【映画感想(DVD)】
「ヒッチャー」
(THE HITCHER:1985)
(監督)ロバート・ハーモン
(出演)C・トーマス・ハウエル ルトガー・ハウアー ジェニファー・ジェイソン・リー ジェフリー・デマン
面白度 : 9点/10点
お薦め度: 9点/10点
ロバート・ハーモン監督、ルトガー・ハウアー主演の「ヒッチャー」を観ました。
今回、ショーン・ビーン主演でリメイク作が公開されましたが、どうやら梅田・三ノ宮あたりでは公開されそうに無いのでオリジナルのDVDを観る事にしました(^_^;)
かなり昔にセルDVDを購入していましたが、いつもの癖で「買っただけで安心」状態で、既に劇場で観ている作品だけに、今の今までほったらかしにしていたDVDです(我が家にはこんなDVDが山積になってます(^_^;))。
この映画、劇場公開時にそこそこ話題になったので劇場まで足を運んで鑑賞したのですが、これがメチャクチャおもしろい!
とにかく、主演のC・トーマス・ハウエルよりも殺人鬼を演じたルトガー・ハウアーの鬼気迫る演技が凄まじくって、そして畳み掛ける演出と脚本が怖さを倍化し、クライマックス近くのトラックのシーンには、もう度肝を抜かれた記憶があります。
これだけ非常に印象に残った作品だけに、今回の久しぶりの鑑賞も、その恐怖とサスペンスを再体験するべく期待してDVDに望みました。
で、再見した感想ですが、当時はもっと上映時間が長かった印象があったのですが、実際には97分と意外とコンパクトであり、本編も前半部分は「ダイジェストか?」と思うほど、次から次と場面が変わっていき、ハウアー演じる殺人鬼ジョン・ライダーの襲う手法も・・・なんだかコミカルに見える部分があったのも事実です(^_^;)
そう言えば、ハンバーガーとセットになったフライドポテトに指が入っているってのは、当時、ポテトが食えなくなりそうなぐらいショッキングなシーンでしたが、分かった上で見てしまうと・・・ねぇ(^_^;) 今となっては、少々コミカルに感じるようにも思います。
ですから、当時の記憶からすると10点満点であったのですが、今観るとマイナス点もあったって事で、9点に減点させていただきました(^_^;)
ただし、物語が後半のクライマックスに入ると、そのテンションは一転します。
主人公の無実を信じて助けた女性、彼女がトラックで・・・ってシーンになると、他のB級サスペンスでは考えられない程の過激な展開となり、このあたりの怖さってのは、デヴィッド・フィンチャーの傑作「セブン」(SEVEN:1995)に匹敵する脚本のテンションを感じる事が出来たと思います。
また、後半で幾つか登場するクラッシュ・シーンでも、あくまでも実写にこだわったリアリティがあり、規模は非常に小さいですが、スピード感と迫力のあるアクション場面に仕上がっていたと思います。
いずれにしろ、脚本の面白さもそうですが、再見した結果、やはり主演のルトガー・ハウアー(決してC・トーマス・ハウエルではない(^_^;))の風貌のカッコ良さと演技と表情の素晴らしさに魅了される傑作であったのは間違いないと思います。
その意味では、80年代を代表する傑作サスペンスだったと思います。
リメイクされたわけですが、おそらく過激なシーンがより過激になったりはするでしょうが、主演のルトガー・ハウアーを超えるキャラ・演技を見ることは・・・おそらく無理だろうな、と思います。
あと、DVDなのですが、昨今では片面2層ディスクが多くなってきていますが、この作品は古い作品ですし、上映時間が97分とコンパクトであり、なおかつ超大作などではないB級サスペンスの扱いですから、どうしても片面1層ディスクとなっているのが残念です。
実際に画面を観ていても、シネマスコープサイズですが、拡大してワイドテレビに合わせて観てみると、非常に画質が荒いのが分かります。
内容が内容だけに、高画質でわざわざ出す必要も無いと思うかも知れませんが、知る人ぞ知るマニアックに愛されている傑作だけに、片面2層ディスクの高画質で見せて欲しかった気がします。
