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2008年9月14日 (日)

「デーヴ」感想(DVD)

「デーヴ」感想(DVD)
(DAVE:1993)

(監督)アイヴァン・ライトマン
(出演)ケヴィン・クライン シガニー・ウィーヴァー フランク・ランジェラ ケヴィン・ダン ベン・キングズレー チャールズ・グローディン ヴィング・レイムス

面白度 :10点/10点
お薦め度:10点/10点


 アイヴァン・ライトマン監督の1993年の作品「デーヴ」をDVDで観ました。

 もともと公開時に劇場で観たのですが、その後もDVDで観直した記憶があります。

今回、久しぶりに観たのには理由があって、木村拓哉主演のドラマ「CHANGE」を観ていてふと、本作「デーヴ」を思い出して「観直してみたいなぁ」と思ったからです。

キムタクの「CHANGE」では、小学校の教師が突然選挙に出る事になり、そのままとんとん拍子で総理大臣になってしまうストーリーでしたが、「デーヴ」は大統領のそっくりさんが、突然病気で倒れた大統領の影武者として大統領本人の役を演じなければならないってストーリーです。

設定自体は大きく違うのですが、僕はこのドラマを観ていてふと「このドラマの脚本家は『デーヴ』を観てるんじゃないかな?」と思ったのです。

それまで政治の世界とは全く関係の無かった心優しい主人公が、国のトップの立場になって、国民目線で人に優しい政策を取るようになる。
それに感化されたSP(「デーヴ」ではシークレット・サービス)が主人公に好感を抱くようになっていく。
主人公を補佐する相手(「デーブ」では大統領夫人)と恋に落ちる。

・・・などなど、特にドラマで大倉孝二演じるSPが、最初は堅物だったのが次第に総理に好感を抱くようになって体を張って行くってあたり、「デーヴ」でヴィング・レイムスが演じるシークレット・サービスの変化を彷彿とさせるものがありました。





※以下、ネタバレがあります。





 あと、「CHANGE」と「デーヴ」の類似点では、議会の演説の最中に倒れるってシーンもそっくりでしたね。

 さて、本作「デーブ」です。

監督のアイヴァン・ライトマンと言えば「ゴーストバスターズ」(GHOSTBUSTERS:1984)の監督として有名ですが、あの作品のドタバタっぽい印象とはガラリと変わり、9年後に撮った本作は、非常にハート・ウォーミングなロマンチック・コメディに仕上がっています。

そう、本作はまさに往年のハリウッド映画を彷彿とさせる「ロマンチック・コメディ」なのです。

その意味では、正直、コメディではありますがゲラゲラと爆笑するシーンはありません。
あくまでも「クスリ」や「アハハ」と軽く笑わせるパターンだろうと思います。
ですから、大爆笑もののコメディをお探しの方は遠慮した方がいいかもしれません。

しかし、見終わって思わず涙が浮かぶような、「アハハ」と笑わせて最後はじ~んと心に温かいものを感じさせるような作品なのです、「デーヴ」は。
その意味では、是非ともカップルでご覧頂きたい作品ですね。

そう、最初はただのそっくりさんがホワイトハウスに入ってしまうシチュエーションの可笑しさを「アハハ」と笑わせているのですが、次第次第に監督と脚本家の術中にハマって行き、最後の最後、ラスト・シーンでは思わず感激で涙を流しながら「アハハ」と泣き笑い状態になってしまったのです。

ただし、公開当時はあまりヒットしたような記憶が無く、逆に「大統領を主人公にしたロマンチック・コメディ」って点では、2年後に公開されたロブ・ライナー監督でマイケル・ダグラスが大統領を演じた「アメリカン・プレジデント」(THE AMERICAN PRESIDENT:1995)の方が話題になったようですし、真っ先に思い出される方が多いように思います。

確かに「アメリカン・プレジデント」は本作と非常に似た雰囲気があり、大統領の恋愛を描いたって点では本作のケヴィン・クラインとシガニー・ウィーヴァーの姿に重なる点もあるのですが、こちらは「コメディ」と言うよりもシリアスに傾倒していて、全体的に単調な感じを受けました。
当然ながら、僕は圧倒的に「デーヴ」を支持します(^^)

 本作で主人公デーヴと大統領の二役をこなすはケヴィン・クライン。

日本ではあまり知名度がありませんが、シリアスからコメディまで幅広く演じられる名優です。
本作でも、いい加減な大統領と誠実なそっくりさんを見事に演じ分けていて、観ていてそっくりさんのデーヴが好きにならずにいられません。

それ以上に脇役が面白くって、特にヴィング・レイムス演じるシークレット・サービスのキャラは秀逸でしたね。
デーヴがキッチンで手作りしたサンドイッチを食べながら、デーブに「大統領の弾の盾になるんだろ?僕の時もそうなの?」と聞かれて、何も答えずにジッとデーヴをながめる・・・このシーンが最高に笑えましたねぇ(^^)

これが前振りとなってラスト近くで効いていて、最後にデーヴと別れる際に彼が「あなたの為なら弾の盾になれる」と告げるシーンが涙を誘います。

そしてラスト・シーン。
選挙に立候補したデーヴの元に元大統領夫人がやってきてハッピーエンド・・・って瞬間に、扉の前にヌッと立つのが実はヴィング・レイムスなんですよね(^_^;)
このラスト・シーンには爆笑すると同時に、胸が熱くなるほど感動して涙が出てしまいました(^^)

他にも、背の高いフランク・ランジェラとでっぷりと太ったケヴィン・ダンの陰謀画策コンビも笑わせてくれます。
特にコワモテのフランク・ランジェラが、勝手に動き出した影武者大統領にうろたえて、ホワイト・ハウスの中を早足で駆け抜けていくシーンは笑えます(^^)
最後の大統領の議会演説をテレビで観ているシーンでも、寸前まで支持者で一杯だった室内が、いきなりガランとなってしまうシーンも笑えましたね。

あと、この人も名脇役なのですが、主人公デーヴの友達を演じるチャールズ・グローディン。
本作では登場場面が少なかったのですが、表情一つで笑わせてくれる名優です。
個人的にはロバート・デ・ニーロと共演した「ミッドナイト・ラン」(MIDNIGHT RUN:1988)でのタヌキおやじぶりが大好きな俳優ですね。
本作でも、ラストの選挙事務所のシーンで、シガニー・ウィーヴァー演じる元大統領夫人を見て「なんで彼女がここに居るんだ?」って気持ちを表情一つで見せていたってのが見事でした。

もちろん、大統領夫人のシガニー・ウィーヴァーも見事だったと思います。
「エイリアン」シリーズでの闘う女ってイメージしかありませんでしたが、本作ではリプリー同様気が強い女性であると同時に繊細な内面を演じていて、非常に上手いバイプレーヤーぶりを発揮していました。

 ふと、心があったまる映画が観たいなぁ・・・と思った時に、真っ先に思い出すのが本作ですね。

2008年9月 6日 (土)

「ブラック・セプテンバー ミュンヘン・テロ事件の真実」感想(DVD)

「ブラック・セプテンバー ミュンヘン・テロ事件の真実」感想(DVD)
(ONE DAY IN SEPTEMBER:1999)

(監督)ケヴィン・マクドナルド
(ナレーション)マイケル・ダグラス

面白度 :8点/10点
お薦め度:5点/10点


 ドキュメンタリー「ブラック・セプテンバー ミュンヘン・テロ事件の真実」をレンタルDVDで観ました。

 この映画、1972年のミュンヘン・オリンピックで起きたテロ事件を、当時のニュース・フィルムや現存者のインタビューを交えて描いたドキュメンタリーです。

もともと、事件の詳細を知らずに観たスティーブン・スピルバーグ監督の「ミュンヘン」(MUNICH:2005)が非常に素晴らしかったので、その事件の背景を描いた作品を観たいと思って本作を観たわけです。

 1時間程度の作品ですが、非常にコンパクトにまとめられていて、事件そのものの発生から終了までを分かりやすく描いてあったと思います。
その当時のオリンピックの雰囲気も良く出ていたし、事件の終盤の悲劇的な終わり方も背筋が寒くなる感じで、観ていてゾクゾクしました。

ただし、当時のイスラエルとパレスチナの問題に関しては全く描かれておらず、観る側が常識として「知っているもの」としてミュンヘン・オリンピックからいきなり始まるので、背景を知らない人には理解しにくい部分もあるかな?と思います。
また、ボカシはありますが、死体が多く映るので、その点も含めてお薦め度は低めの5点としました。







※以下、ネタバレがあります。





 さて、パレスチナ・ゲリラ「黒い九月」がミュンヘン・オリンピックの選手村に潜入して、イスラエルの選手を人質に同胞の解放を要求したこの事件は、当初から2人の死者を出して展開します。

その後、テロリスト側の期限を延ばしながら、夜になって逃亡用の飛行機が待つ空港までテロリストと人質を乗せた複数のヘリコプターが向かいます。

ドイツ政府としてはその空港で決着を付けるべく、警察から集めた狙撃手を空港に配備して備えるのですが、連携の不備や訓練された対テロリスト部隊ではなかった点など幾つもの不幸な点が重なって、最終的に人質は全員死亡、テロリスト側が3人生き残るとの、当局側の「惨敗」で終わるわけです。

生き残ったテロリスト3人は、別のハイジャック事件で犯人側の開放要求によりリビアに脱出するのですが、映画「ミュンヘン」で描かれたイスラエル側の激烈な報復行動により、2人が殺されることとなります。

最後に1人が生き残るわけですが、本作には顔を伏せられたこの生き残りの1人が証言者として登場します。

 はてさて、非常に緊迫した展開の中、当局は当然ながらテロリストの要求である「同胞の解放」を受け入れず、空港への移送もテロリストの要求を受け入れたようにウソをついていたわけです。

さりとて空港での狙撃手に関しても、軍隊を使えないとの理由から、警察からメンバーを集めるわけですが、現在のように対テロ用に訓練された専門部隊ではなく、さらには狙撃専門の銃を持っていない狙撃手すらいたそうです。

また、実際にヘリが着陸したあとでも、先に飛行機に乗ってきたリーダーたちを攻撃してから残りのテロリストを狙撃する手順になっていたのに、寸前になって、飛行機で待機している警察官たちが乗機してきたリーダーたちへの攻撃を断念。
それを、連絡手段を持たない狙撃手たちは攻撃を開始して、現場は大混乱状態になる。

自体が混沌とする中、応援で駆けつけた装甲車のメンバーは、誤って仲間の狙撃手を攻撃して重傷を負わせてしまう。

 当時、イスラエルから特殊部隊を送り込みたいとの打診もあったが、ドイツ政府側はこれを拒否。
さりとて、ドイツ軍やドイツ警察に特殊訓練を受けた部隊もいず、現場の連携ミスも重なって、事件は悲劇的な結末に終わるわけです。
この手痛い失敗の経験を受けて、ドイツは連邦警察局内に「GSG-9」と呼ばれる対テロ特殊部隊が作られました。

結局は、組織だった作戦と展開が必要だった緊迫した状況の中で、それなりに狙撃の手腕が立つメンバーを集めたのでしょうが、普段から訓練をつんでいるわけではない寄せ集めのメンバーで作戦を行った事が失敗の最大の要因だったようです。

また事件発生当初、IOC側がオリンピックの競技を止めずに続行していた点も驚かされます。
その後の展開により、ついにIOCも競技を一旦中止するのですが・・・

先般行われた中国での北京オリンピックでも、その開催前から国内の不穏なテロ事件がオリンピック開催に陰を落としていました。
開催期間中に何か大事件が発生するのではないかな?と危惧されたのですが、もし、北京でテロ事件が発生していれば競技は中止されたのだろうか?と疑問に思います。

 事件そのものと関係はありませんが、ミュンヘン・オリンピックが開催された72年ってのは、僕が6歳頃の出来事です。
事件そのものは全く記憶に無いのですが(^_^;)、本作を観ているとオリンピックを捉えた当時の映像が、非常に懐かしく感じられます。

選手や観客のファッションもそうですが、オリンピックの関係者が着ているユニフォームの雰囲気など、その2年前に日本で開催された万博での様子に非常に似たものを感じて、僕の記憶にかぶってくるものがありました。
一部モノクロとカラーが使われているのですが、特にカラーの映像は非常にビビッドであり、僕の記憶がくっきりと蘇る要因ともなっていました。


【関連作品】

2008年4月 4日 (金)

「ギャングスター・ナンバー1」感想(DVD)

【映画感想(DVD)】

「ギャングスター・ナンバー1」感想(DVD)
(GANGSTER NO.1:2000)

(監督)ポール・マクギガン
(出演)ポール・ベタニー マルコム・マクダウェル デヴィッド・シューリス サフロン・バロウズ

面白度   :5点/10点
お薦め度:1点/10点


 ポール・マクギガン監督の「ギャングスター・ナンバー1」をレンタルDVDで観ました。

 元々、マクギガン監督の「ラッキー・ナンバー7」(LUCKY NUMBER SLEVIN:2006)をDVDで観て、ストーリーテリングが非常に面白かったもので、同じ監督の過去の作品を観てみたくなり借りました。

 ひとことで言えば「マルコム・マクダウェル万歳!」な作品ですね。

しかし、内容的にはすっきりしない感じでした。

 とにかく、若き日の主人公よりも、現在の主人公を演じるマルコム・マクダウェルの演技が凄まじくて、面白度の5点はほぼ彼の演技に与えたと言っても過言ではありません。

しかし、ストーリー的には全くスッキリせず、若き日の主人公のサディスティックなまでのキャラが、観ていて引いてしまうだけだったので、万人受けはしないと思ってお薦め度は1点としました。

 この映画、若いギャングが、ナンバー1まで登りつめる姿を描く成功物語って感じかな?と思って観始めました。

実際に、最初はいい感じで進み始めたのですが、途中から何故か物語そのものよりも、主人公のサディスティックなキャラを描く事に視点が集中してしまい、ギャングものとしても人間ドラマとしても、あまり共感の出来ない話になってしまいました。

このあたり、主人公があまりに強烈なキャラ過ぎて、物語の面白さが完璧に食われてしまった感じがします。

何故にそれを描く事にハマってしまったのか?が良く分かりません。
主人公の悪辣なキャラを描く事によって、逆に観客をそのキャラにハマらせるって手法もありますが、今回のキャラに関して言えば、観客が受け入れる事を完璧に拒否したような、生理的に好きになれないキャラなわけです。

物語の基本自体は魅力的です。

ギャングのトップに居座るフレディ・メイズに対する主人公の嫉妬心も上手く描かれていて、変にキャラの強烈さにこだわるよりも、「誰がここに座るか?」の下克上をストレートに描いていれば、非常に面白くなっていたと思います。

 その一方で、主人公の若き時代の姿の暴虐さを観ていると、ふと、現在の主人公を演じたマルコム・マクダウェルの若き日の主演作「時計じかけのオレンジ」(A CLOCKWORK ORANGE:1971)での主人公アレックスを演じるマルコム・マクダウェルを思い出しました。

その意味では、今回の若き日の主人公には、是非とも時空を超えて若き日のマルコム・マクダウェル自身に演じていただきたかったと思います。
もし、若き日の彼が演じていれば、殺される側の主観ショットで捉えた、下着姿で血まみれの主人公の演技も、さらに拍車がかかって面白かったのでは?と思います。

 さて、ストーリー自体はキャラに食われてしまってイマイチな感じでしたが、演出、特に音楽の使い方は非常に素晴らしかったと思います。

物語が1999年の現代から1969年の30年前に戻り、ラスト近くでは残りの時代を駆け足で紹介していきますが、その時代時代の音楽ってのが非常に魅力的でした。
クラシックな音楽も見事であったと思います。

また、全体を回想として描いているので、マルコム・マクダウェル自身がナレーションを入れるあたりも、マクダウェルのファンにとっては堪らない魅力に感じられる事でしょう。


【関連作品】

2008年2月25日 (月)

「エリザベス」感想(DVD)

「エリザベス」感想(DVD)
(ELIZABETH :1998)

(監督)シャカール・カプール
(出演)ケイト・ブランシェット ジョセフ・ファインズ ジェフリー・ラッシュ クリストファー・エクルストン リチャード・アッテンボロー ヴァンサン・カッセル ジョン・ギールグッド ダニエル・クレイグ

