆弾のある港のコンテナ倉庫と貨物船にFBIを導いていきます。
そこで主人公がガイド役となって、敵の攻撃を避けつつ人質に向かっていくシーンは、もう観ていてニンマリしてしまった。
この場面で、主人公は持てる能力を全て発揮し、敵が銃撃を加えてくる前にFBI捜査官たちに避けるように指示しまくるのです。
こうなってくると、敵の弾など当たるわけが無い(^_^;)
もちろん、彼が全ての局面を把握して指示できるわけではないので、彼の周囲半径2~3メートル以外の人間は防御できずにバタバタ倒れる場面もあります。
しかし、彼が片手を伸ばせる範囲に居る人間は、ほぼ銃撃やトラップ爆弾からは逃げる事が出来るのです。
もう、こうなると「無敵」状態ですね(^_^;)
敵の攻撃が全てわかった上で行動するんだから、確実にこちらの「勝ち」です。敵の攻撃も無力化できるし。
さらに面白いのが、もう少し先に進んで船の中で人質の彼女を探すシーンです。
ここで映画は、主人公の「可能性の未来」を全て映像化し、主人公があたかも「分身の術」を使って何人にも分かれて探しているかのような描き方をします。
主人公はFBIの捜査官たちに「先を探してくる」と言い残して、自分の「未来の分身たち」に人質の居る場所・トラップのある場所・敵の攻撃を全て探らせて、結果として「人質までの残された一本道」を予知してFBIたちと一直線に目的地に向かうわけです。
それを「分身」のように映像化したわけです。
このシーン、なかなか「ニンマリ」させてくれますねぇ(^_^;)
SF小説で、グレッグ・イーガンの「宇宙消失」って作品があり、量子力学を引用しながらまさにこの作品の「分身の術」のような形で主人公の行動を描く場面があり、思わず思い出してしまいました。
この「分身」は、結局は「可能性としての未来」を実際に予知し、「右」の通路に向かった場合にどうなるか?さらにはその「右」の通路の先のT字路で「右」と「左」に分かれたどうなるか?・・・を延々と繰り返し、分岐路ごとに「可能性としての未来」の自分を動かしていくって事なのでしょう。
ただ、理屈で考えると非常に変でもあります(^_^;)
例えば、出発点から左右に行けるとして、「右」に行った場合に失敗したと予知できた場合、次に「左」に進もうとするにはタイムラグが生じるはずです。
つまり、「右に行って失敗した」と予知するのに何秒かかかったなら、次に「左に行った場合は?」と予知するのにも何秒かかかる・・・って事でそのさらに先、先を予知し続けるのなら、可能性の数×予知する時間=合計時間がかかるはずです。
それが、あたかも同時進行で分岐に次ぐ分岐で分裂していくかの如く描くってのは、ちょっと誤魔化しがあるような気がしましたね(^_^;)
ま、もちろん描いている意味は分かりますし、映像的に面白いので「ニンマリ」して満足した次第ですが。
物語的には、ラスト、核爆発を防げなかった事を予知した後の主人公の行動にも、僕は気持ち良さを感じました。
彼は、その能力をチンケな手品や博打にしか使わず、ずっと身を隠していたのですが、愛する女性と出会い、その命を守る為、その未来を守る為に決心してジュリアン・ムーア演じるFBI捜査官に連絡を取ります。
映画はその後「さあ、これから対決に行くぞ!」って場面で終わる。
これが非常に誇らしくって、勇気溢れる行動であり、彼の決断と行動に観ているこちらも胸が熱くなる思いがしたのです。
あれだけの惨劇を防ぐ為、彼は勇気ある行動を取る。
その後の彼の運命、予知した未来とは確実に違う彼の運命については、映画では全く描かれていません。
しかし、彼が確実に目的を達して、敵を倒して核爆発を防ぎ、いつの日か彼女の元に戻ってくる事は想像に難くありません。
そうした部分に、僕は一種の爽やかさすら感じて、観終わった感覚が満足に思えたのです。
特撮に関しては微妙でしたね(^_^;)
予告編でも、なんとなく「CGっぽいなぁ」と感じたのですが、実際に映画を観ても特撮のCGっぽさを感じた次第です。
最初の列車のシーンでも、確実に列車自体をCGで描いていますし、中盤の山肌を転がる車などもCGでしょう。
極めつけはクライマックスの核爆発で吹っ飛ぶ貨物船。かなりCGっぽさが抜けていないってのがもったいない感じでした。
いずれにしろ、不満点や疑問点も多く感じる作品ですが、過去に映画化されたP・K・ディック原作の作品の中でも、けっこう高いレベルの作品に感じました。
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