※以下、ネタバレがあります。
さて、この「ヒッチャー」ですが、公開当時はB級サスペンスの内容にも関わらず、けっこう話題になった佳作であったと思います。
主演の青年を演じたC・トーマス・ハウエルも評価されたと思いますが、いや、なんと言っても連続殺人鬼の謎のヒッチハイカー「ジョン・ライダー」を演じたルトガー・ハウアーの鬼気迫る演技、存在感、その風貌のカッコ良さってのが凄まじく、当時、劇場で観た僕もハウアーに魅了された思いがあります。
内容的にはスティーヴン・スピルバーグの「激突!」(DUEL:1971)を彷彿とさせる、砂漠のハイウェイでの巻き込まれ型サスペンスではありますが、単純に主人公の命が殺人鬼に狙われるってだけの物語ではなく、逆に周りが次々に殺されていき、主人公が殺人犯として警察に追われる形になるのが変形であり、新しい形の「怖さ」が面白さとして突出していた作品であったと思います。
それだけ面白い映画だから、主演や監督のみならず、脚本を書いたエリック・レッドまで注目を集めるようになったと覚えています。
監督のロバート・ハーモンは、非常に冴えた演出をしているのですが、その後はあまりパッとせず、せいぜいジャン=クロード・ヴァン・ダム主演の「ボディ・ターゲット」(NOWHERE TO RUN:1993)を監督したくらいで、あとはテレビ映画を中心に地味になっていった人です。
スピルバーグやキャメロンみたいに、一気に上りあがって欲しかったのですがねぇ・・・
また、脚本のエリック・レッドに関しては、僕もハマって絶賛したキャサリン・ビグロー監督の「ニア・ダーク/月夜の出来事」(NEAR DARK:1987)や、同じくビグロ監督と組んだ「ブルー・スチール」(BLUE STEEL:1990)って素晴らしい脚本を書いているのですが、その後は監督のロバート・ハーモン同様、目立つ作品も無く消えていってしまいました。
両者がタッグを組んだこの作品は、B級ながら非常にセンスの良い出来上がりになっており、エリック・レッドの脚本による物語展開の息もつかせぬ感覚は、のちにハリウッドを席巻するジェット・コースター・ムーヴィー型のホラーやサスペンスの原型とも言えるものだと思います。
そして監督のロバート・ハーモンの演出もキレがあり、前半はやや荒っぽさが目立ちますが、中盤以降はそのカメラワークや映像の美しさなどなど、B級サスペンスの監督にするにはもったいないくらいの技を披露してくれていました。
そして、それ以上に素晴らしいのが、連続殺人鬼のヒッチハイカー「ジョン・ライダー」を演じたルトガー・ハウアーです。
彼に関しては、80年代の名悪役で一世を風靡した感もあり、この当時で言えば、先日「ファイナル・カット」が劇場公開された「ブレードランナー」(BLADE RUNNER:1982)でのレプリカントの首領ロイ・バティ役や、シルヴェスタ・スタローンと共演してこれも主役を喰っちゃったアクション「ナイトホークス」(NIGHTHAWKS:1981)でのテロリスト、ウルフガー役、そしてこの「ヒッチャー」でのジョン・ライダー役が、当たり役の代表3役であったと思います。
その他では、悪役ではなくいい役の主人公としては、リチャード・ドナー監督のファンタジー「レディホーク」(LADYHAWKE:1985)と「WANTED/ウォンテッド」(WANTED: DEAD OR ALIVE:1986)での役柄がカッコ良くて印象に残っていますが、やはり上記悪役3役には遥かにかなわないなぁ、と思います。
特に印象的だったのは、ラスト、主人公と対決するシーンでの、ショットガンを構えた姿のハウアーです。
ここでは、顔面血だらけになりながら眼をすがめつつ、まぶしい光の下で道路の上でショットガンを構えて立ち、主人公の乗るパトカーに次々と弾を打ち込んでいく姿、これがメチャクチャかっこ良いんですよね(^_^;)