面白度  :9点/10点
お薦め度:9点/10点


 現在公開中の「エリザベス:ゴールデン・エイジ」(ELIZABETH: THE GOLDEN AGE:2007)の前作「エリザベス」と観ました。

もともと、新作「ゴールデン・エイジ」を観たいんだけど、一応は前作を観ておかないとダメなのでは?と思って続編を観る前に鑑賞しました。

ところが、いざレンタルでDVDを観ようと思うと、なぜかレンタルに商品が無い(-_-;)
アマゾンを見ても在庫が無くって、マーケットプレイスで高額で売っているだけでした。
どうやら、品薄で高額になってしまったらしいんですね。

で、どーしようか?と思っていると、中古で廉価で売っていたので、思わず購入して鑑賞した次第です。

 内容ですが、非常に素晴らしいですね。

もともと、歴史ものだとかコスチューム・プレイだとかはあまり興味が無くて、本作もアカデミーのノミネート・受賞の話題作だったのですが、劇場には観に行かなかった作品です。
しかし、歴史ものが苦手な僕でも、非常に面白くて楽しめた作品でした。

 この物語、歴史をなぞった作品ではなく、運命に翻弄された一人の女性の生き様を描いた人間ドラマであったと思います。

一見すると、きらびやかなコスチュームや映像だけの作品に感じられますが、意外と、そういった見た目の派手さの場面は少なかったと思います。
その意味では、画面の豪華さだけを求めていた人には、少し物足りなさを感じさせたかもしれません。

しかし、それ以上に、姉の死によって異教徒と迫害される立場にありながら女王となったエリザベスが、一人の男に翻弄され、その結婚を国際政治の政争の具にされ、そのなかで「女王」としての威厳を築き上げていく姿を骨太に描く人間ドラマであったと思います。

特にラスト、なぜにエリザベスが「ヴァージン・クイーン」と呼ばれたのか?が分かるラストと、断髪とその化粧の威容には、彼女の決然とした意思が感じられて「威厳」の誕生の瞬間を感じた気がします。

 エリザベスは普通の女性であり、ロバートとの恋愛も赤裸々に語られるのですが、この辺りの前半部分は「いかに彼女が普通の女性であり、女王もまた一人の女性であるのか」って点を分かりやすく描いていたと思います。

その彼女が女王となり、異教徒である立場から命も狙われる為に、王位を確固たるものにする為にはフランスかスペインの王子との結婚によるしかない・・・つまり、自分の恋愛感情とは無関係に「政策」として結婚を決めないといけないって状況に追いやられるあたりが、観ていて辛い感じがしました。

普通にロバートとの恋愛を貫き通せばいいのでは?と考えてしまったのです。

しかし、そのロバートにも裏の話があり・・・と、結局は愛する人に裏切られ、周りからは気の乗らない結婚話をせっつかれと、最後はおそらくプッツンしたのでしょうね、自ら「一生結婚しない!」と決断する事によって、恋愛と結婚の問題を全て封印し、男と変わらぬ王としての地位を確立したわけです。

 主役のエリザベスを演じるケイト・ブランシェットは素晴らしい!の一言ですね。
表現力が素晴らしく、その目の持つ力ってのはさすがに大女優と言った感じです。

対するジョセフ・ファインズは、ちょっと「濃い」顔立ちで、日本人好みでは無いかな?と思いますが(^_^;)
キャラクターには非常に似合っていた気がします。

僕が気になったのは、フランス人のヴァンサン・カッセル。
またしても、奇妙な役柄を演じていますね(^_^;) 今回も女装してエキセントリックな演技を見せるなど、変態ぶりをアピールしていた気がします(^_^;)

あと、「新007」のダニエル・クレイグがチョイ役で登場します。
のちのジェームズ・ボンドを彷彿とさせるように、人間ドラマ中心の中で、策謀とアクションの担い手として登場しますが、その最後は・・・

俳優でもあり監督でもあるリチャード・アッテンボローも久しぶりに観ました。
脇役として非常に重要な役柄を演じていましたね。

あと、ワン・シーンですが名優ジョン・ギールグッドが法王役で出ていたのも印象的です。この映画のあと、1~2年くらいで亡くなったはずです。

 映画のラストは、その後のエリザベスの姿を字幕で淡々と紹介し、彼女が「ヴァージン・クイーン」と呼ばれた事や、その治世が「黄金時代」と呼ばれた事を紹介しますが、まさにその「黄金時代」=「ゴールデン・エイジ」が現在公開中の「エリザベス:ゴールデン・エイジ」になると思います。

 2月24日(日)に「ゴールデン・エイジ」を観ましたので、また、その感想を書きたいと思います(^^)

2008年1月21日 (月)

「ガッチャ!」感想(DVD)

「ガッチャ!」感想(DVD)
(GOTCHA!:1985)

(監督)ジェフ・カニュー
(出演)アンソニー・エドワーズ リンダ・フィオレンティーノ ニック・コッリ アレックス・ロッコ

面白度 :6点/10点
お薦め度:1点/10点



 アンソニー・エドワーズ主演の「ガッチャ!」をレンタルDVDで観ました。

なぜこの作品を観たか?と言うと、もともと大学生時代に劇場でこの作品を観て、結構印象に残っていたからです。
B級なんだけど、意外と良かったって印象があって、いつか観直してみたいと思ってた作品です。

なんと、23年ぶりの鑑賞となります(^_^;)

 ま、内容はチャチな子供だましのスパイ・サスペンス映画であります(^^ゞ

劇場で観た当時でもB級と思いましたが、今回観直してみるとほぼC級クラスのお気軽ムーヴィーですね(^_^;)

しかし、僕が当時気に入った点はストーリーではありません。

とにかく、主人公の相手役を演じるリンダ・フィオレンティーノがメチャクチャいい!って点なのです。
この映画の魅力のほぼ8割が彼女にあると言っていいでしょう(*^。^*)

実質の面白度は2点程度ですが、彼女の魅力があってこその6点です。
もちろん、内容がチャチ過ぎて古すぎるので全くお薦めできませんから、お薦め度は1点ですが(^_^;)

 物語は、アメリカ人の大学生が友達とパリに旅行に行って、その旅先で出会った年上の魅力的な女性と恋に落ちるのですが、その彼女が東ベルリンに謎の仕事をしに行くのに主人公が付き合う所から、命を狙われるサスペンス展開へとなります。

このあたり、物語の基本が「巻き込まれ型サスペンス」であるのが分ります。

ちなみにタイトルの「ガッチャ!」とは、主人公が冒頭で大学のキャンパスの中で遊ぶゲームで使う言葉です。
ペイント弾を使った拳銃で、互いに狙いあうサバイバル・ゲームみたいなもので、見事に的中した時に「GOTCHA!(I Got You!の短縮形)」と言う訳です。

一応、サスペンスとなっていますが、派手なアクション・シーンは全く無く、中盤の東ベルリンでの話などは、ちょっとコミカルな点も含めて少年探偵団程度のサスペンスであり、一人殺されますがストーリーにはあまり関係なく、安心して楽しめます。

見所としては、ショボイですが冒頭のペイント弾によるゲームと、ラストの麻酔弾による戦いの部分くらいですね(^_^;)

その意味では、ヒッチコックの亜流の巻き込まれ型サスペンスとして、それなりのものを期待すると全く「しょーもない」って事になりますので、アンソニー・エドワーズとリンダ・フィオレンティーノに興味がある人以外は、見る必要の無いTVドラマレベルの作品です。

「ガッチャ!」とタイトルに使っている割には、主人公がサバイバル・ゲームをやっている点がネタとして使われているのは冒頭とラストだけで、中盤のほぼ全ては観光旅行気分でロケをしたぬるいドラマだけですね。

 しかし、ストーリー自体はショボいのですが、とにかく主人公が旅先で出会って恋に落ちる年上女性役のリンダ・フィオレンティーノが素晴らしいのです。
ほんと、23年ぶりに観直してみても、その魅力が素晴らしいことを再確認しました。

記憶に残っている以上にハスキーな声でしたが、短く切った髪とクールな美貌、スレンダーだけど大人っぽい体と大人っぽいファッション。
観た当時の僕もちょうど大学生でしたが、その頃の男性が憧れる、少し年上の成熟した女性の魅力とセクシーさが見事に映像化されているのです。

ま、基本がサスペンスではあるのですが、その部分よりも主人公と彼女がパリとベルリンで観光旅行などしている風景の方が魅力的で、いわば淡い恋を描くラブ・ストーリーと考えてもいいかも知れません。

リンダ・フィオレンティーノは、同じ時期に青春映画「ビジョン・クエスト/青春の賭け」(VISION QUEST:1985)でも主演のマシュー・モディーンの相手役として、魅力的な存在感を発揮していました。
僕はもう、この2本の映画で彼女にメロメロになってしまったのですが、その後は目立った活躍をする事も無く、コンスタントに映画に出ているようですが大作や話題作に出る事はなくフェード・アウトしていった感じです。

対するアンソニー・エドワーズは、昨今ではTVドラマの「ER」で有名になりましたが、僕としてはこの「ガッチャ!」の後に出演した「トップ・ガン」(TOP GUN:1986)でのトム・クルーズの相棒役を演じていたのが一番印象的でした。
最近では、デヴィッド・フィンチャー監督の傑作「ゾディアック」(ZODIAC:2006)での刑事役が久しぶりに印象に残る役柄でした。

 さて、この映画で描かれるサバイバル・ゲームですが、冒頭、主人公らが大学のキャンパスの中で普通の格好をしながらペイント弾を入れた専用の銃で、互いに相手に知られずにペイントを着ければ勝ちってゲームをやっています。
お気軽ではありますが、観ていて「やってみたいな」と思わせるワクワク感はありますね(*^_^*)

ま、他愛のないゲームなのですが、昨今のアメリカの大学構内での銃乱射事件などを考えると、今、このゲームをやるのは非常にデンジャラスかな?と感じますが(^_^;)
下手したら警備員か警察に撃ち殺されるかも知れないしねぇ。

ラスト、舞台は再び主人公の大学に戻るのですが、大学で研究用に使っている麻酔弾を発射する銃を持ち出して、主人公はロシア人たちを倒していきます。
一応、冒頭のゲームのネタ振りをラストに活かしている形ですが、これだけではちょっと物足りないかなぁ・・・と。
途中でも、彼がその特技を活かして何か活躍するシーンを一つぐらい入れて欲しかった気がします。
また、いくらお気軽ムービーとは言え、東ベルリンに居たロシア人たちがどうやって主人公が居る大学キャンパスを突き止めてやってきたのか?とか、アメリカ国内の大学構内で平気でバンバンと拳銃を撃ちまくっているのはいかがなものか?など、いい加減さ満載ではあります(^_^;)

 そんな中、気に入った細かい点を幾つか。

主人公が夜中に東ベルリンから西ベルリンに戻って、そこの警備兵に「ここは西側か?」と確かめたあと、東側に向かって思いっきり中指をつき立てて「クソったれ!」とやっているシーンには、爆笑しました(^^)
警備兵も「俺もやってみたいよ」と言うあたりも、コミカルで良かったです。

音楽に関しては、タイトル曲が非常に安っぽくて80年代を実感させたのですが、劇中、2箇所でフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの曲(「リラックス」と「トゥー・トライブス」)が使われていたのが、時代背景を思い出させて懐かしかったです。
いまだにフランキーは聞くのですが、あれから20年以上経つのか・・・と感慨深いですね(^_^;)


【関連作品】

2008年1月17日 (木)

「ラッキーナンバー7」感想(DVD)

「ラッキーナンバー7」感想(DVD)
(LUCKY NUMBER SLEVIN)

(監督)ポール・マクガギン
(出演)ジョシュ・ハートネット ブルース・ウィリス ルーシー・リュー モーガン・フリーマン ベン・キングズレー スタンリー・トゥッチ ダニー・アイエロ

面白度 :7点/10点
お薦め度:7点/10点


 ジョシュ・ハートネット主演の「ラッキーナンバー7」をレンタルDVDで観ました。

いやぁ、面白かったですね(*^_^*)

久しぶりにストーリーテリングの面白さで魅せてくれる作品に出会いました。
つまり、脚本が見事だったって事です。

ただ、前半だけだと8点をあげられたのですが、後半がちょっと長く感じたのと少々ウェットだったので7点としました。
ネタバレがあって以降、ラスト30分の説明がダラダラしすぎていた感じです。そこがテンポ良く進んでいてウェットさが少ないか、ネタバレがもう少し遅かったなら、8点になっていたと思います。

観る前に想像していたのは、もっとテンポの良いクライム・サスペンスだったのですが、実際は結構スロー・テンポで展開する映画でした。
しかし、その前半で語られる「巻き込まれ型」のサスペンス展開には、非常に面白いものがあり、また、主演のジョシュ・ハートネット演じる青年の度胸の大きさってのも面白くって、「果たしてこの先はどうなるのか?」って先の読めない緊迫感があったのが良かったです。

しかも、物語が後半に入るや、以外や以外!ってどんでん返しがあり、ある種、出来の良いコン・ゲーム(詐欺や騙し)を観ているような痛快感がありました。

ただ、その後半部分が逆にマイナス点でもあります。
後半でネタバレがあるのですが、これが結構早い段階であり、ラスト30分以上はそのネタバレの説明とその後の処理を描く部分であり、ちょっともたついた感じがします。また、その部分が少々ウェットな感じがして、前半の少しコミカルさも感じさせるほどの軽妙さがすっかり失われてしまったのも問題かな?と。

その意味では、ネタバレの部分をもっと遅くして、ラスト10~20分で説明などを終わらせた方が、どんでん返しの衝撃の余韻も残ったのにと思いました。

ただ、ジョシュ・ハートネット演じる主人公とルーシー・リュー演じる隣人女性の関係がちょっとロマンチックであり、楽しさも感じさせてくれたのが良かった気がします。

 いずれにしろ、久しぶりに脚本で魅せてくれる映画であり、オールスター・キャストの演技も満載されているので、見所としては十分な作品であると思います。
レンタルで観て損の無い映画でした。





※以下、ネタバレがあります。





 この作品、劇場公開時に気になっていた作品です。

とにかく、キャスティングが豪華で、その点だけでも目が行ってしまったのですが、あまり話題になっていなかったので、チェックリストの下のほうに行ってしまい、見逃していた作品です。

観終った感想ですが、非常に面白かったですね(*^_^*)
劇場で観ていたも、満足していたと思います。

 内容に関しては、前半は「巻き込まれ型サスペンス」であり、「このあとどうなるのか?」と思わせつつ、中盤でどんでん返しのネタがあって「え?そうだったのか!」と思わせる。そして後半ではそのネタの説明と後処理のドラマが待っているわけです。

その意味では、この映画はある種ブライアン・シンガー監督の「ユージュアル・サスペクツ」(THE USUAL SUSPECTS:1995)のようなジャンルに入る映画だと感じました。
ま、面白さと衝撃度に関しては「ユージュアル・サスペクツ」の10分の1程度ではありますけどね(^_^;)

観る前はオールスター・キャストって事もあって、数多くの犯罪者が入り乱れる、軽妙でコミカルなガイ・リッチー監督の「スナッチ」(SNATCH:2000)あたりのジャンルの映画を想像していたのですが、基本はサスペンスであり、さらにその中でも「巻き込まれ型サスペンス」として展開していきます。

モーガン・フリーマンとベン・キングズレー演じるマフィアの両巨頭の間に挟まれる主人公、さらにはその影でどっちに付くか分からないブルース・ウィリス演じる謎の暗殺者の存在など、どこか黒澤明監督の「用心棒」(1961)的な雰囲気も、この前半部分ではかもし出しています。

このあたりでは、主人公はあくまでも「巻き込まれた平凡な青年」って役回りであり、その裏で動く暗殺者こそ、何かカギを握る存在であろうと思われたわけです。
他人に間違われた主人公だが、身分証明書を奪われて人違いを証明できないので、間違われたまま殺人を行わなければならない羽目になる。しかも、断れば殺されるだろう事は想像に難くない。

こうなってくると、「果たして主人公は殺人に成功するのか?」「どうやって助かるのか?」って方向性で、観客はハラハラドキドキするわけです。
このあたりに持っていく語り口ってのが非常に魅力的であり、上質の小説を読んでいるような「手に汗握る」って感覚が見事に映像化されていたと思います。

しかーし、しかし(^_^;) 中盤に入って、殺人のシーンになると「え!」と驚かされる展開になります。
主人公と暗殺者とが共同して現場で動いているって展開になり、観ているこちらも「もしや、この二人は最初からグルだったのか?」って思い至るわけです。

この辺りの展開の転じ方ってのが見事で、観ているこちらをミスディレクションに誘うようなネタフリが各所に仕込まれていた事に、その後気付かされます。

ただ、このネタバレの場面が、2時間近くある上映時間の1時間過ぎぐらいで登場するもので、残りの30分以上の時間をかけてそのネタバレを説明するシーンだとか、その後の関係者を殺していく場面だとかが続くので、ネタバレの時の驚きが次第次第に薄れていくあたりが残念でした。
また、その殺しの理由に関しても、冒頭の競馬の話に関わってくるのですが、非常に悲しい話であり、そのあたりが少々ウェット過ぎて、前半の軽妙洒脱な巻き込まれ型サスペンスの雰囲気を削いでいた気がします。

その意味では、非常に見事な脚本ではあったけれど、全体の時間配分を間違えてしまったのでは無いかな?と思いました。
もう少し、ネタバレが遅い方が、驚きが最後まで持続したでしょうし、ラスト辺りのウェットさの強さも軽減されたのでは無いでしょうか?

