「ジャッカルの日」フレデリック・フォーサイス
【至高の読書体験】
「ジャッカルの日」
フレデリック・フォーサイス(著)篠原慎(訳)/角川書店
今回紹介するのは、言わずとしれた冒険小説界の重鎮フレデリック・フォーサイスの小説デビュー作「ジャッカルの日」です。
この小説、僕は高校1年の時に読み、同じ時期に読んだ小松左京の「復活の日」と同様、衝撃的なインパクトの残る小説であり、未だに傑作と思っている1冊です。
これで国際謀略モノの冒険小説・サスペンス小説にハマってしまい、同じころにルシアン・ネイハムの「シャドー81」とトマス・ハリスの「ブラック・サンデー」を読んで、どれも傑作ぞろいに興奮して読んだ記憶があります。
さて、この「ジャッカルの日」は、フランスのドゴール大統領暗殺を依頼された一匹狼の暗殺者「ジャッカル」と、それを追うフランス警察のクロード・ルベルの対決を描くサスペンス溢れる小説です。
基本的に、時代背景だとかは事実そのままであり、ジャーナリスト出身のフォーサイスのリアルな筆致もあいまって、「どこまでがフィクションなのか?」と思わずにはおれない臨場感と緊迫感に溢れます。
特に、前半部分では、ジャッカルの作戦準備段階の単独行動の描写がリアルで面白く、後半部分では、逆にドゴールを追う側のジャッカルを、白紙状態から追い詰めていくルベルの姿が知的サスペンスの興奮を誘い、ラストの二人の対決まで見事に収斂されて行くのです。
時代背景は60年代なのですが、物語の骨子は、今読んでも褪せる事なく輝いていると思います。
その「物語の骨子」とは、まさに小説のサブ・タイトルに使われている「マンハント」の美学にあると思います。
サスペンス小説って、極めつければ「人対人」の物語であり、それは「追う者」「追われる者」の対比から生まれるサスペンスなのだと思います。特に敵対した存在が二つあれば、それは互いに追い詰めるか逃げ切るかの物語になると思います。
フォーサイスの「ジャッカルの日」は、派手なアクション場面もなく、徹底して地味に犯罪計画とそれを追う捜査のみを描き、それだけで徹頭徹尾、緊迫感を失わずに描ききっているのですから、見事のひとことだと思います。
そうした、基本骨子である「マンハント」が徹底して見事に描かれている為、オールタイム・ベストとしていつ読んでも面白さの失われない、サスペンスの真髄が感じられる小説になっていると思います。
そう言えば、実在の伝説的テロリスト「カルロス」(本名:イリッチ・ラミレス・サンチェス、通称:カルロス・ザ・ジャッカル)というベネズエラ人のテロリストがいて、名前(通称)が同じなので、フォーサイスは彼をイメージしてジャッカルを描いたのかな?と思ったのですが、調べてみるとカルロスの活動時期は70年代であり、ドゴール暗殺計画の時期は微妙にずれているので、そうではないようですね(^_^;)
ちなみにロバート・ラドラムの「暗殺者」(映画化名「ボーン・アイデンティティー」)には、映画版には登場しませんが、この伝説のテロリスト「カルロス」と同名のテロリストが登場します。こちらは、おそらく実在のカルロスをイメージしたものなのでしょうね(^_^;)
さて、この小説はのちにフレッド・ジンネマン監督によって映画化されるのですが、これがまた傑作中の傑作!なのです(^^)
エドワード・フォックス演じる「ジャッカル」のイメージが精悍で原作どおりであり、映画の中に登場する暗殺者のひとつのイメージを確立したと思います。
監督の力量も素晴らしく、映画全体を通してドキュメンタリー・タッチのリアル志向で演出し、ストーリーも原作をほぼ踏襲するあたり、そしてラスト、「ぼろきれのように壁に叩きつけられるジャッカル」の姿を見事に描いたシーンは、アクション・シーンとしても見事に切れのある映像だったと思います。
ラストあたりは、ほぼセリフ抜きでドキュメンタリー・タッチで通しているのも緊迫感が溢れ、アクション・サスペンス映画として、映画史に残る傑作となっていたと思います。
ま、一方でブルース・ウィリス主演の「ジャッカル」などという、似て非なるクズなアクション映画もありましたが(^_^;)
あんな低脳暗殺者で「ジャッカル」を名乗って欲しくなかったですね(^_^;)
フォーサイスはその後、「オデッサ・ファイル」「戦争の犬たち」「悪魔の選択」「第四の核」「ネゴシエイター」等々、国際分野からさまざまな題材を扱って、リアルな冒険小説を描いてきたのですが、やはり「ジャッカルの日」を頂点として、それを超える傑作は出ていないと思います。
個人的には、クリストファー・ウォーケン主演の映画にもなった「戦争の犬たち」が、小説・映画ともどもアクション好きには堪らない傑作だと思いますが、それ以外はちょっと、弱いかな・・・と思いますね(^_^;)
個人的には、この「ジャッカルの日」を超えるフォーサイスの本では、ノン・フィクションになりますが、「ジャッカルの日」の前に書かれた「ビアフラ物語」が素晴らしい読み物であったと思います。
今は絶版状態であり、ほとんど入手不可能なのが残念なのですが、なぜにこれだけの傑作を再販しないのか?と疑問に思うほど、傑作中の傑作です。
アフリカの独立問題を描き、のちの「戦争の犬たち」に引き継がれる傭兵を描くあたり、そしてそれ以上にジャーナリストとしての若き情熱が燃える文章が、この本を傑作に仕立て上げていたと思います。
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