次にラスト、警察に捕まって手錠をしたまま取調べを受けるハウアーが、主人公から「ペッ!」とつばを吐きかけられ、顔についたネトついた唾を手錠をした両手で拭い取るシーン。
そのまま唾を舐めてしまうんじゃないか?ってほど、ゆっくりと丁寧に唾を拭い取る姿が、この映画でも最高に鬼気迫る表情であったと思います。
「ブレードランナー」で言えば、タイレル社長を殺したあと、エレベーターで天を仰ぎながら降りる姿に匹敵するシーンであったと思います。
あと印象的なのは、食堂で主人公とテーブル越しに向かい合うシーン。
指鉄砲をテーブルの下に構えつつ、はったりで「バン!」とテーブルを叩いて驚かせる時の落ち着きぶりだとか、その後、怯える主人公にコインに唾を付けて両目に付けるシーン。
これなんか、「ブレードランナー」でハウアー演じるロイ・バティがJ・F・セバスチャンの自宅で、目玉の置物を両手にもって眼にあててお茶目な姿をしていたのを、トーマス・ハウエルに演じさせたような感じであり、思わず思い出してしまった点でしたね(^^)
あと、同じく取り調べのシーンで、「どこからきた?」と刑事に尋ねられ「ディズニーランド」と答えているのも上手いですね。
主人公のジムを演じるC・トーマス・ハウエルは、「E.T.」(E.T. THE EXTRA-TERRESTRIAL:1982)で有名になりましたが、本作において全く違った演技で新境地を開きました。
冒頭でこそ、どこにでも居そうな普通の青年を演じているのですが、数多くの修羅場を経験した彼は、一気に「いい面まがえ」に変貌したと思います。
特にラスト、警察の手に保護された以降の彼の意思の深さを感じる「眼」には、非常に鋭いものを感じる事が出来ました。
鬼気迫る表情だったのですが、その後はあまりパッとせず、期待された若手俳優であったと思いますが、その後は目立った活躍もせずに消えていったと思います。
さて、次に物語についてです。
この作品は、アメリカの砂漠地帯の一本道を走っている主人公の青年が、途中で謎のヒッチハイカーを乗せた事から恐怖が始まります。
雨中でずぶ濡れのコート姿で乗ってきた彼は「ジョン・ライダー」と名乗ったのですが、いきなり自分が殺人者である事を告白し、同乗する主人公にもナイフで脅しをかけます。
その時、ドアが半ドアとなっていたのに気づいた主人公は、ライダーを突き飛ばして車から落として無事、逃げる事が出来たのです。
ところが、本当の恐怖はここから始まるわけです・・・
ちなみにこの冒頭ですが、アメリカの広大な砂漠地帯の一本道で、周りに民家ひとつ無い、真っ暗闇の夜中に走る車中、密室内で殺人鬼と二人になるって事で、アメリカの中西部の特徴を上手く生かした設定になっていると思います。
その後、主人公の行く先行く先にジョン・ライダーが現れるのも、広大な土地に一本道しか走っていない特徴を生かした展開だと言えるでしょう。
その後、無事に殺人鬼から逃れたはずの主人公は、再び、その魔の手に捕まり、悪夢のような経験をさせられるわけです。
ってわけで、ストーリー自体は一見すると異常者の連続殺人鬼に命を狙われる主人公の姿を描いた、よくあるB級サスペンスか?と思えるのですが、この映画がそんじょそこらのB級サスペンスと違う点が、その後連発してくるのです。
特に、あくまでもジョン・ライダーの狙いが主人公の命そのものではなく、彼の周辺で次々に殺人を犯し、その容疑者として逮捕された主人公に対しても、捕まった警察署の警官たちを殺して、さらに彼の容疑と罪を深める偽装殺人を続々と行うのです。
これによって、主人公を精神的に恐怖に陥れると同時に、時々、目の前に現れて主人公自身の命も狙うライダーの行為に、さらに恐怖を感じるわけです。
このあたり、ジョン・ライダーの狙いは何なのか?って疑問を主人公も観客も抱きつつ、謎を抱えたままノン・ストップで突っ走る展開に、ラストまで一気に見せられてしまうわけです。
では、主人公を狙う連続殺人犯のジョン・ライダーの狙いってのは何処にあったのでしょうか?