 その後半部分のマイナス点があったので、面白度は8点ではなく7点と下げさせてもらいましたが、それでも脚本の見事さは断言できると思います。

冒頭から説明抜きで暗殺シーンが続いたり、空港でブルース・ウィリスが誰とも分からない男に競馬で負けた男の悲惨な運命を語ったりと、脈絡無く進むように見えた物語が、実は全て後半のネタバレへの伏線であったってのが見事でした。
いずれも、無駄なシーンのように見えて、ひとつも無駄が無かったのが良かったです。

また、ルーシー・リュー演じる向かいの住人のキャラが滅法明るく、楽しい感じだったのも、前半部分の巻き込まれ型サスペンスの雰囲気を盛り上げていたり、レストランでの楽しい会話などラブ・ストーリー的なロマンチックさを出していた点も非常に良かったです。
オチでの彼女の運命の部分も、軽く観客を騙してくれていて、ナイスでしたね。

 この監督の作品を観るのは初めてですが、その語り口の見事さと重鎮俳優連の見事な使い方から、他の作品も観てみたくなりました。


【関連作品】

2008年1月12日 (土)

「ジャーヘッド」感想(DVD)

「ジャーヘッド」感想(DVD)
(JARHEAD:2005)

(監督)サム・メンデス
(出演)ジェイク・ギレンホール ピーター・サースガード ルーカス・ブラック クリス・クーパー ジェイミー・フォックス

面白度 :8点
お薦め度:2点


 サム・メンデス監督の「ジャーヘッド」をレンタルDVDで観ました。

面白かったですね。

個人的には、サム・メンデスらしいシニカルな切り口で描く湾岸戦争の佳作であると思います。

「殺すため」だけに鍛えられた海兵隊員たちが、戦場で一向に敵と出遭わず、一発も弾を撃たずに何日も過ごす風景を、あたかも戦場にカメラを持ち込んだようなドキュメンタリー・タッチで淡々と描く奇妙な感覚を受ける作品です。

その意味では、作品の完成度は高いものの、映画としてはドラマチックな要素が全く無い(逆にそれを意図しているのだが)ので一般ウケしないと思って、お薦め度は2点としました。

また、完成度が高いとは言え、戦場って派手な舞台設定にも関わらず、全く戦闘を描かない(実際に戦闘が無いんだから仕方が無い(^_^;))って点も物足りなく感じました。

その点から、面白度は本来なら8点はあげられる所を、厳しく7点・・・と思ったのですが、思い返してみると、そのシリアスな中にシニカルな視点を落差激しく放り込んでくる監督の手腕に感服したので、8点としました(^_^;)

そう、この作品は「アメリカン・ビューティー」(AMERICAN BEAUTY:1999)のサム・メンデス監督らしい、シニカルな目で描く現代戦争のノンフィクション映画。

個人的には、ベトナム戦争を描いたスタンリー・キューブリック監督の「フルメタル・ジャケット」(FULL METAL JACKET:1987)から戦闘シーンを削除した、湾岸戦争版の「フルメタル・ジャケット」だと感じました。

原作がノンフィクションなので、この映画が描いている姿もまた、湾岸戦争の一つの真実なのでしょう。

海兵隊員たちが砂漠でバカ騒ぎをし、「人を殺す為」に張り切って戦場に向かったものの、全く敵と出遭わず一発も弾を撃たない日々が続く・・・
ある種、職場で仕事が無い窓際族みたいなもので、職業軍人が戦闘をしない無意味感が兵士たちの心を支配していく姿が、滑稽であると同時に逆に「現実の戦場」を切り取ったようなリアリティを感じました。

つまり、この映画最大の「笑い」が、実は「戦場で一発も弾を撃たずに終わりましたとさ、チャンチャン!」って事を、2時間もかけて1本の映画で描いた点だったと思うのです。

あるいは、国に残した恋人や妻との心理的距離感からくる精神的苦悩の部分が、兵士レベルで非常にリアルに描かれていて、そのあたりの心情の描き方もリアルであったと思います。

ただ、一般的に考えると、映画ってドラマチックな要素があるから盛り上がるし最後まで飽きずに観る事が出来るので、この作品のように、戦場にドキュメンタリーのカメラを持ち込んだような、兵士たちの平凡な毎日の生活を描くだけの作品は、娯楽を求める観客には眠たいだけで受け入れられない気がします。

逆に、映画好きには堪らない面もあるので、一般的にはお薦めしませんが、映画好きを自認する方には是非ご覧いただきたい作品です。




※以下、ネタバレがあります。




 元々、劇場公開時に観たかった作品なのですが、タイミングを逃して未見だった作品です。

ただ、予告編を観ても、あまりドラマチックな部分は感じられず、戦場の風景をドキュメンタリーのカメラで切り取ったような、醒めた感じを受けた作品で、期待感はそれほど高くありませんでした。

実際に観てみると、まさに全編がドキュメンタリー・タッチで描かれており、全くと言っていいほどドラマチックな要素が欠けています。その意味では、予想以上に醒めた感じの作品と思いました。
一般の観客がこの映画を映画館で観たとしたら、非常に眠たい、と感じただろうと思います。

僕自身は、確かに非常にシンプルでドラマチックな要素の少ない作品だと感じましたが、特に眠くなる事もなく、最後まで楽しむ事が出来ました。

結局、この作品は「最後まで敵と遭遇せず、敵を一人も殺す事が無く、一発も弾を発射する事なく終戦を迎える」って点を描く、現実のファンタジーな一面を描くノンフィクションであったと思います。

報道が描く「湾岸戦争」では、勇猛果敢な海兵隊員たちが砂漠を突破して勝利したってイメージがありますが、現実(の一面)では、全く敵と出遭わずに終わってしまった兵士も数多くいたのだろうと思います。

ある意味、「殺す為だけ」に生まれた海兵隊員が、全く敵を殺す機会を持たずに戦争が終わってしまったわけですから、その状況自体が非常に皮肉でコミカルとさえ言えると思います。

サム・メンデス監督は、デビュー作の「アメリカン・ビューティー」が高評価を受けた監督ですが、あの作品でもシリアスな状況ながら、どこかクスリと笑わせるシニカルな笑いをちりばめていました。
つまり、敢えてコメディとして描くのではなく、現実の一面が実はそのままコミカルに見える瞬間があるって点を描きたかったのだろうと思います。

今回観た「ジャーヘッド」でも、「戦場」って言うこの世で一番シリアスな局面を切り取って、そこにあるはずの無いシニカルな笑いの状況を描き出していた感じなのです。

その最大の「笑い」が、実は「戦場で一発も弾を撃たずに終わりましたとさ、チャンチャン!」って事を、2時間もかけて1本の映画で描いた点だと思います。

他にも、海兵隊員たちが悪ふざけを数多くしていて、テレビ・クルーの前で「強姦ごっこ」をしてみたり、隠れて酒を飲んで火事で信号弾を花火の如く撃ち放ったり、とにかくテントの中でも外でも、彼らがノリノリで悪ふざけをしまくっている姿が連発されます。

海兵隊員たちって、海千山千の猛者たちばかりってイメージがあるから、もっともっと、戦う事にストイックな集団なのかな?と思っていると、さにあらず(^_^;) やらたとこんなシーンばかりが登場するものですから、「ほんとにコイツらは戦闘のエリートなのか?」と疑いたくなるほどです。

いずれにしろ、日本人の目から見ると「いかにも」なアメリカ人のノリが感じられて、その面でもリアルな戦場を描く映画だと感じた次第です。

監督の演出も絶妙で、意図してか意図しなくてか、どの場面もシリアスとコミカルの表裏一体であり、主人公が懲罰でトイレの肥溜め掃除をしているシーンがコミカルに感じさせていたと思っていると、その直後、懲罰の原因となった仲間に実弾入りのマシンガンを向けて激昂する主人公の姿を描いたりと、かなり高低差の激しい玉を投げてくる監督でしたね(^_^;)

その意味では、一般の観客からすると、この映画がシリアスを描こうとしているのか?コミカルを描こうとしているのか?が非常に分かりにくくて、どう評価していいか分からない作品に思えたのでは無いかな?と思いました。

しかし、僕はその当たりが非常に好きであり、この作品の最高の持ち味だったのでは無いかな?と思います。

その点を言うと、ラスト、せっかくの「敵兵を殺す」唯一の機会を失われた主人公の相棒が、感情的になって涙を流しながらヒステリックに叫ぶシーンが非常にシリアスに描かれているにも関わらず、その任務から帰ってきて「いざ、敵か?」と思って丘を越えた瞬間、パーティーで騒いでいる仲間の軍に出くわし、「結局、一発も弾を撃ってなかったな?」って間の抜けたコミカルな空気をかもし出すって展開も、「緊張」から「緩和」への落差が大きい見事な点だと、僕は感じた次第です。

落差って点では、他にも、妻から送られてきたビデオが実は・・・ってシーンも、シリアスに夫の泣き叫ぶ姿を描きながら、その直後に他の兵士が笑いながら「もう一回見ようぜ!」と言ったかと思えば、さらに主人公がシリアスな顔をする・・・って3段構えもありましたね(^_^;)


 さて、僕自身は先に書いたように、この映画を「湾岸戦争版の『フルメタル・ジャケット』」だと感じました。

冒頭、海兵隊員たちが鬼軍曹にしごかれるシーンなど、まるっきり「フルメタル・ジャケット」のリー・アーメイそのものだったし、その訓練のあと、実際に戦場に向かうって全体の構成も、大体似ている気がしました。

また、「フルメタル・ジャケット」の「我がライフルは・・・」と斉唱するシーンと全く同じセリフを斉唱するシーンがあったのも、あの作品に敬意を表しているのかな?と感じました(実際は、海兵隊員の間で現実に受け継がれているセリフなんだろうと思いますが(^_^;))。

ただし「フルメタル・ジャケット」では、前半では仲間の兵士がおかしくなって自殺するシーンがあったり、後半の戦場ではスナイパーとの激しい戦闘があって、見事な見せ場があるのですが、この「ジャーヘッド」では、戦闘シーンだとかドラマチックな展開が殆ど無いって点が大きく違います。

しかし、「フルメタル・ジャケット」から戦闘シーンを差し引くと、そこに描かれているのは訓練と戦場での兵士の普段の表情であり、意外と淡々と彼らの姿を捉えるカメラの映像があるだけです。
その点が、僕に似ている感覚を与えたのでしょう。

他にも、ネットで感想を見てみると、この作品を「地獄の黙示録」(APOCALYPSE NOW:1979)に似ているとの感想もありました。
言われてみれば、兵士の姿を描く部分では「地獄の黙示録」の方が似ているのかもしれません。

 そう言えば、この映画ではやたらとベトナム戦争映画が登場するのが印象的でした。

モロに登場するのが「地獄の黙示録」で、海兵隊員たちがこの映画を観ながら大騒ぎしているシーンが、けっこう長尺で描かれていましたし、他にも、仲間の兵士が妻から送られてきた「ディア・ハンター」(THE DEER HUNTER:1978)のビデオを見るシーンで、例の印象的な美しいテーマ曲が流れます(映像は実は・・・ってのも面白かったですが(^_^;))。

「地獄の黙示録」のシーンでは、あの映画でも一番有名な「ワルキューレの騎行」のシーンがそのまんま使われており、僕もあのシーンで非常に興奮したんだけど、現地アメリカ人も同様にあのシーンで興奮しまくるってのが分かって、嬉しかったくらいです。

ただ、その興奮の仕方が尋常じゃない(^_^;) とにかく「撃て!撃ちまくれ!」って感じで、スタンディングで大騒ぎしているシーンがアメリカ人らしいかな?と感じました。


 監督の演出で言うと、「アメリカン・ビューティー」や「ロード・トゥ・パーティション」(ROAD TO PERDITION:2002)で感じられた独特の映像美が、砂漠の戦争を描く本作でも遺憾なく発揮されており、凡百の戦争映画とは違った劇術的な美しさを感じさせてくれました。

砂漠の無味乾燥な感じもそうですが、イラク側が油井を燃やした後の炎と煙に空を支配された場面も、非常に映像的に美しく描かれていました。

それら映像で気に入った点は、兵士のゴーグルに映る風景です。

「映る」って意味で印象的だったのは、ラスト、主人公が狙撃を中止されたあとに爆撃で空港が爆破されるシーンで、窓の外から主人公の姿を捉えて、爆破シーンを窓に映る映像で捉えたシーンです。

何気なく観ていると気にならないかもしれませんが、あとでよくよく思い出してみると、「ロード・トゥ・パーティション」で感じた「ゆっくりとカメラが動く」って捉え方、あるいは車の中から摩天楼を見るシーンのカメラの捉え方などに非常に似ているのが分かりました。

音楽は、ロックやブラック系の音楽を多用し、全体的に「ミュージック・ビデオ」的印象を与えるように作られていました。
このあたりも、ドラマチックに作るって点とは相反する点であり、一般的には「眠い」って印象を強くするものでは無いかな?と思います。

僕としては、ベトナム戦争を意識したドアーズの「ブレーク・オン・スルー」やTレックスの「ゲット・イット・オン」なども良かったし、戦争にそぐわない、緊張感を緩和するボビー・マクファーリンの「ドント・ウォリー・ビー・ハッピー」も良かったです。

最後、ダミ声の歌が「トム・ウェイツかな?」と思っていると、後で調べたらやはりトム・ウェイツでした(^_^;) 「兵士の持ち物」って曲らしく、歌詞がけっこう似合っていましたね。


【関連作品】

2008年1月 7日 (月)

「恐怖の報酬」感想

【映画感想(DVD)】

「恐怖の報酬」
(LE SALAIRE DE LA PEUR:1953)



(監督)アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
(出演)イヴ・モンタン シャルル・ヴァネル ペーター・ヴァン・アイク フォリコ・ルリ ヴェラ・クルーゾー

面白度 :9点/10点
お薦め度:7点/10点


 レンタルDVDで「恐怖の報酬」を観ました。

この映画は、1953年フランス製作のモノクロ映画です。

もともとこの映画を観たいなと思った理由は、のちにアメリカでリメイクされたウィリアム・フリードキン監督版の「恐怖の報酬」(SORCERER:1977)を観たかったんですが、この作品が未DVD化だったため、オリジナルの本作を借りたわけです。

それにしても、リメイクも評価が高いし、主演が僕の好きなロイ・シャイダーって事で、ぜひともDVD化を願っていますm(__)m

 さて、オリジナルの「恐怖の報酬」ですが非常に面白かったですね。
全体で2時間半程度の作品で、前半1時間は出発前の普通の描写で少々物足りなさがありますが、残り1時間半はもう、緊迫感の連続です。

昨今の、矢継ぎ早にネタを連発するサスペンスの標準から考えると、その「危機」のネタは非常に少なく感じます。
しかし、観ていて胃の締め付けられるような緊迫感と、手に汗握るサスペンス感覚ってのは特筆すべきものがあり、半世紀前の映画とは思えない素晴らしさを感じました。

ただ、やはり古い映画ですので、今の僕の感覚から見ると前半がもっちゃりしている部分も感じられて、僅かに10点満点で9点としました。
また、やはり古いって点と出発する前の長さを加味して、お薦め度も少し低めの7点としました。