彼自身は次から次へと殺人を犯すわけですが、かと言って直接的に主人公の命を狙うわけではありません。
冒頭、ヒッチハイクした時こそ、殺そうって意思は見えていましたが、それ以降はガソリンスタンドでガソリンまみれにして火を点けるって行為はありましたが、あれもギリギリ逃げ出せるように・・・って感じも見えてきます。
また、後半ではパトカー数台とヘリコプターに追われて絶体絶命になった主人公ですが、そこで突然、横から登場した車に乗ったライダーが、拳銃でヘリを撃ち落してしまう場面もあります。
これを考えると、どうもライダーは主人公を弄んで殺そうと、いたぶっていた訳では無い・・・と思えます。
おそらく、ライダー自身が求めていたのは「自分の行為をストップさせてくれる相手」であったと思います。
ジョン・ライダー自身が冒頭、ヒッチハイクした車の中で主人公に語っているのですが、「俺を止めてくれ」って言葉、これが全て表しているのではないかな?と感じるのです。
彼自身、連続殺人を犯しているわりには、その自分の行為に恐怖を感じているのか、早く自分の殺人行為をストップして欲しいと願っているようです。
ところが、それが達成される為には、自分を止めるに足る「資格」を持っている人間が必要だ。その為に、その「資格」を持った人間を探して、ライダーは次々に殺人を犯していたのだろうと思います。
そこで出会った主人公に眼を点けたライダーが、彼に挑戦状を叩きつける形で、次第次第に主人公を乗せて行き、自分の最後を看取ってくれる人物に相応しい奴だと見込んだからこそ、例のトラックのシーンでナッシュを縛り付けて、警察に包囲される逃げ場の無い状況だと知りつつ、最後の対面に挑んだのだろうと思います。
しかし、それにも尻込みして自分を撃ち殺す事が出来なかった主人公に対して、情けない・・・とばかりにトラックを進めてナッシュを殺してしまうわけです。
もう一方の主人公ジムです。
C・トーマス・ハウエル演じる主人公ジムは、車を陸送する為にシカゴからカフィロルニアを目指していたのですが、途中、砂漠の中の一本道を運転中、ジョン・ライダーに出会います。
最初、彼は殺人鬼を車から突き落とした時に「ヤッター!」と雄たけびを上げるのですが、この辺りの怖さ、主人公の喜びってのは、良く出来ていたと思います。
その後、普通だったら主人公自身の命を狙うサスペンスへと移行するのが普通なのですが、何故か、周囲の人物を殺して主人公に罪をなすり付けるような行動ばかり取ります。
これには主人公のみならず、観ているこちらも訳がわからなくなるのですが、なぜか次第次第にジムもライダーの行為に惹かれて行く部分が見えてくるのです。
映画の展開としては、冒頭から中盤までは、主人公が「狙われている」と思われていたのですが、次々に主人公ではなく主人公の周りの人物がライダーに殺されていくに連れ、目的がどこにあるのか?が分からなくなっていきます。
しかし、それによって主人公が警察に犯人扱いを受け、身柄を拘束される事による恐怖感ってのは、殺人そのものによるサスペンスとは又違った意味での恐怖感が生まれる事になります。
中盤あたりは、確実に「冤罪」による警察に追われる恐怖がメインとなって来て、ジョン・ライダー自身がしばらく登場しない場面が続くわけです。
ところが、ラスト近くのトラックのシーンで物語が一変します。
それまで混沌としていた物語が、どうやらジョン・ライダーの目的が薄々分かってきて、殺人鬼と主人公青年との「一騎打ち」が物語の最終目的であったのが分かります。
車の中でジムに拳銃を渡したライダーが、ジムに「殺せ」と命令するのですが、結局は車を殺すとトラックに結び付けられたナッシュの命が奪われるって事で、ジムはライダーを殺せなかったわけです。
この時点で、「お前を見込んだんだが間違いだったか」と彼を見放すような発言をします。
この事からも、ライダーがジムに「自分を殺してくれる介添え人」としての役割を求めていた事がわかります。
最初こそ、その求められていた役割が分からなかった主人公ですが、ライダーが逮捕された時点で無意識のうちにそれが分かったのでしょう。
ライダーの考えが分かったジムは、ライダーが唯々諾々と逮捕に従ってそのまま法の裁きを受けるとは思えず、必ずや自分を殺してくる新たなる介添え人を求めて逃げるのが分かっていたのだと思います。
だからこそ、ラストでパトカーを奪ってライダーの護送車の元に向かったのでしょう。
物語の白眉は、やはりラストの決闘シーンでしょう。
最初こそ、自分がライダーに求められていた役割、ライダーの目的が全く分からず、本能的に闇雲に逃げ出す事しか考えていなかったジムですが、その後、数多くの地獄のような体験を通じて、次第次第にライダーの考えが「分かる」ようになったのだと思います。
観ているこちらも同様で、最後にジムがパトカーを奪ってライダーの元に向かう姿は、他人から見れば異常でしかないのですが、全てを悟った主人公と観客には、彼の行動が正当だと感じられるようになるのです。
そう、ライダーが求めているのは法の裁きではなく、自分が止めたくても止められなくなっている殺人性向を、「誰かに止めて欲しい」って願いなのです。
それが満たされるまでは、必ずやライダーは唯々諾々と法の裁きに従う事などせず、脱出して「自分を殺してくれる介添え人」を探し続けるでしょう。
いや、映画ではジムがライダーの元に向かいましたが、護送車から脱したライダーは、あのままでもおそらくジムを捜し求めてその元に向かったかも知れませんね。
それでは、果たして「ジョン・ライダー」なる人物は何者だったのだろうか?って点を考えてみます。
風貌は一般的なアメリカ人よりも、ヨーロッパ人を彷彿とさせ、年のころなら30代後半から40代と言った感じで、服装などはコートを着たサラリーマンと言えるでしょうか。
しかし、その殺人性向はあまりにも尋常ではなく、この映画で描かれただけでも10~20人は平気で殺している点からも、過去にも類似の殺人を犯していないとおかしいと思われます。
しかし、ラストで捕まったあとの警察内のシーンで、彼には指紋による前科が全くないし、戸籍も存在しない云々のセリフがありましたので、どうやら指紋や顔写真から判明するような、警察側に明らかになっている前科は無いようです。
しかし、これが初犯の若者ならいざ知らず、壮年の域に入っている男性が、過去に誰も殺さずに大量連続殺人を行うのは理不尽と思える点を考えれば、彼はおそらく、初めて殺人を犯した時から、非常に巧妙に自分の指紋や顔が割れるような証拠を残さずに殺人を犯して来たのだろうと思われます。
或いは、高額になるでしょうが、顔や指紋を変え、過去の自分の経歴を変えるような何か高度なテクニックを使ったのかもしれません。
おそらく、前者の方であって、過去にも同様の大量連続殺人を犯した上で、ジムのような「介添え人」を探していたのだろうと想像します。
次に印象的な場面です。
まず何と言っても、僕の脳裏に焼きついていたシーンは、ラストの一騎打ち、対決のシーンなのです。
まぶしいほどの日差しの下、砂漠のド真ん中の一本道で対峙するジムとライダーの姿には、映像的なカッコ良さと美しさが感じられます。
車から落とされたライダーの、顔面血まみれのまま路上に立つ姿は鬼気迫るものがあり、ショットガンを構えたカッコ良さと相まって、この映画でも一番に印象に残るシーンとなっています。
ショットガンで次々に破壊されていくパトカーの姿も印象的なら、その中で破壊された破片を頭上に浴びつつパトカーの床にうずくまるジムの姿も良かった。
最後は、ま、ありがちですが車で跳ね飛ばされたライダーが、倒れて死んでいるのかな?と思いきや、ジムが振り返って去ろうとする後ろで「すっく」と立ち上がって復活するわけです。
それをショットガンで打ち倒すジムの姿には、冒頭で見えた若々しく弱さも感じられる青年の姿はなく、一人前の大人の男としての気丈さと力強い意思が感じられました。
次に印象的なのは、後半最大の見せ場である、トラックによるナッシュ惨殺シーンです。
直接的に描かれるわけではないのに、これほど脳天を直撃するほど残虐な殺し方を描いた作品って、なかなか無いんじゃないかな?と思います。
いわゆるスプラッター映画などでは、特撮を用いて直接的に惨殺される死体などを描きますが、あれは能の無い演出ですね。
脚本のアイデアだけで、見ている観客を凍りつかせる怖さってのは、この作品のトラックのシーンがピカイチではないでしょうか?
とにかく、それまでの残虐なシーンってのは、少々、劇画チック過ぎて笑ってしまう部分も多々あったのですが、この場面、警察が大挙して取り囲む劇場的な犯罪現場の中にあって、自分が確実に射殺されるか逮捕されるか分かっている場で冷静に犯行に及んでいるって点では、僕は思わず「セブン」を思い出してしまいました。
ケヴィン・スペイシー演じるジョン・ドウ、彼が警察署に自ら出頭し、最後に大仕掛けの謎を仕掛けるあたり、あの当たりの大胆不敵さと行う犯行の残虐さ、そして警察監視の中での劇場型の点などなど、共通するサスペンス感覚を印象付けられました。
また、その救いようのない結末(物語はその後も続きますが)、このトラックのシーンの最後の救いようの無さってのは、ハッピーエンド症候群に侵されたハリウッド映画界にあっても非常に珍しい展開であり、その意味でも「セブン」と類似している点を感じましたね。
そう言えば、「セブン」でも直接的に箱の中身を映像で描かずに、それ以上の衝撃を我々に与えてくれていましたね。