余談ですが、主要登場人物4人のうち2人が「マリオ」と「ルイージ」なのには、思わず微笑まずにはおれませんでした(^_^;) 例のゲームのネーミングが、ここから取られていたかどうか?は分りませんが、それを思わせる感じですね。
特にルイージは、そのデップリ感が似ている気がしました(^_^;)






※以下、ネタバレがあります。




 とにかく、目的地までニトログリセリンを満載したトラックを目的地まで無事、走らせるってだけの話なのですが、その設定の見事さがあって、単に山道をトラックが走るだけの後半1時間半ってのが、非常に面白いんですよね。

ニトログリセリンは、非常に不安定な物質で、ちょっとした衝撃を与えただけでも爆発するし、温度が高くなっただけでも爆発します。
その点は、比較的最近の映画「バーティカル・リミット」(THE VERTICAL LIMIT:2000)でも詳しく描かれているので参考にして下さい(*^。^*)
と言うか、「バーティカル・リミット」の設定自体が、どこかこの「恐怖の報酬」の設定に案を得ているような感じもしますが。

話は戻って。

タイトルの「恐怖の報酬」ですが、劇中、登場人物の一人が語るセリフ「俺たちは運転の代金をもらってるんじゃない、恐怖の代金をもらっているんだ」ってセリフがありますが、まさにその通りなのです。

トラック2台を二人一組、計4人で多額の報酬を目当てに油井火災を止める為のニトログリセリンを運ぶストーリー。
二人が交代でトラックを運転しないといけないのですが、片方が恐怖を感じて運転できない状態の場合は、もう一方だけが運転する事になるわけですが、そうなってくると運転ばかりしている方がもう一方に向かって「お前は仕事をせずに金が貰えて楽だなぁ」と皮肉を言いたくなるわけです。
しかし、考えてみればニトログリセリン満載のトラックに「乗る事」自体が、いわば罰ゲームみたいなもので、死との隣り合わせのドライブになるわけですから、運転しなくても報酬が貰えても当然かな?と思ったりしました。

とにかく、乗る前から観ているこちらも吐き気を催すような状況設定であり、こんなものは金を貰っても乗りたくないって感じますね(^_^;)
劇中でも、運転手に志願したものの「恐怖は伝染する」と言って、自ら去っていった志願者も居ましたし。

実際、こんな恐怖の連続では、例え報酬を得たとしても寿命が縮まってしまって意味が無いんじゃないのかな?と思えるくらいです。

乗った後も、断崖絶壁の古びた板の張り出し部分で切り返しのバックをしなくてはいけなかったり、巨大な落石を爆破する為に搭載してあるニトログリセリンを即席の爆弾にして爆破したりと、一歩間違えば、作業をしている自分が吹き飛ぶシーンが多々ありました。
特に落石爆破のシーンでは、葉っぱの茎を利用してニトログリセリンを岩に空けた穴に垂らし込むのですが、これがもう、一滴でも雫が落ちたら連鎖反応で爆破して自殺行為なんじゃないか?って思えるシーンで、一番、緊張しました。
僕だったら、その時点で降りてますね、仕事から(^_^;)

 物語的には、おそらく二台のトラックのうちのどちらかが途中で失敗して爆発するのだろう・・・と、映画の定番的展開として、想像に難くない部分があります。

実際、その想像通りに片方のトラックが途中で爆発するのですが、主人公が誰か?を考えると、当然、どちらのトラックが爆発するのか?は観ているコチラも想像できてしまいます。
しかし、その想像があってもラストまで緊迫感を維持して怖がらせる手腕には、感服するしだいです。

片方のトラックが爆発するシーン、これが昨今のハリウッド映画だったら必ず派手なシーンで描くはずなのですが、本作では、もう片方のトラックで紙巻タバコを作っている途中で紙の上のタバコが吹き飛ぶシーンで描いているのです。
その後、爆発の姿を遠景から捉えるのですが、その淡々とした描き方が、逆に、死と隣り合わせになっている恐怖の現実を目の当たりにしたようで、下手にド派手に描くよりも恐怖感を深めてくれていたような気がします。

また、「誰が死ぬか?」って想像が付くって点では、全く別の種類の本ですが、スティーヴン・キングの「死のロングウォーク」って小説を思い出しました。
この小説では、近未来の死のゲームが題材となっているのですが、参加者が途中、止まること無く歩き続けるゲームであり、一定回数の警告を超えると射殺されるってゲームです。
この設定から、小説の主人公がどの時点まで生きているのか?ってのはある程度想像が付き、実際にその通りとなるのですが、本作「恐怖の報酬」でも、実際に主人公がどうなるか?って想像は、観客の想像どおりの結果ではあります。

いずれにしろ、「生と死が隣り合わせ」とはよくいいますが、この映画の状況こそ、まさにそれを体現したものではないでしょうか。
いわば、コイントスで「表か裏か」を当てっこするゲームで、外れたら殺されるルールみたいなもので、この作品の中での危機又危機の連続ってのは、いつ「はずれ」が出るかを待っているだけのサドンデスの状態で目的地まで無事着けるか?って感覚に思えるのです。

ま、そんな設定を聞いたら、だれもゲームなどしませんわな(^_^;)

また、その恐怖感覚ってのは、どこかスティーヴン・スピルバーグの「激突!」(DUEL:1971)を思い起こさせる部分がありました。
「激突!」では、主人公の乗った車が顔の見えない運転手の乗るトラックに追われる恐怖を描いていましたが、本作では、そのトラック自体に追うもの(ニトログリセリン)と追われるもの(運転手)が同居しているようなものですね。

でも、そこに乗り合わせた4人にとっては、食い詰めて金も働き口も無いじょうたいで、下手をすればその町から一生出られないような状況にあって、唯一、光が差した突破口みたいなものです。
金に目の眩んだ亡者どもが、死肉に集まるハイエナの如く群がって志願してしまう。
でも、志願したものの、4人の中には恐怖で脱出しようとする者も居れば、最後まで決死の覚悟で目指そうとする者も居る。

 そのエンディングでは、僕も「まさか?」と思うようなオチがありました。

おそらく、ハリウッド映画では決して描かないようなオチであり、逆に、こういったオチだからこそフランス映画なんだなぁ、と日本人の感性にも納得が行く部分も深く感じました。

一人残って、相棒の賞金も合わせてもらったマリオは、その嬉しさのあまりか、あまりに安易に帰り道の崖道を音楽に乗せて蛇行運転します。
運転に失敗したのか、坂道でブレーキが効きにくくなったのか、彼の乗ったトラックはそのまま谷底へ落ちて行ってしまいます。
一攫千金をせしめたものの、そのラストは非常に哀れと言うか、無常感漂うエンディングでした。

岩肌の山道から、トラックが崖に向かって落下するシーンでは、やはり「激突!」のラスト、トラックが最後の断末魔を叫びつつ落下するシーンを思い出しました。


【関連作品】

2007年12月 6日 (木)

「ヒッチャー」感想

【映画感想(DVD)】

「ヒッチャー」
(THE HITCHER:1985)

(監督)ロバート・ハーモン
(出演)C・トーマス・ハウエル ルトガー・ハウアー ジェニファー・ジェイソン・リー ジェフリー・デマン

面白度 : 9点/10点
お薦め度: 9点/10点


 ロバート・ハーモン監督、ルトガー・ハウアー主演の「ヒッチャー」を観ました。

今回、ショーン・ビーン主演でリメイク作が公開されましたが、どうやら梅田・三ノ宮あたりでは公開されそうに無いのでオリジナルのDVDを観る事にしました(^_^;)
かなり昔にセルDVDを購入していましたが、いつもの癖で「買っただけで安心」状態で、既に劇場で観ている作品だけに、今の今までほったらかしにしていたDVDです(我が家にはこんなDVDが山積になってます(^_^;))。

 この映画、劇場公開時にそこそこ話題になったので劇場まで足を運んで鑑賞したのですが、これがメチャクチャおもしろい!

とにかく、主演のC・トーマス・ハウエルよりも殺人鬼を演じたルトガー・ハウアーの鬼気迫る演技が凄まじくって、そして畳み掛ける演出と脚本が怖さを倍化し、クライマックス近くのトラックのシーンには、もう度肝を抜かれた記憶があります。

これだけ非常に印象に残った作品だけに、今回の久しぶりの鑑賞も、その恐怖とサスペンスを再体験するべく期待してDVDに望みました。

 で、再見した感想ですが、当時はもっと上映時間が長かった印象があったのですが、実際には97分と意外とコンパクトであり、本編も前半部分は「ダイジェストか?」と思うほど、次から次と場面が変わっていき、ハウアー演じる殺人鬼ジョン・ライダーの襲う手法も・・・なんだかコミカルに見える部分があったのも事実です(^_^;)

そう言えば、ハンバーガーとセットになったフライドポテトに指が入っているってのは、当時、ポテトが食えなくなりそうなぐらいショッキングなシーンでしたが、分かった上で見てしまうと・・・ねぇ(^_^;) 今となっては、少々コミカルに感じるようにも思います。

ですから、当時の記憶からすると10点満点であったのですが、今観るとマイナス点もあったって事で、9点に減点させていただきました(^_^;)

ただし、物語が後半のクライマックスに入ると、そのテンションは一転します。
主人公の無実を信じて助けた女性、彼女がトラックで・・・ってシーンになると、他のB級サスペンスでは考えられない程の過激な展開となり、このあたりの怖さってのは、デヴィッド・フィンチャーの傑作「セブン」(SEVEN:1995)に匹敵する脚本のテンションを感じる事が出来たと思います。

また、後半で幾つか登場するクラッシュ・シーンでも、あくまでも実写にこだわったリアリティがあり、規模は非常に小さいですが、スピード感と迫力のあるアクション場面に仕上がっていたと思います。

いずれにしろ、脚本の面白さもそうですが、再見した結果、やはり主演のルトガー・ハウアー(決してC・トーマス・ハウエルではない(^_^;))の風貌のカッコ良さと演技と表情の素晴らしさに魅了される傑作であったのは間違いないと思います。
その意味では、80年代を代表する傑作サスペンスだったと思います。

リメイクされたわけですが、おそらく過激なシーンがより過激になったりはするでしょうが、主演のルトガー・ハウアーを超えるキャラ・演技を見ることは・・・おそらく無理だろうな、と思います。

あと、DVDなのですが、昨今では片面2層ディスクが多くなってきていますが、この作品は古い作品ですし、上映時間が97分とコンパクトであり、なおかつ超大作などではないB級サスペンスの扱いですから、どうしても片面1層ディスクとなっているのが残念です。
実際に画面を観ていても、シネマスコープサイズですが、拡大してワイドテレビに合わせて観てみると、非常に画質が荒いのが分かります。
内容が内容だけに、高画質でわざわざ出す必要も無いと思うかも知れませんが、知る人ぞ知るマニアックに愛されている傑作だけに、片面2層ディスクの高画質で見せて欲しかった気がします。







※以下、ネタバレがあります。



 さて、この「ヒッチャー」ですが、公開当時はB級サスペンスの内容にも関わらず、けっこう話題になった佳作であったと思います。

主演の青年を演じたC・トーマス・ハウエルも評価されたと思いますが、いや、なんと言っても連続殺人鬼の謎のヒッチハイカー「ジョン・ライダー」を演じたルトガー・ハウアーの鬼気迫る演技、存在感、その風貌のカッコ良さってのが凄まじく、当時、劇場で観た僕もハウアーに魅了された思いがあります。

内容的にはスティーヴン・スピルバーグの「激突!」(DUEL:1971)を彷彿とさせる、砂漠のハイウェイでの巻き込まれ型サスペンスではありますが、単純に主人公の命が殺人鬼に狙われるってだけの物語ではなく、逆に周りが次々に殺されていき、主人公が殺人犯として警察に追われる形になるのが変形であり、新しい形の「怖さ」が面白さとして突出していた作品であったと思います。

それだけ面白い映画だから、主演や監督のみならず、脚本を書いたエリック・レッドまで注目を集めるようになったと覚えています。

監督のロバート・ハーモンは、非常に冴えた演出をしているのですが、その後はあまりパッとせず、せいぜいジャン=クロード・ヴァン・ダム主演の「ボディ・ターゲット」(NOWHERE TO RUN:1993)を監督したくらいで、あとはテレビ映画を中心に地味になっていった人です。
スピルバーグやキャメロンみたいに、一気に上りあがって欲しかったのですがねぇ・・・

また、脚本のエリック・レッドに関しては、僕もハマって絶賛したキャサリン・ビグロー監督の「ニア・ダーク/月夜の出来事」(NEAR DARK:1987)や、同じくビグロ監督と組んだ「ブルー・スチール」(BLUE STEEL:1990)って素晴らしい脚本を書いているのですが、その後は監督のロバート・ハーモン同様、目立つ作品も無く消えていってしまいました。

両者がタッグを組んだこの作品は、B級ながら非常にセンスの良い出来上がりになっており、エリック・レッドの脚本による物語展開の息もつかせぬ感覚は、のちにハリウッドを席巻するジェット・コースター・ムーヴィー型のホラーやサスペンスの原型とも言えるものだと思います。

そして監督のロバート・ハーモンの演出もキレがあり、前半はやや荒っぽさが目立ちますが、中盤以降はそのカメラワークや映像の美しさなどなど、B級サスペンスの監督にするにはもったいないくらいの技を披露してくれていました。

 そして、それ以上に素晴らしいのが、連続殺人鬼のヒッチハイカー「ジョン・ライダー」を演じたルトガー・ハウアーです。

彼に関しては、80年代の名悪役で一世を風靡した感もあり、この当時で言えば、先日「ファイナル・カット」が劇場公開された「ブレードランナー」(BLADE RUNNER:1982)でのレプリカントの首領ロイ・バティ役や、シルヴェスタ・スタローンと共演してこれも主役を喰っちゃったアクション「ナイトホークス」(NIGHTHAWKS:1981)でのテロリスト、ウルフガー役、そしてこの「ヒッチャー」でのジョン・ライダー役が、当たり役の代表3役であったと思います。

その他では、悪役ではなくいい役の主人公としては、リチャード・ドナー監督のファンタジー「レディホーク」(LADYHAWKE:1985)と「WANTED/ウォンテッド」(WANTED: DEAD OR ALIVE:1986)での役柄がカッコ良くて印象に残っていますが、やはり上記悪役3役には遥かにかなわないなぁ、と思います。

特に印象的だったのは、ラスト、主人公と対決するシーンでの、ショットガンを構えた姿のハウアーです。
ここでは、顔面血だらけになりながら眼をすがめつつ、まぶしい光の下で道路の上でショットガンを構えて立ち、主人公の乗るパトカーに次々と弾を打ち込んでいく姿、これがメチャクチャかっこ良いんですよね(^_^;)

次にラスト、警察に捕まって手錠をしたまま取調べを受けるハウアーが、主人公から「ペッ!」とつばを吐きかけられ、顔についたネトついた唾を手錠をした両手で拭い取るシーン。
そのまま唾を舐めてしまうんじゃないか?ってほど、ゆっくりと丁寧に唾を拭い取る姿が、この映画でも最高に鬼気迫る表情であったと思います。
「ブレードランナー」で言えば、タイレル社長を殺したあと、エレベーターで天を仰ぎながら降りる姿に匹敵するシーンであったと思います。

あと印象的なのは、食堂で主人公とテーブル越しに向かい合うシーン。
指鉄砲をテーブルの下に構えつつ、はったりで「バン!」とテーブルを叩いて驚かせる時の落ち着きぶりだとか、その後、怯える主人公にコインに唾を付けて両目に付けるシーン。
これなんか、「ブレードランナー」でハウアー演じるロイ・バティがJ・F・セバスチャンの自宅で、目玉の置物を両手にもって眼にあててお茶目な姿をしていたのを、トーマス・ハウエルに演じさせたような感じであり、思わず思い出してしまった点でしたね(^^)

あと、同じく取り調べのシーンで、「どこからきた?」と刑事に尋ねられ「ディズニーランド」と答えているのも上手いですね。

 主人公のジムを演じるC・トーマス・ハウエルは、「E.T.」(E.T. THE EXTRA-TERRESTRIAL:1982)で有名になりましたが、本作において全く違った演技で新境地を開きました。

冒頭でこそ、どこにでも居そうな普通の青年を演じているのですが、数多くの修羅場を経験した彼は、一気に「いい面まがえ」に変貌したと思います。
特にラスト、警察の手に保護された以降の彼の意思の深さを感じる「眼」には、非常に鋭いものを感じる事が出来ました。

鬼気迫る表情だったのですが、その後はあまりパッとせず、期待された若手俳優であったと思いますが、その後は目立った活躍もせずに消えていったと思います。

 さて、次に物語についてです。

 この作品は、アメリカの砂漠地帯の一本道を走っている主人公の青年が、途中で謎のヒッチハイカーを乗せた事から恐怖が始まります。
雨中でずぶ濡れのコート姿で乗ってきた彼は「ジョン・ライダー」と名乗ったのですが、いきなり自分が殺人者である事を告白し、同乗する主人公にもナイフで脅しをかけます。
その時、ドアが半ドアとなっていたのに気づいた主人公は、ライダーを突き飛ばして車から落として無事、逃げる事が出来たのです。

ところが、本当の恐怖はここから始まるわけです・・・

ちなみにこの冒頭ですが、アメリカの広大な砂漠地帯の一本道で、周りに民家ひとつ無い、真っ暗闇の夜中に走る車中、密室内で殺人鬼と二人になるって事で、アメリカの中西部の特徴を上手く生かした設定になっていると思います。
その後、主人公の行く先行く先にジョン・ライダーが現れるのも、広大な土地に一本道しか走っていない特徴を生かした展開だと言えるでしょう。

その後、無事に殺人鬼から逃れたはずの主人公は、再び、その魔の手に捕まり、悪夢のような経験をさせられるわけです。
ってわけで、ストーリー自体は一見すると異常者の連続殺人鬼に命を狙われる主人公の姿を描いた、よくあるB級サスペンスか?と思えるのですが、この映画がそんじょそこらのB級サスペンスと違う点が、その後連発してくるのです。

特に、あくまでもジョン・ライダーの狙いが主人公の命そのものではなく、彼の周辺で次々に殺人を犯し、その容疑者として逮捕された主人公に対しても、捕まった警察署の警官たちを殺して、さらに彼の容疑と罪を深める偽装殺人を続々と行うのです。
これによって、主人公を精神的に恐怖に陥れると同時に、時々、目の前に現れて主人公自身の命も狙うライダーの行為に、さらに恐怖を感じるわけです。

このあたり、ジョン・ライダーの狙いは何なのか?って疑問を主人公も観客も抱きつつ、謎を抱えたままノン・ストップで突っ走る展開に、ラストまで一気に見せられてしまうわけです。

 では、主人公を狙う連続殺人犯のジョン・ライダーの狙いってのは何処にあったのでしょうか?

彼自身は次から次へと殺人を犯すわけですが、かと言って直接的に主人公の命を狙うわけではありません。
冒頭、ヒッチハイクした時こそ、殺そうって意思は見えていましたが、それ以降はガソリンスタンドでガソリンまみれにして火を点けるって行為はありましたが、あれもギリギリ逃げ出せるように・・・って感じも見えてきます。
また、後半ではパトカー数台とヘリコプターに追われて絶体絶命になった主人公ですが、そこで突然、横から登場した車に乗ったライダーが、拳銃でヘリを撃ち落してしまう場面もあります。

これを考えると、どうもライダーは主人公を弄んで殺そうと、いたぶっていた訳では無い・・・と思えます。
おそらく、ライダー自身が求めていたのは「自分の行為をストップさせてくれる相手」であったと思います。

ジョン・ライダー自身が冒頭、ヒッチハイクした車の中で主人公に語っているのですが、「俺を止めてくれ」って言葉、これが全て表しているのではないかな?と感じるのです。
彼自身、連続殺人を犯しているわりには、その自分の行為に恐怖を感じているのか、早く自分の殺人行為をストップして欲しいと願っているようです。
ところが、それが達成される為には、自分を止めるに足る「資格」を持っている人間が必要だ。その為に、その「資格」を持った人間を探して、ライダーは次々に殺人を犯していたのだろうと思います。

そこで出会った主人公に眼を点けたライダーが、彼に挑戦状を叩きつける形で、次第次第に主人公を乗せて行き、自分の最後を看取ってくれる人物に相応しい奴だと見込んだからこそ、例のトラックのシーンでナッシュを縛り付けて、警察に包囲される逃げ場の無い状況だと知りつつ、最後の対面に挑んだのだろうと思います。

しかし、それにも尻込みして自分を撃ち殺す事が出来なかった主人公に対して、情けない・・・とばかりにトラックを進めてナッシュを殺してしまうわけです。

 もう一方の主人公ジムです。

C・トーマス・ハウエル演じる主人公ジムは、車を陸送する為にシカゴからカフィロルニアを目指していたのですが、途中、砂漠の中の一本道を運転中、ジョン・ライダーに出会います。
最初、彼は殺人鬼を車から突き落とした時に「ヤッター!」と雄たけびを上げるのですが、この辺りの怖さ、主人公の喜びってのは、良く出来ていたと思います。

その後、普通だったら主人公自身の命を狙うサスペンスへと移行するのが普通なのですが、何故か、周囲の人物を殺して主人公に罪をなすり付けるような行動ばかり取ります。
これには主人公のみならず、観ているこちらも訳がわからなくなるのですが、なぜか次第次第にジムもライダーの行為に惹かれて行く部分が見えてくるのです。

映画の展開としては、冒頭から中盤までは、主人公が「狙われている」と思われていたのですが、次々に主人公ではなく主人公の周りの人物がライダーに殺されていくに連れ、目的がどこにあるのか?が分からなくなっていきます。
しかし、それによって主人公が警察に犯人扱いを受け、身柄を拘束される事による恐怖感ってのは、殺人そのものによるサスペンスとは又違った意味での恐怖感が生まれる事になります。
中盤あたりは、確実に「冤罪」による警察に追われる恐怖がメインとなって来て、ジョン・ライダー自身がしばらく登場しない場面が続くわけです。

 ところが、ラスト近くのトラックのシーンで物語が一変します。

それまで混沌としていた物語が、どうやらジョン・ライダーの目的が薄々分かってきて、殺人鬼と主人公青年との「一騎打ち」が物語の最終目的であったのが分かります。

車の中でジムに拳銃を渡したライダーが、ジムに「殺せ」と命令するのですが、結局は車を殺すとトラックに結び付けられたナッシュの命が奪われるって事で、ジムはライダーを殺せなかったわけです。
この時点で、「お前を見込んだんだが間違いだったか」と彼を見放すような発言をします。

この事からも、ライダーがジムに「自分を殺してくれる介添え人」としての役割を求めていた事がわかります。

最初こそ、その求められていた役割が分からなかった主人公ですが、ライダーが逮捕された時点で無意識のうちにそれが分かったのでしょう。
ライダーの考えが分かったジムは、ライダーが唯々諾々と逮捕に従ってそのまま法の裁きを受けるとは思えず、必ずや自分を殺してくる新たなる介添え人を求めて逃げるのが分かっていたのだと思います。
だからこそ、ラストでパトカーを奪ってライダーの護送車の元に向かったのでしょう。

 物語の白眉は、やはりラストの決闘シーンでしょう。

最初こそ、自分がライダーに求められていた役割、ライダーの目的が全く分からず、本能的に闇雲に逃げ出す事しか考えていなかったジムですが、その後、数多くの地獄のような体験を通じて、次第次第にライダーの考えが「分かる」ようになったのだと思います。
観ているこちらも同様で、最後にジムがパトカーを奪ってライダーの元に向かう姿は、他人から見れば異常でしかないのですが、全てを悟った主人公と観客には、彼の行動が正当だと感じられるようになるのです。

そう、ライダーが求めているのは法の裁きではなく、自分が止めたくても止められなくなっている殺人性向を、「誰かに止めて欲しい」って願いなのです。

それが満たされるまでは、必ずやライダーは唯々諾々と法の裁きに従う事などせず、脱出して「自分を殺してくれる介添え人」を探し続けるでしょう。
いや、映画ではジムがライダーの元に向かいましたが、護送車から脱したライダーは、あのままでもおそらくジムを捜し求めてその元に向かったかも知れませんね。

 それでは、果たして「ジョン・ライダー」なる人物は何者だったのだろうか?って点を考えてみます。

風貌は一般的なアメリカ人よりも、ヨーロッパ人を彷彿とさせ、年のころなら30代後半から40代と言った感じで、服装などはコートを着たサラリーマンと言えるでしょうか。

しかし、その殺人性向はあまりにも尋常ではなく、この映画で描かれただけでも10~20人は平気で殺している点からも、過去にも類似の殺人を犯していないとおかしいと思われます。
しかし、ラストで捕まったあとの警察内のシーンで、彼には指紋による前科が全くないし、戸籍も存在しない云々のセリフがありましたので、どうやら指紋や顔写真から判明するような、警察側に明らかになっている前科は無いようです。

しかし、これが初犯の若者ならいざ知らず、壮年の域に入っている男性が、過去に誰も殺さずに大量連続殺人を行うのは理不尽と思える点を考えれば、彼はおそらく、初めて殺人を犯した時から、非常に巧妙に自分の指紋や顔が割れるような証拠を残さずに殺人を犯して来たのだろうと思われます。
或いは、高額になるでしょうが、顔や指紋を変え、過去の自分の経歴を変えるような何か高度なテクニックを使ったのかもしれません。

おそらく、前者の方であって、過去にも同様の大量連続殺人を犯した上で、ジムのような「介添え人」を探していたのだろうと想像します。

 次に印象的な場面です。

 まず何と言っても、僕の脳裏に焼きついていたシーンは、ラストの一騎打ち、対決のシーンなのです。

まぶしいほどの日差しの下、砂漠のド真ん中の一本道で対峙するジムとライダーの姿には、映像的なカッコ良さと美しさが感じられます。
車から落とされたライダーの、顔面血まみれのまま路上に立つ姿は鬼気迫るものがあり、ショットガンを構えたカッコ良さと相まって、この映画でも一番に印象に残るシーンとなっています。

ショットガンで次々に破壊されていくパトカーの姿も印象的なら、その中で破壊された破片を頭上に浴びつつパトカーの床にうずくまるジムの姿も良かった。

最後は、ま、ありがちですが車で跳ね飛ばされたライダーが、倒れて死んでいるのかな?と思いきや、ジムが振り返って去ろうとする後ろで「すっく」と立ち上がって復活するわけです。
それをショットガンで打ち倒すジムの姿には、冒頭で見えた若々しく弱さも感じられる青年の姿はなく、一人前の大人の男としての気丈さと力強い意思が感じられました。

 次に印象的なのは、後半最大の見せ場である、トラックによるナッシュ惨殺シーンです。

直接的に描かれるわけではないのに、これほど脳天を直撃するほど残虐な殺し方を描いた作品って、なかなか無いんじゃないかな?と思います。
いわゆるスプラッター映画などでは、特撮を用いて直接的に惨殺される死体などを描きますが、あれは能の無い演出ですね。
脚本のアイデアだけで、見ている観客を凍りつかせる怖さってのは、この作品のトラックのシーンがピカイチではないでしょうか?

とにかく、それまでの残虐なシーンってのは、少々、劇画チック過ぎて笑ってしまう部分も多々あったのですが、この場面、警察が大挙して取り囲む劇場的な犯罪現場の中にあって、自分が確実に射殺されるか逮捕されるか分かっている場で冷静に犯行に及んでいるって点では、僕は思わず「セブン」を思い出してしまいました。

ケヴィン・スペイシー演じるジョン・ドウ、彼が警察署に自ら出頭し、最後に大仕掛けの謎を仕掛けるあたり、あの当たりの大胆不敵さと行う犯行の残虐さ、そして警察監視の中での劇場型の点などなど、共通するサスペンス感覚を印象付けられました。

また、その救いようのない結末(物語はその後も続きますが)、このトラックのシーンの最後の救いようの無さってのは、ハッピーエンド症候群に侵されたハリウッド映画界にあっても非常に珍しい展開であり、その意味でも「セブン」と類似している点を感じましたね。

そう言えば、「セブン」でも直接的に箱の中身を映像で描かずに、それ以上の衝撃を我々に与えてくれていましたね。

 次に印象的なのは、中盤、警察署の留置場に放り込まれたジムが、カギが開いているのに気づいて恐る恐る留置場の外に歩き出るシーン。

これはもう、ホラー映画・サスペンス映画の常套手段と言いましょうか、主人公の視点になったカメラがゆっくりと警察署の中を進んで行き、チラッと影がよぎるあたりの緊迫感だとか、「ワッ!」と驚かすか?と思わせて全く驚かせずに、陰になった部分にある死体を次第に見せていくあたりだとか、監督のサスペンス演出の手腕が光る部分であったと思います。

 余談ですが、主人公が食堂で指入りポテトを食べるシーンだとか、向かい側にライダーが突然座るシーンだとか、最後にナッシュがトラックに繋がれるシーンだとかでは、その前に必ず主人公がその場所(食堂やモーテル)で一人になるシーンをきっちり描いているのが印象的でした。

つまり、ポテトのシーンでは、主人公がトイレに行っている間にナッシュも外に出ていて、ライダーが指をポテトに入れる事が可能であったし、向かい側に座るシーンでも店主がコーヒーを入れに店の奥に入っていくシーンがありましたし、ナッシュがトラックに繋がれるシーンでも、主人公がシャワーに入っているシーンを描いていました。
そうした細かさが、怖さに繋がっていたのでしょう。

 あと、アクション・シーンもなかなか良くって、確かに田舎を舞台にしていて、ド派手な銃撃戦やカー・チェイスってのは無理ですが、その中にあっても、少数のパトカーとのチェイス・シーンだとか、パトカーのクラッシュ・シーンなどは、非常にシャープに描かれていたと思います。

特に、お決まりのパトカーが吹っ飛んでひっくり返った所に、後続のパトカーがブチ当たるってシーン。
そしてその変形である、ライダーが撃ち落したヘリコプターとパトカーが激突し、クラッシュするシーンなど、ミニチュアやCGなど使わず、実物でアクション・シーンを撮影しているのが、リアルな迫力ある映像に仕上がっている要因だったと思います。

 これだけ褒めた映画ですが、やはりマイナス点も書かないといけませんね(^_^;)

特に前半だけでも、かなり突っ込みどころが満載です(^_^;)

公開当時も、少々感じていたと思いますが、今回、久しぶりに鑑賞しなおして見て感じたのは、前半部分が非常に荒唐無稽に感じられた点なのです(^_^;)
あまりにも荒唐無稽すぎて、少々笑ってしまった点もあるのですが、そのせいで「果たしてこの映画を面白いと思っていた自分の記憶は確かなんだろうか?」と、一瞬、不安に襲われたのも事実です。

ただ、後半に入って、特にトラックの一件があってからは一気にボルテージが上がってクライマックスまで突っ走ったので、大満足で見終わる事が出来ましたが、前半部分だけでは「こりゃ失敗かも?」と思ったかも知れません。
他人に勧めていたとしても、その人から「なんや、つまらんやんか」と言われかねないかもしれません。

それくらい、前半でのライダーのジムに対する執拗な追跡ってのは、荒唐無稽なくらい無茶であるって点でしょう。

まず、いくら田舎の一本道とは言え、あれだけ次から次へと主人公が行く先にタイミング良く現れるものだなぁ、って点ですね。
あたかも幽霊か妖怪の如く、神出鬼没に主人公にわなを仕掛け、主人公がそこに陥ったとたんに姿を現して脅しをかける。
しかも、その仕掛けた罠が完璧すぎて、どうやったらそんな天才的でタイミングの良い殺人が出来るんだ?って思える事の連続でしたからね(^_^;)

ガソリンスタンドの一件が顕著で、あそこに待ち伏せていたライダーの待ち伏せのタイミングや、ガソリンで吹き飛ばす手腕の並々ならぬ点など、或いはヘリに追われていた主人公らをどこからともなく現れて、片手で運転しながら片手でヘリを撃ち落す射撃の腕前など、「お前は特殊部隊に居たのか?」と突っ込みたくなるくらいの完璧さだったわけです(^_^;)
脚本がライダーの裏工作の姿を全く描かず、いきなり現れて完璧な仕事をやるって姿を描きすぎた為に、恐怖が倍化するどころか、どこかヒステリックな笑いに転じてしまっていたように思える点です。

このあたりは、脚本が前半にいろんな要素を詰め込みすぎて、ゆっくりと描く事をしていなかったって点に問題の原因があると思います。
実際、この映画を観ると、中に描かれている出来事に比べて全体の上映時間が97分と非常に短い事がわかります。
この内容を描くなら、普通は2時間まるまる必要なはずなのですが、それを前半部分でかなりカットしている感じがするのです。