次に印象的なのは、中盤、警察署の留置場に放り込まれたジムが、カギが開いているのに気づいて恐る恐る留置場の外に歩き出るシーン。
これはもう、ホラー映画・サスペンス映画の常套手段と言いましょうか、主人公の視点になったカメラがゆっくりと警察署の中を進んで行き、チラッと影がよぎるあたりの緊迫感だとか、「ワッ!」と驚かすか?と思わせて全く驚かせずに、陰になった部分にある死体を次第に見せていくあたりだとか、監督のサスペンス演出の手腕が光る部分であったと思います。
余談ですが、主人公が食堂で指入りポテトを食べるシーンだとか、向かい側にライダーが突然座るシーンだとか、最後にナッシュがトラックに繋がれるシーンだとかでは、その前に必ず主人公がその場所(食堂やモーテル)で一人になるシーンをきっちり描いているのが印象的でした。
つまり、ポテトのシーンでは、主人公がトイレに行っている間にナッシュも外に出ていて、ライダーが指をポテトに入れる事が可能であったし、向かい側に座るシーンでも店主がコーヒーを入れに店の奥に入っていくシーンがありましたし、ナッシュがトラックに繋がれるシーンでも、主人公がシャワーに入っているシーンを描いていました。
そうした細かさが、怖さに繋がっていたのでしょう。
あと、アクション・シーンもなかなか良くって、確かに田舎を舞台にしていて、ド派手な銃撃戦やカー・チェイスってのは無理ですが、その中にあっても、少数のパトカーとのチェイス・シーンだとか、パトカーのクラッシュ・シーンなどは、非常にシャープに描かれていたと思います。
特に、お決まりのパトカーが吹っ飛んでひっくり返った所に、後続のパトカーがブチ当たるってシーン。
そしてその変形である、ライダーが撃ち落したヘリコプターとパトカーが激突し、クラッシュするシーンなど、ミニチュアやCGなど使わず、実物でアクション・シーンを撮影しているのが、リアルな迫力ある映像に仕上がっている要因だったと思います。
これだけ褒めた映画ですが、やはりマイナス点も書かないといけませんね(^_^;)
特に前半だけでも、かなり突っ込みどころが満載です(^_^;)
公開当時も、少々感じていたと思いますが、今回、久しぶりに鑑賞しなおして見て感じたのは、前半部分が非常に荒唐無稽に感じられた点なのです(^_^;)
あまりにも荒唐無稽すぎて、少々笑ってしまった点もあるのですが、そのせいで「果たしてこの映画を面白いと思っていた自分の記憶は確かなんだろうか?」と、一瞬、不安に襲われたのも事実です。
ただ、後半に入って、特にトラックの一件があってからは一気にボルテージが上がってクライマックスまで突っ走ったので、大満足で見終わる事が出来ましたが、前半部分だけでは「こりゃ失敗かも?」と思ったかも知れません。
他人に勧めていたとしても、その人から「なんや、つまらんやんか」と言われかねないかもしれません。
それくらい、前半でのライダーのジムに対する執拗な追跡ってのは、荒唐無稽なくらい無茶であるって点でしょう。
まず、いくら田舎の一本道とは言え、あれだけ次から次へと主人公が行く先にタイミング良く現れるものだなぁ、って点ですね。
あたかも幽霊か妖怪の如く、神出鬼没に主人公にわなを仕掛け、主人公がそこに陥ったとたんに姿を現して脅しをかける。
しかも、その仕掛けた罠が完璧すぎて、どうやったらそんな天才的でタイミングの良い殺人が出来るんだ?って思える事の連続でしたからね(^_^;)
ガソリンスタンドの一件が顕著で、あそこに待ち伏せていたライダーの待ち伏せのタイミングや、ガソリンで吹き飛ばす手腕の並々ならぬ点など、或いはヘリに追われていた主人公らをどこからともなく現れて、片手で運転しながら片手でヘリを撃ち落す射撃の腕前など、「お前は特殊部隊に居たのか?」と突っ込みたくなるくらいの完璧さだったわけです(^_^;)
脚本がライダーの裏工作の姿を全く描かず、いきなり現れて完璧な仕事をやるって姿を描きすぎた為に、恐怖が倍化するどころか、どこかヒステリックな笑いに転じてしまっていたように思える点です。
このあたりは、脚本が前半にいろんな要素を詰め込みすぎて、ゆっくりと描く事をしていなかったって点に問題の原因があると思います。
実際、この映画を観ると、中に描かれている出来事に比べて全体の上映時間が97分と非常に短い事がわかります。
この内容を描くなら、普通は2時間まるまる必要なはずなのですが、それを前半部分でかなりカットしている感じがするのです。
この映画が描く、逃げても逃げてもその先に現れる殺人鬼の恐怖を描くには、もう少し、前半部分でじっくりと描く必要があったのでは?と感じた次第です。
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