この映画が描く、逃げても逃げてもその先に現れる殺人鬼の恐怖を描くには、もう少し、前半部分でじっくりと描く必要があったのでは?と感じた次第です。


【関連作品】

2007年12月 5日 (水)

「クリフハンガー」感想

【映画感想(DVD)】

「クリフハンガー」
(CLIFHANGER:1993)

(監督)レニー・ハーリン
(出演)シルヴェスター・スタローン ジョン・リスゴー マイケル・ルーカー ジャニン・ターナー ポール・ウィンフィールド

面白度 : 6点/10点
お薦め度: 3点/10点


 レニー・ハーリン監督の「クリフハンガー」をDVDで観ました。

 なんで、いまさら14年前の「クリフハンガー」を観たのか?と言えば、先日劇場で観た「ミッドナイト・イーグル」(2007)がメチャクチャ面白くなかったので、口直しではありませんが、ふと、「同じく雪山を舞台にしたハリウッド映画と言えばコレしかないだろう」って事で、この映画を思い出し、レンタルで観ました。

元々、劇場公開されていた時も、予告編がメチャクチャかっこ良かったのと、監督が思いっきりハマった「ダイ・ハード2」(DIE HARD 2:1990)のレニー・ハーリンだって事で劇場まで足を運んで観たのですが、これが思いっきり肩透かしで大コケだった作品です。

とにかく、予告編では実写の迫力はる雪山高所アクションを「これでもか!」と、カッコよい音楽に乗せて一気に見せてくれていたのですが、実際に本編を観ると、そのほとんどが「合成」で、スタローンがスタジオ撮影した映像と実写の映像を合成して高所に居るように見せているシーンとかばかりだったので、そのギャップに「なんじゃ?こりゃ」とガッカリしたのです。

のみならず、テロリストと雪山レスキューのプロとの全面対決って設定ながら、テロリストの(墜落後の)計画が行き当たりばったりでいい加減な脚本だったもので、その面も含めて、期待が大きかっただけに、かなりガッカリした記憶があるのです。

では、なぜそれだけ面白くないと思っている「クリフハンガー」をもう一度観る気になったのか?と言えば、ひとえにネットの評価のためです。

「ミッドナイト・イーグル」でこの作品を思い出し、ふとネットで検索してみると、意外や!高評価している人が多かったので、「もしかしたら今観たら面白いかも?」と思って観なおしたのです。

 で、DVDで観てみると、意外や!これがそれなりに面白いんですよね(^_^;)

冒頭の事故のシーン、この部分から一気にひきつけられて、あとは文字通り「クリフハンガー」は手に汗握るアクションの連続だったのです。

とは言え、元々、劇場で観た時は面白度が2~3点くらいだったのが、今回はギリギリ及第点の6点になった程度であり、決して個人的な満足度最低ラインの8点には遥かに及ばないのが事実です。
その理由は、やはり実写アクションではなく、スタジオ撮影と実写の合成ばかりであったのと、脚本が行き当たりばったりの連続であったって点でしょうか(^_^;)

ただ、あの無茶苦茶な劇画アクションでブッ飛ばしてくれた「ダイ・ハード2」のレニー・ハーリン監督らしい、荒削りで乱暴で、劇画チックなアクションの連続を再現してくれたって意味では、「レニー・ハーリン節」の作品として、非常に面白いノリの映画だと思いました。

また、冒頭で主人公がトラウマとなる事故があり、それ以来、本来の仕事から離れていた主人公が久しぶりに雪山にやってくると、そこではテロリストが大量の現金を盗もうとした飛行機が墜落して、仲間のレスキューともども窮地に陥る・・・って展開が、大筋で先日観た「ミッドナイト・イーグル」にそっくりだったってのは、いまさらながらに驚かされます。

と言うか、14年前にハリウッドでやっていたような脚本を、やっと邦画が真似できるくらいになったのか・・・と、遅すぎるなぁと感じるしかなかったですね。
しかも、僕がこれだけ酷評している「クリフハンガー」にすら、遥かに及ばなかったってのが情けないやら、ふがいないやら・・・

 いずれにしろ、劇場公開当時は期待しすぎたってのもあったのですが、これだけ年月が経って気楽に見る分には、同じく雪山を舞台にしたアクション「バーティカル・リミット」(THE VERTICAL LIMIT:2000)に、個人的には及ばないと思いますが、それなり以上に面白い作品だと思いました。




※以下、ネタバレがあります。





 基本的にこの映画、「ダイ・ハード」(DIE HARD:1988)以降に作られた「ダイ・ハード風」アクション映画のひとつです。

テロリストが立てた完璧な計画に対し、たった一人紛れ込んだ刑事が撹乱する事によって、次第次第にテロリスト側の計画が破綻していく・・・って展開。少し違う点もありますが、基本的な骨子は全く同じだと思います。

「ダイ・ハード」のブルース・ウィリスがシルヴェスタ・スタローンであり、アラン・リックマンがジョン・リスゴーであるわけです。
で、スタローンがウィリスばりに、何度襲われても生き抜いていき、一人、また一人とテロリストの手勢を削いでいくわけです。

 この作品、劇場公開当時にはメチャクチャ期待して映画を観に行った記憶があります。

もともと、僕も大いに気に入った「ダイ・ハード2」の監督、レニー・ハーリンが再び大規模予算でアクション映画を撮ったって点もあるのですが、それ以上に「見たい!」と思わせた理由が「予告編」なのです。

今回のレンタルDVDでも特典映像としてアメリカ版と日本版の予告編が付いていたのですが、その日本版予告編を観て「そうそう!これが俺を劇場に足を運ばせたんだ!」と思わず頷いてしまったのです(^_^;)

その予告編ですが、本編の冒頭で描かれるロープ一本の高所からスタローンの手を滑り落ちて、女性が落下する姿をスローモーションで描いているシーンがそのまま使われ、あとも、本編の実写でのアクション・シーンを中心に「これでもか!」とばかりに矢継ぎ早にアクション・シーンをバンバン!と見せてくれいました。

また、その予告編のバックには、のちに話題になるのですが、本編でもサントラでも使われていなかった「運命の女神よ」ってクラシックが効果的に使われており、特に予告編のラストでスタローンがロープを持ったまま、谷間を飛び越えるシーンを使っていたのが、予告編のクライマックスとしてメチャクチャ盛り上がっていたのです。

で、この予告編を劇場で観た僕は「おお!スゲェ!こりゃ観たい!」と思ったわけです。


 ところが、実際に劇場に足を運んで本編を観た僕は、「なんだ?こりゃ?」とズッコケてしまったわけです。

ズッコケた理由ですが、まず第一に「特撮」の下手さが挙げられます。

予告編では、とにかく「実写の迫力」とばかりに、本編でも実写で撮ったと思われる宙吊りシーンを中心とした高所のアクション・シーンを中心に編集されていたのです。
それだけに、本編でもスタローンが実際に雪山に入ってスタント無しで撮ったような、迫力満点の実写アクション・シーンが連続するのかな?と思っていたのです。

ところがところが・・・

実際に本編を観てみると、そこには「合成」だらけのアクション・シーンがあったのです。

本気で実写そのものだったのは、予告編でも大きくフィーチャーされた、本編冒頭の落下事故のシーン、ここだけだったんじゃないかな?と思えるくらい、見せ場のアクション・シーンはスタジオ撮影丸分かりの合成シーンばかりだったのです。

もちろん、実際の雪山をヘリで空撮したシーンも多くありますが、それらは危険を伴うアクション・シーンではなく、冒頭のイントロの部分であったり、普通に行軍しているシーンだけだったように思います。

一番白けたのは、スタローン演じるゲイブが岩壁に張り付いている姿をカメラがアップで撮るのですが、その後、カメラがズームアウトすると、実はゲイブが張り付いていた壁が断崖絶壁のど真ん中だった・・・ってシーンがあります。

しかし、このシーンは明らかにゲイブが張り付いている岩壁と周囲の岩壁の岩肌・色合いが違っており、誰が観てもスタジオセットで撮影した人物と実写の風景を合成しただけだってのがわかります。

いや、これはDVDで観たから気づいたのではなく、劇場で観た当時から気づいていた点です。

他にも多くあるのですが、僕はこのシーンだけで一気に白けてしまい、この映画の評価を決定付けたと言っても過言ではありません。
このシーンが明らかにしたのは、「この映画でスタローンは生身の危険なスタントは一切しないだろう」って点なのです。

それに気づかされたこっちは、もう、予告編で期待した事の9割が削がれてしまったように感じて、あとは全くハマれなかったのです。

 他にも、ラスト近くでテロリスト側のハゲのおっさんとゲイブが対決するシーン、氷の張った池(?)で二人が戦うシーンなど、その直前まで実写の雪山だったのに、ハゲのおっさんがこの場所に足を踏み入れたシーンから、一気に「こりゃスタジオ・セットですがな(-_-;)」と丸分かりの、セット丸出し、照明丸出しのリアリティ無い映像に変わったのです。

結局、何事もすべからくこの程度で、登場人物が普通に雪山を行軍するシーンは実写の雪山の風景なのですが、絶壁でのアクション、洞窟でのアクションなどなど、激しい銃撃戦や格闘が行われる場面はすべからく実写ではなくセットだと分かるシーンばかりだったのです。

あと、冒頭にも書きましたが、僕が大興奮した「予告編」のラストで描かれる、スタローンがロープを持ちつつ、谷を飛び越えて向かいの断崖絶壁に飛んでいくシーン、気になったのでじっくり見ていましたが、実はこれ、本編では使われていませんでしたね(^_^;)

もしかしたら見逃しかもしれませんが、スタローンをバックから撮影した映像で、彼が崖に向かって一目散に走っていく姿、そして横から捉えたショットで、彼が向かいの崖に向かって飛んでいくシーン、これが全く本編では使われていませんでした。

この辺りの肩透かしも大きかったかもしれません。

 この点、のちに公開された似たような内容の雪山高所アクション映画「バーティカル・リミット」と比べても、「バーティカル・リミット」の方が遥かに面白かったのです。

もちろん、「バーティカル・リミット」にしても実は実写のシーンは非常に少なく、「クリフハンガー」のトラウマ事故シーンそっくりな冒頭の事故のシーンでも、「クリフハンガー」以上に明確に「これは合成・特撮ですよ。決して実写ではありませんよ」ってのが、誰が観ても分かる質感で描かれていました。

また、本編においてもアクション・シーンでは実写よりも特撮ばかりであったのですが、僕は逆に、これだけ潔く特撮に徹して撮っている点、しかもアクションの迫力って点も含めて、「クリフハンガー」よりも好きだったし遥かに面白かったと感じたのです。

そう言えば、先の「クリフハンガー」の予告編では使われていたけど本編では使われていなかった「崖飛び越え」のシーン、実は「バーティカル・リミット」にもあるのです(^_^;)
しかも、「クリフハンガー」同様、予告編から登場しますが、「バーティカル・リミット」ではきっちりと本編でも同じシーンが登場します。
ただし、予告編のようなカッコ良い、ギリギリ感溢れるシーンではなく、意外と普通に飛び越える感じで、緊迫感は薄かったですが(^_^;)


 次にズッコケた理由が「脚本」です。

とにかく、今回の「ミッドナイト・イーグル」の脚本もトンデモ級だったが、この「クリフハンガー」も負けず劣らずのトンデモ級だったと思います。

まず何と言っても、テロリスト側の無計画性です。

いや、元々は「完璧な計画」と劇中で言っていたように、飛行機から飛行機に乗り移るのはどうか?と思いますが、少なくとも計画通りに事は運んでいたようです。
しかし、ちょっとしたミスで移送先の飛行機が墜落し、その途中で現金が入ったケース3個が落下した事から、計画が失敗に向かって大きくシフトしていきます。

しかし、普通の映画だったら、このテロリストどもが現金を落下させて自分たちも別の場所に墜落した時点で、一旦、下山して、今度は雪山装備をした登山者を装ってガイドを雇って現金落下地点に向かう・・・ってのが普通なんじゃないの?と思ってしまった。

もちろん、ケースに発信機が付いているし飛行機が落下したとあっては、早晩、FBIあたりが捜索に向かって先に発見される危険性はあったと思う。

が、それにしても墜落した当時、彼らは普通の服装であって、決して激しい吹雪の吹き荒れる険しい雪山を踏破できるような雪山装備では無かったハズなのです。
それが、何故か墜落時の服装・靴でそのままレスキューの二人をガイドにして「ガンガン」と雪山行軍を続けていくわけです(-_-;)

普通に考えても登山靴でなけりゃ、足を滑らす危険が満載されているし、あれだけ気温が低いと思われる場所で一晩過ごすのに普通の冬服程度で全員何とも無いってのもなぁ・・・

そりゃ、主人公のスタローンがシャツ1枚で登山しても、氷の張る池に落下しても死なないんだから、なんでも有りの劇画アクションだってのは分かるけれど、あまりにも行き当たりばったり、ご都合主義って言葉が似合うメチャクチャな設定・展開であるなぁと感じた次第です。

他にも、マシンガンは用心の為に持っていたとしても、「暗視装置」ってのはどうやねん?って思ってしまった(^_^;)
あんたらは墜落するのを見込んで、しかも夜間に移動するのを見込んで暗視装置を持っていたのか?と・・・

 他にも突っ込みどころ満載で、他の人が一番、気になったのはスタローンの薄着ではないかな?と思う点です。

いかに筋肉マンのスタローンとは言え、あれだけの雪山でTシャツ一枚だとか上半身裸ってのは、心臓麻痺で死んでしまうのでは?と思ったし、それ以上に、あれだけ体を殴られ、打ち付けられて、果たして最後のあのアクションが可能なのか?って疑問がありますね(^_^;)
普通だったら、途中でギブアップしてダウンしているでしょう。
ま、スタローンとシュワちゃんは不死身だから、なんとでもなるって設定なんでしょうね(^_^;)

 それら、設定上の矛盾、いやそれ以上に行き当たりばったりにテロリストが行動しているってあたりが、脚本のアラとして目立ちすぎていた為に、特撮の下手さと相まって、映画にハマれなかった要素であります。

個人的には、敵のボス役のジョン・リスゴーが大好きで、彼がこれだけ大作の敵役に回ったってのは、一世一代の大役だったのでは?と嬉しい部分があったのですが、確かに冷酷な部分は出ていたと思いますが、脚本が脚本だっただけに、彼の憎憎しさって部分があまり上手く出ていなかったような気がして残念でした。

 そんな中にあって、劇場で観た時に唯一ハマった点は、ゲイブが敵の一人と一緒になって夜の雪山の斜面を滑り落ちていくシーンです。

もつれながら滑り落ちていくスピード感も良かったのですが、その間に、ゲイブが相手の顔面を思いっきり雪面に押し付けて、相手の顔が火傷状態になって赤剥けになっていたって残酷なシーン、これは非常にレニー・ハーリンらしい劇画チックな描写だったな、と思います。

つまり、下手に特撮で高所を演出しなくても、こうしたハーリン節とも言える荒っぽいアクションを中心にして演出すれば、それはそれで面白かったのではないかな?と思うのです。
その意味では、ハーリンらしさを見せるには、雪山って設定そのものが、やはりハードなアクションや無茶なアクションを受け付けにくい舞台せっていであったかな?と思います。

ハリウッド映画には「海」を舞台にするとコケるってジンクスがある(のかな?勝手に付けましたが(^_^;))のですが、とかく全面的に「海」「山」などを舞台にすると、アクションの場合は実写で撮影するのが難しくて、身動きできなくなってしまう、シーンが制限されるってマイナス点があるので、やはり舞台設定がミスったのでは?と思います。


 さて、それだけハマらなかった「クリフハンガー」の劇場での鑑賞ですが、今回のDVDでの鑑賞は、それなり以上に面白かったですね(^^)

冒頭、「カロルコ・プロ」のマークと音楽を観て、僕はふと「ターミネーター2」(TERMINATOR 2: JUDGMENT DAY:1991)を思い出してしまった(^_^;)
それだけ、このマークと音楽に印象深いものがあるんでしょうね。

 余談はさておき(^_^;)

本編に入って、冒頭の空撮シーンを延々と観ていると、これだけで実写の迫力に圧倒されます。
また、バックに流れるトレヴァー・ジョーンズの音楽が素晴らしい! どこかで聞いたメロディなのですが、このメロディが「クリフハンガー」のテーマ曲だったとは、今更ながらに再発見をした気持ちです。

で、冒頭の落下事故のシーンになるのですが、このシーン、確かに役者をアップで撮っているシーンは確実に別撮りの映像であり、遠方からカメラが引いて撮った実写のシーンと違和感が大きくあります。
しかし、これも映画としては普通の手法であり、特段、今回は違和感を感じずに済みました。

いや、それ以上に落下のスローモーションのシーンの迫力、これの方に圧倒されたってのが事実です。

 その後も、とんまなテロリストどもの「無計画現金奪還雪山踏破」の行き当たりばったりな脚本には軽く笑いつつも、最初に劇場で観た時に感じたほど、アクション・シーンでの合成に違和感を感じずに観る事が出来ました。

これはひとえに、「この映画はそんな映画なんだ」って割り切り、それに尽きると思います(^_^;)

下手に期待した最初の鑑賞よりも、一歩引いて観た今回の鑑賞の方が、割り切って楽しめるのは当然の事。
そうなってくると逆に、「ダイ・ハード2」で見せてくれた無茶苦茶な劇画アクションと同じノリをこの「クリフハンガー」でも、レニー・ハーリンは遺憾なく発揮しているのに気づかされます。

まず、最初のケースをゲイブが断崖を登って発見したシーン。
ここで、崖の下で一列になって残りのメンツが待っているのですが、ジョン・リスゴーの命令で銃撃を加えるシーンでのカメラ、これが良いのです。
カメラが、上を見上げてバリバリとマシンガンを発射しまくる敵を横から捉えつつ、そのまま断崖と平行してカメラが移動し、壁面に外を向いて立ったままへばり付くスタローンを捉えるシーン。映画的なこのシーンは、非常に迫力を持って撮られています。

それ以外では、やはり先にも書いたシーン、雪の斜面を敵もろとも落下しつつ、ゲイブが敵の顔面を雪面に押し付けるシーンは、ハーリンらしいさが一番に出ている見所だったと思います。

また、ハーリンらしいってわけではありませんが、冒頭、輸送機の後部を吹き飛ばし、ロープ伝いに人と現金の入ったケースを受け渡そうとする設定は、アクション映画らしいド派手さが満載されていて、前半のつかみとしてはOKだったと思います。

そして、その後の落下シーンでも、明らかにミニチュアと分かるシーンもありますが、実物大の模型を使っているシーンもあったのか、かなりの迫力を持って飛行機が雪面に激突して崖ギリギリまで滑降していくシーンなど、それなり以上に迫力と引きがあったと思います。

 そしてラスト。

冷血で憎憎しげなジョン・リスゴー演じるテロリストのボスが、一人、ヘリコプターを駆ってゲイブと対決するのですが、これまた明らかにミニチュアと分かるヘリコプターが、ワイヤーで鉄のはしごに繋がって落下するシーンなど、冷静に観れば笑ってしまうチャチなシーンなのですが、ミニチュアにしても迫力ある撮り方、編集の仕方の良さで、これまたそれなり以上に迫力をもって観る事が出来ました。

この場面、どう考えても助かるわけ無いなぁ・・・と思いつつ、二人が引っかかったヘリの胴体の上で殴りあうってのは、「ダイ・ハード2」のラストで旅客機の翼の上で殴りあうシーンに合い通じる、ハーリンらしいけれんみのある舞台設定だったなぁと思います。

 主人公のシルヴェスター・スタローンに関しては、「ランボー3/怒りのアフガン」(RAMBO Ⅲ:1988)や「ロッキー5/最後のドラマ」(ROCKY Ⅴ:1990)のあとで、一時期人気が低迷していた時期だと思います。

それまでのネームバリューだけでウケる時期から、ランボーやロッキーの看板映画の主役もひと段落し、コメディに新境地を目指そうとして迷走していた時期だと思います。

それだけに、この「クリフハンガー」の大ヒットは、久々に「アクション・スター」としてのスタローンの復活を告げる作品であったと思います。
これに続く何作かは、再び、それなりの存在感と評価を持って第二期の黄金期を過ごしていたと思います。

ま、それも長くは続かず、年をとることによって肉体派のアクション・スターとしては難しくなり、その後はB級作品やシリアス作品、脇役なども経験していたのですが、ここに来て、ロッキーとランボーの10~20年ぶりの新作で最後の一花を咲かせている感じです。

で、「クリフハンガー」のスタローンですが、この当時で40代後半であったのにも関わらず、引き締まって若々しい肉体をしており、アクション・スターとしての面目躍如たる雰囲気を漂わせていたと思います。
作品の内容的には、僕も疑問を持っている点は多々ありますが、こと、主役を張るスタローンについては、かなり存在感とカッコ良さを感じさせる名キャスティングだったと思います。

 脇役のマイケル・ルーカーに関しては、その荒削りな風貌が大好きで、数多くの作品で名脇役ぶりを見せてくれていました。
本作でも、その存在感は大きかったと思いますが、役柄的に、テロリストどもに押さえられている場面が多く、最後に一人をがけっぷちで撃ち落とすシーン以外は、あまり目立ったシーンが無かったのが残念です。

 で、何と言っても悪役のボスを演じたジョン・リスゴー。

と言っても、最近ではその出演作も印象に少ないし印象に残っていませんが、個人的には、ブライアン・デ・パルマの作品で幾度か重用されていて、その独特のヒステリックでイッちゃっている演技は非常に好きな俳優であります(^^)

デ・パルマ監督の「ミッドナイト・クロス」(BLOW OUT:1981)での変質的な殺人者や、4監督が撮ったオムニバス映画「トワイライトゾーン/超次元の体験」(TWILIGHT ZONE THE MOVIE:1983)でのラスト、ジョージ・ミラーのエピソードで旅客機の窓の外にグレムリンを見てパニックに陥る恐怖症の男が印象に深いですが、極めつけは、同じくデ・パルマが監督した「レイジング・ケイン」(RAISING CAIN:1992)でしょうか。

多重人格の殺人者を演じるのですが、一世一代の「主役!」ってのが、リスゴーのファンとしては嬉しい限りでした(*^_^*)
映画自体も、デ・パルマ・タッチのサスペンスの集大成的内容であり、見せ場たっぷり、クライマックスの興奮たるや!って名作(あくまでも個人的にです(^_^;))でした。

って事で、そのジョン・リスゴーが敵のボス役として登場するこの「クリフハンガー」は、一般の観客とは違った目で僕は観ていた点もあります。
しかし、実際には脚本が行き当たりばったりであり、ジョン・リスゴーが持つ独特の存在感が全く生かせていなかったのが残念でした。

 監督のレニー・ハーリンに関しては、僕は「ダイ・ハード2」ともう1作「ロングキス・グッドナイト」(THE LONG KISS GOODNIGHT:1996)は大好きですが、この2作に挟まれた「クリフハンガー」と「カットスロート・アイランド」(CUTTHROAT ISLAND:1995)は失敗作だと思っています。

「クリフハンガー」は上記のような理由でイマイチでしたし、「カットスロート・アイランド」は、設定こそ僕の好きな海賊モノであるにも関わらず、そして「ダイ・ハード2」で劇画アクションで暴れまくったハーリン監督であるにも関わらず、非常にスピード感の無い、金をかけただけの失敗作だったのです。

今となっては、「パイレース・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」(PIRATES OF THE CARIBBEAN: THE CURSE OF THE BLACK PEARL)に始まるシリーズ3部作の先駆けとなったかもしれぬ愛と冒険の溢れるアクション大作であり、実際にヒットしていれば続編も夢では無かったでしょうが、実際にはもっちゃりしたスピード感の無い失敗作だっただけに、海賊ブームはこの作品では訪れませんでした(-_-;)

その後、「ロングキス・グッドナイト」で個人的に「ハーリン復活!」と叫んだのですが、それに続く痛快作が全く登場せず、世間では騒がれたようですが、個人的に「ディープ・ブルー」(DEEP BLUE SEA:1999)で「こりゃ、あかんわ(-_-;)」と放り出したのです。

意外にも、その後の「ドリヴン」(DRIVEN:2001)ってのが、奇しくも本作「クリフハンガー」のスタローンが脇役で登場する作品ですが、これがけっこう僕は気に入っていて、B級だけれどもドシドシとハーリンに作品と作っていって欲しいと思いました。
事実、この作品でのスタローンは、それまでの「俺以外に主役がいるか?」ってくらいの目立ちたがりな存在とはうって変わって、脇役としての存在感を非常にわきまえている良さがあって、それ以降の高齢化したスタローンが取るべき新たな一歩か?と思ったくらいです(が、彼はその後の主役を張っていくわけですが(^_^;))。

しかし、その「ドリヴン」も世間では色モノとして見られたようであり、評価もあまり高くなく、ハーリンは現在ではB級ホラー・アクション系の作品しか監督していない現状です。

 などなど、数多くの事を考えさせられた作品でした(^_^;)


【関連作品】

2007年12月 1日 (土)

「スターシップ・トゥルーパーズ」感想

【映画感想(DVD)】

「スターシップ・トゥルーパーズ」感想
(STARSHIP TROOPERS:1997)

(監督)ポール・バーホーベン
(出演)キャスパー・ヴァン・ディーン ディナ・メイヤー デニース・リチャーズ ジェイク・ビューシイ ニール・パトリック・ハリス クランシー・ブラウン パトリック・マルドゥーン マイケル・アイアンサイド

面白度 : 9点/10点
お薦め度: 3点/10点


 ポール・バーホーベンの「スターシップ・トゥルーパーズ」をDVDで観ました。

メチャクチャ面白いですね(^^)

劇場公開当時も映画館に観に行って、やはり面白い!と興奮したのですが、10年ぶりにDVDで鑑賞しても、その面白さに変わりはありませんでした。

ただ、後で述べるように、ほんのちょっとだけ不満も感じたので面白度は満点ではなく9点です。
また、かなり癖のある作品で、エグさ・グロさも際立っているので、苦手な人も多いでしょうから、お薦め度は低めの3点です。

 この映画の何が面白いって、とにかく特撮が凄まじい!
10年前の1997年に作られたってのが驚きな程の、凄まじいレベルですね。

特に、本筋とはあまり関係の無い、宇宙のシーンが凄まじくって、「スター・ウォーズ:エピソード4」以来の、宇宙モノの特撮の金字塔かも?と思えるくらい、細密な特撮が見れます。
下手をすると「スター・ウォーズ:エピソード1~3」あたりよりも、印象が深かったかもしれません。

 次に良いのは、良くも悪くも「ポール・バーホーベン節」が全開している点でしょうか。
「ロボ・コップ」(ROBOCOP:1987)から「トータル・リコール」(TOTAL RECALL:1990)へと続く、バーホーベンのSF作品の流れを汲む、そして集大成となるのが本作「スターシップ・トゥルーパーズ」です。
そのブラック・ユーモアとエグさ・グロさが溢れる演出が特徴で、ここらあたりで好き嫌いが別れるかもしれませんが、僕は大いにハマりました(^_^;)

  また、映画の後半で展開される凄まじいばかりの戦闘シーン。
特に少数の味方を膨大な数の敵が取り囲むシーンでの、絶望的な恐怖感と緊迫感ってのは、SF映画でありながら下手な戦争映画よりも怖さを感じさせてくれるものがあって、ハマった部分でもあります。

 マイナス面も大きく、クズな部分があるのも事実です(^_^;)

今書いたように、バーホーベン節であるエグさ・グロさが苦手な人はダメでしょうし、原作好きな人は、そもそも「強化服(パワード・スーツ)」が登場しない点でダメでしょう(^_^;)
また、全体を見ても、後半の派手さに比べて前半かっきり1時間があまりにも退屈で、下手なTVの青春ドラマレベルだってのがダメでしょう。

また、それに輪を掛けているのが役者の下手さです。
特撮にお金をかけ過ぎたのか、主役級の俳優が押しなべて下手な青春ドラマのレベルの俳優であり、キャラ設定もストーリーも陳腐さと退屈さを際立たせています。

 しかし、それでも僕がこの作品を押すのは、「ハインラインの『宇宙の戦士』」としてではなく、「バーホーベンの『宇宙の戦士』」として観ると、一本の作品としての強烈な個性と面白さを感じて、それらマイナス点を凌ぐ面白さを感じたからです。




※以下、ネタバレがあります。





 この作品、もともとは著名なSF作家ロバート・A・ハインラインの小説「宇宙の戦士」を原作としています。

人類が地球外生命体である、蜘蛛型のエイリアンと異星で戦闘を繰り広げるって設定や、前半は主人公の青年が激しい訓練でバリバリの戦士へと変貌する姿を描き、クライマックスでは敵の大将を捕獲するあたりなど、大筋の骨子では同じと言えるでしょう。

しかし、原作を読んだ事のある人(僕もです)が、このバーホーベンの映画化作に大きな違いを感じる点は、やはり「強化服(パワード・スーツ)」が出てこない点では無いでしょうか?
僕がこの作品に10点満点をあげられない理由の一つがこの点なのです。

この「強化服」ってのは、いわば宇宙服を元にした戦闘服の変形で、兵士の全身を覆いつつ、その力を補助して凄まじいパワーを生み出す戦闘服であり、SFファン、アニメファンの間では、のちの「機動戦士ガンダム」のモビル・スーツのアイデアの元となったものとして有名です。
邦訳小説にも表紙と挿絵が入っているのですが、そこに描かれる強化服のイラストがカッコ良いだけに、今回の映画化で果たしてどんなパワード・スーツが登場するのか?ってのが主眼になっていた点もあります。

ところが、公開前に明らかになったのは、バーホーベン版の「宇宙の戦士」では、どうやらこのパワード・スーツが一切登場しないらしいって事なのです。

ま、製作費云々の問題があったのかも知れませんし、ストーリー上の都合があったのかも知れません。

製作費で言いますと、特撮にとにかくお金をかけすぎなのは明らかで、パワード・スーツまで手が回らなかったと考えられます。
又、鎧のような強固な宇宙服姿であるパワード・スーツに身を包むと、配役が誰が誰か分らないって点もあったと思います。
僕も、この点は非常に残念ではありましたが、今考えると、確かにパワード・スーツをあきらめて普通のヘルメットに戦闘服姿にしたからこそ、生身の人間が戦う事のエグさ・グロさ・残虐さの際立ったから、ま、いいかな?と思っています(^_^;)

しかし、当時は「やはりパワード・スーツも見たかったなぁ」と少し残念がっていたのも事実で、「今回はしゃーないけど、パート2を作るなら是非パワード・スーツを復活させて欲しい」と思ったものです。
・・・ま、この点についても、実はフィル・ティペットが監督した続編「スターシップ・トゥルーパーズ2」(STARSHIP TOOPERS 2:HERO OF THE FEDERATION:2003)ってのが作られてはいますが、作品レベルが超A級からB級へと転落し、内容的にもかなりショボい作品になってしまったのが事実です(^_^;)
また、前作の内容をそのまま引き継いでいますので、兵士の服装もそのまんま・・・だったわけです(^_^;)

いずれにしろ、無いものねだりは仕方が無いので、僕は結構この作品はこの作品として、割り切って観ることが出来たので、パワード・スーツが無いって点も、許せたのが事実です。

 この作品、全体的なストーリーでは、スタンリー・キューブリックの「フルメタル・ジャケット」(FULL METAL JACKET:1987)を彷彿とさせる部分があります。
映画の前半で、鬼教官に厳しくシゴかれ、映画の後半では戦場で地獄を見るって展開。
「フルメタル・ジャケット」では、リー・アーメイが見事な鬼教官を見事に演じていましたが、この「スターシップ~」では、クランシー・ブラウンがその役に相当するキャラを演じていました。ま、リー・アーメイの鬼気迫る演技に比べれば・・・クランシー・ブラウンも面構えは良くっても、迫力はかなり劣りますねぇ(^_^;)

一度は惨敗を喫して撤退しながら、戦法を変えて再度、戦いに望むってあたりは、ベトナム戦争よりも第二次世界大戦あたりを彷彿とさせる部分もあると思います。
また、エイリアンが隕石を地球に降らせて攻撃するあたりは、日本人としては「宇宙戦艦ヤマト」のガミラスによる遊星爆弾を髣髴としますよね(^^)


 さて、この作品が面白かった理由を書きます。

とにかく、この作品は「特撮が素晴らしい」ってのと「ポール・バーホーベン節が全開している」って点、「押し寄せる敵に劣勢で戦う戦場の恐怖」を描いている点、この3点に集約されると思います。

 まず特撮に関してです。

とにかく、この映画は特撮が素晴らしい!
製作されたのが1997年って事で、今から10年前の作品なのですが、日進月歩で進む特撮技術の中にあっても、今見てもこの作品の特撮技術は霞むどころか、昨今の作品よりも高いレベルであったことが再確認で出来ました。

この作品では、大きく宇宙空間の特撮と地上戦闘の特撮の2つに分かれるのですが、特に、本筋とはあまり関係のない宇宙空間の特撮の方が特に凄まじいのです。

何が凄いって、とにかく宇宙空間にある基地だとか、そこにドッキングする宇宙戦艦の特撮が凄まじくって、同様の特撮を披露してくれる「スター・ウォーズ:エピソード1~3」の新3部作と比べても、僕は遜色の無い、いやそれ以上に素晴らしい特撮だったと思います。

特に、敵の攻撃を受けてバラバラに砕け行く宇宙戦艦の姿、「ロジャー・ヤング号」が二つに裂けて惑星方向へ落下していく時の、断裂面の特撮の微細さの凄まじさと言ったら、もう、限界以上にリアルであるし、DVDで見ればさらにリアルさが確認できます。

あと、月の周囲をリング状に取り囲む形で作られている宇宙ステーションの特撮もスケール感と迫力があって、惜しげもなく金を使っている感じが良くわかります(^_^;)

 次に地上戦闘の特撮に関してです。

これはもう、昆虫型のエイリアンの特撮、この凄まじさに尽きるのではないでしょうか?

確かに、メインとなる歩兵レベルのエイリアン以外の、重量級の地面から出てくるエイリアンや、最後に捕まえる首領級のエイリアンなど、明らかに「CG使ってるなぁ」と感じさせる、ちょい弱い特撮の部分もあります。
しかし、メインとなる歩兵レベルのエイリアンは、その数の凄まじさもさることながら、あれだけ数多くを1画面に登場させながら、どれも手抜きする事なく、リアルに描いているってのが、凄まじさを感じました。

その数も凄まじいですが、同時進行で人間側の歩兵と戦闘を繰り広げて、銃で吹き飛ばされていく姿も「実物か?」と思える程、リアルに描いています。

いやはや、エイリアンに攻撃されて突き刺され、ブンブン振り回される姿を描いてる点だとかも、どこからどこまでがCGで実写なのか?が区別が付かないほどリアルに描いています。
また、この手の特撮ものは、大抵が夜のシーンで特撮の下手さを誤魔化す場合が多いのですが、この作品では、最初の戦闘こそ夜間でしたが、あとは真昼間のシーンで、ド派手な戦闘を繰り広げているって点で、真っ向から観客に挑戦しているって姿勢が素晴らしいし、それをきっちりやり遂げて、完璧にリアルな特撮に仕上げているのが素晴らしかったです。


 次に「ポール・バーホーベン節」に関してです。

 ポール・バーホーベンにとって、「ロボ・コップ」から「トータル・リコール」へと続くSF作品の流れを汲む、そしてその集大成となったのが、この「スターシップ・トゥルーパーズ」です。

バーホーベン節で言いますと、「ロボ・コップ」のブラック・ユーモア溢れるCMそのままに、エグくてグロい広報ニュースに出ていて、まず笑わせてくれます(^_^;)

それ以上に、敵のエイリアンのブチ殺し方や、味方の機動歩兵の残虐な殺され方など、スピルバーグの「プライベート・ライアン」(SAVING PRIVATE RYAN:1998)以上の血なまぐさい、グロさを前面に押し出しています。

その点は、マイナスの面もあるでしょうが、圧倒的優勢な敵に包囲された時の恐怖感、殲滅戦の残虐さをリアルに描いていると言えるでしょう。
おそらく、バーホーベン自身のトラウマとなっている事があるのか、とにかくエグさとグロさを遭わせた殺人のシーンなどに異常なまでに執念を燃やしている人で、戦闘後に転がっている死体にまで、リアルなものを無数用意して散りばめているってのが、手が込んでいます。

話は少し変わりますが、SFとしてのバーホーベン節で言いますと、今回の「スターシップ・トゥルーパーズ」の中でも、宇宙船の内部とかに「トータル・リコール」と通じる美術センスを感じました。
正直、あまりリアルでないと言うか、ちょっとコミック風の安っぽさを感じる柱だとか壁だとかの金属風味ってのが、全く「トータル・リコール」のSF美術センスとそっくりで、「もしかして同じ世界での物語りか?」と思ってしまうほどなのは、監督の個性なのでしょうね、これも(^_^;)


 次に「押し寄せる敵に劣勢で戦う戦場の恐怖」です。

この点は、スティーブン・スピルバーグの「プライベート・ライアン」や、クリント・イーストウッドの「硫黄島2部作」「父親たちの星条旗」(FLAGS OF OUR FATHERS:2006)「硫黄島からの手紙」(LETTERS FROM IWO JIMA:2006)でも感じた、リアルな戦場の激烈さってのをSF映画の舞台を借りて描いている気がします。

当然、SF映画だけに、設定にリアルさが足りないのは当然なのですが、その中であっても、敵が「倒しても倒しても、その屍を乗り越えて襲ってくる」って恐怖は、顔の見えない敵と戦う恐怖と通じる部分があるのではないかな?と思います。

その意味では、同様に僕の大好きな作品であるジェームズ・キャメロン監督の「エイリアン2」(ALIENS:1986)に通じる恐怖感覚があります。
あの作品でも敵がエイリアンであり、しかも、倒しても倒してもその屍を乗り越えて襲ってくるって感覚は非常に似ていたように思います。
ハリウッド映画の凡百な戦争映画よりも、「エイリアン2」の方が戦場で顔の見えない敵と戦っている恐怖感をよりリアルに描いているな?と感じたのですが、それに通じる部分を「スターシップ・トゥルーパーズ」でも感じた次第です。

特に物語の終盤近く、エイリアンどもの策謀によっておびき出された主人公たちが、基地の周りから次から次へと襲ってくるエイリアンを阻止しつつ、脱出用宇宙艇が来るのを待つってシーンは、これはもう、観ているこっちも手に汗握る緊迫したシーンであり、この映画でもクライマックスと言える部分だったと思います。


 ま、全体的に観ると、前半の1時間かっきりは、退屈なだけの「クズ」ですから、あまりにも全体のバランスが悪いと言えるでしょう。

今回、観直してみても、かっきり前半の1時間は、主人公の学生時代の物語と軍隊に入ってからの訓練の様子を描くシーンが全てであり、まともな特撮やアクション・シーンは「無かった」と言ってもいいくらいです。

しかも、その前半で展開される物語が、安っぽいTVの青春ドラマ並みで、あまりにも陳腐で下らないのですが、それに輪をかけて、演じているキャストが下手すぎるってのが、余計に目立つマイナス点ですね(^_^;)
あまりにも特撮にお金をかけ過ぎたせいか、キャストがしょぼいと言うか・・・安っぽいTVの青春ドラマのキャスティングか?って言うくらい、演技が下手でチンケな役者しか登場していません(^_^;)

それらが重なって、前半1時間だけなら0点を付けたいほど、B級・C級くらすの作品に思えるのが、逆に笑えて好きなんですが(^_^;)


 そんな下手な俳優の中にあって、脇役のマイケル・アイアンサイドだけは非常に良い!

彼は「トータル・リコール」でもいい脇役を演じていましたが、ここでも名脇役として、要所を押さえています。
マイケル・アイアンサイド自身が終生、名脇役と言いましょうか、あまり大作で主役を張った事がない俳優ですが、僕はその風貌も含めて非常に好きな俳優で、「トータル・リコール」での全面的な敵役として見事にハマっていたと思います。

本作でも、見事な存在感を見せてくれていました。
冒頭で学校の先生役として登場しますが、ここでは、わずかに登場するのみです。
が、後半、戦場のシーンになると彼は軍人として登場し、主人公を指揮する上官の役を演じます。ここでの存在感と言いますか、頼りがいのある雰囲気ってのは、ま、他の役者が下手だったってのもあって、余計に目立っていました感じがしました。

ある程度、敵を倒していた段階で、ふと外を見ると視界外からさらにワラワラと地面を覆いつくす程の規模で敵が襲ってくるのを見て、義手で口をぬぐうしぐさをするあたりも、いい感じでした。


 結局、この作品は特撮マンのフィル・ティペットが続編として「スターシップ・トゥルーパーズ2」を作りましたが、公開のされかたも地味で、実際にDVD(かBS)で観た時には、B級ホラーを観ているレベルに感じました。

「2」は、全く面白くない・・・って程ではありませんが、舞台が一箇所であり、けっこう地味な展開とアクションなどを考えると、ランクが数段落ちた作品と言わざるを得ません。
せめて、1作目の半分の予算でもあれば、宇宙シーンは描けなくても、大規模な地上戦闘は描けていたと思うんですけどねぇ・・・

かえすがえすも、バーホーベンがそのままメガホンを取って「2」を監督し、今度こそ「パワード・スーツ」を登場させて欲しかったですね(^_^;)


【関連作品】

2007年5月 4日 (金)

「TUBE チューブ」感想

【映画感想(DVD)】

「TUBE チューブ」
(TUBE:2003)

(監督)ペク・ウナク(出演)キム・ソックン、パク・サンミン、ペ・ドゥナ

面白度 :6点(10点中)
お薦め度:4点(10点中)



 ここ数日、風邪で伏せっておりましたので、久々に溜まっていたDVDを観ることにしました。

 今回観たのは、韓国映画の「TUBE チューブ」です。
アクション映画であり、結構派手なシーンがありそうなので購入しました。

 観終わった感想ですが、アクション・シーンは派手ですが、ストーリーがイマイチであったと思います。
これは、ひとえに脚本の詰めの甘さかな?と思います。

アクションの良さで面白度は6点としましたが、後半の泣かせるシーンに至るまでの情感の描き方が足らなさ過ぎたので、完成度は低く感じました。
その為、お薦め度は4点程度となりました。

非ハリウッド映画にありがちな、背景説明やキャラクター、人間関係の説明が抜けているために、非常に分かりにくい点が多く、その面で物語りにハマり切れなかったものと思います。


【アクションについて】

 映画全体では、マイケル・マン監督の「ヒート」(HEAT:1995)だとかヤン・デ・ボン監督の「スピード」(SPEED:1994)、ジョン・マクティアナン監督の「ダイ・ハード3」(DIE HARD:WITH A VENGENCE:1995)を髣髴とさせるシーンが多くあり、それを安っぽくなく、ハリウッド大作アクション映画並に迫力を持って描いていた点は良かったと思います。

冒頭の空港ロビーでの大銃撃戦&脱出劇は、明らかにマイケル・マン監督の「ヒート」中盤、最大の見せ場である銀行強盗での大銃撃戦シーンに触発されて作られたシーンでしょう。

大型のM-16マシンガンを持ち、雨あられと銃弾を振り撒きながら突破口を開く。そして、待ち構えるパトカーをブリキ缶の如く蜂の巣にする・・・などなど、類似点は数え上げれば切りが無いくらいです。

ただし、正直、カメラワークが「ヒート」ほどは素晴らしくはなく、焦点をどこに置くか決めかねているようなブレ具合があり、すこし見にくいアクション・シーンとなっていたのが、残念な点ではありました。

しかし、本家「ヒート」もそうでしが、この「TUBE チューブ」での銃撃戦でも「音」は素晴らしかった!
邦画にありがちな「ドキューン」って嘘っぽい音ではなく、「パン、パーン」って乾いた実弾っぽい音を再現しているのは素晴らしかったです。
これだけでも観る価値はある作品かな?と思います。

逆に言えば、邦画でこれに匹敵する銃撃戦シーンを描けないってのが残念なのかな、と思いますが。
ま、日本は銃社会ではありませんので、大銃撃戦の設定自体が難しいでしょうが。

次に本題の地下鉄のシーンです。

このシーンあたりは、「スピード」のラストの地下鉄シーンだとか、「ダイ・ハード3」の中盤の地下鉄のシーンだとかを連想させるものがありました。
或いは、列車に人質が取られ、それを奪還する展開で言えばジョセフ・サージェント監督の「サブウェイ・パニック」(THE TAKING OF PELHAM ONE TWO THREE:1974)だとか、あるいは乗客が見捨てられる設定だとか、通過すれば崩れる橋の設定などは、明らかにジョルジ・パン・コスマトス監督の「カサンドラ・クロス」(THE CASSANDRA CROSSING:1976)あたりを彷彿とさせる部分がありました。

このあたりは、地下鉄の管制室とのやりとりを含めて、列車をどう上手く通過させるか?などの緊迫感溢れるサスペンス・シーンもあり、ワンマンすぎるとは言え、主人公が「ダイ・ハード」のブルース・ウィリス並に活躍するシーンもあり、けっこう楽しませてくれました。

ただ、冒頭の銃撃戦でもそうですが、あまりに敵の撃つ弾が主人公に「当たらなすぎる」のは、いくら映画とは言え嘘臭く感じてしまいました(^_^;)
一応、設定としては敵側も軍事訓練を受けたプロなんですから、警察のSWAT以上に狙撃の腕は持っているはずです。それを考えれば、主人公を狙った弾はあたりまくって当然なのでは?と思いますが・・・

また、警察のSWATが撃ちまくる弾は犯人側には全くあたらず、逆に犯人側がSWATを狙うと全てなぎ倒すってのも、やはりミエミエな矛盾に映りました(^_^;)

このあたりは、派手な銃器を登場させてしまった面のマイナス面かも知れませんね。


【ストーリーについて】

 この映画、アクション・シーンはかなり面白かったのですが、肝心のストーリーがあまりノレず、細部の詰めの甘さもあってか、作品全体としてはそれほど面白いって印象は受けませんでした。

韓国映画では、カン・ジェギュ監督の「シュリ」(SWIRI:1999)などでもそうですが、物語やキャラクターの背景説明、人間関係の説明が端折られているor字幕では説明しきれていない為に非常に分かりにくいものが多いです。

今回のストーリーでも、主人公のチャン刑事と過去の恋人との因縁話と、現在の彼女(なのかな?ペ・ドゥナ演じる髪の短い、ギターケースみたいなのを背負っている子)との出会いと関係など、ほとんど説明無しに物語が進むものだから、せっかくのラストの泣けるオチでも、あまり泣く事が出来なかったのです。

また、チャン刑事と悪役のギテクの対立関係も、過去にチャンの彼女がギテクに殺されたらしいシーンがチラリと映るだけで、もう少し深く描いてもらわないと、対立関係を際立たせるのは難しかったと思います。

そしてギテク自身にしても、国家に裏切られて復讐するって点では、マイケル・ベイ監督の「ザ・ロック」(THE ROCK:1996)のエド・ハリス的ではありますが、このギテクの地下鉄乗っ取り計画の意図も、もっと詳細に描くべきであったと思います。

その意味では、これら全てを考えると、映画全体のバランスから考えても、ラストでのチャン刑事とギテクの対決が終わったあとも、けっこう長い時間、物語が続いていくのは、サスペンス映画としてはバランスが非常に悪かったと思います。

それよりも、対決シーンをラストのラストに据えて、それまでにチャン刑事とギテクのそれぞれの過去の因縁をしっかりと描き、地下鉄乗っ取りの意図表明をもっと明確に描くべきであったと思います。

韓国映画では、「シュリ」などもそうですが、アクション映画であっても恋愛ドラマ的要素を取り入れ、「泣かせる」ドラマに持っていこう持っていこうとする傾向が強いようですが、それも良し悪しだと思います。

「泣かせたい」「感動させたい」って気持ちも分かるのですが、僕自身は、これだけしっかりしたアクション・シーンが描ける映画であるなら、「サブウェイ・パニック」のように、地下鉄乗っ取りそれのみを描き、シンプルに突き通した方がカッコ良く出来上がっていたのではないかな?と思います。

 余談ですが、ショート・カットのペ・ドゥナは非常にキュートでしたね(^^)
犯人に立ち向かっていく姿や、銃を向けられてもひるまない姿など、気丈な部分も魅力的であり、キャラクター設定としては素晴らしかったと思います。

チャン刑事、ギテク、そして彼女と、3人のキャラクターに魅力が溢れていただけに、もうすこし脚本の細部が詰めてあったらなぁ、と残念に思った作品です。